連載
» 2021年03月15日 05時00分 公開

こんな裁量労働制は嫌だ!「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(85)(1/3 ページ)

上からの指示に従い、個人で判断できる範囲はごくわずか。もちろん、残業代の支払いはなし。これ、本当に裁量労働制なんですか――?

[ITプロセスコンサルタント 細川義洋,@IT]
「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説

連載目次

 IT訴訟事例を例にとり、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。今回は、今やソフトウェア業界においては、当たり前のように行われるようになった「裁量労働制」にまつわる紛争事例を取り上げる。

 裁量労働制とは、労働時間が労働者の裁量に委ねられている労働契約である。

 社員は約束した価値を創出すれば1日8時間(※)働く必要はなく、自らの裁量で実際に働く時間を決められる。約束しただけの価値とは、営業職ならば売上高かもしれないし、システムエンジニアならば予定された分量の設計や分析ドキュメントかもしれない。

 とにかく「期日まで」に「しかるべき品質の成果物」を「しかるべき量」アウトプットすればよく、効率良く作業をすれば1日の労働が4時間であっても構わないということになる。労働者にとっては、効率良く作業をすれば、時間的にも体力的にもメリットが出る制度ではある。

※1日8時間:法定時間(1日8時間、1週間に40時間)。裁量労働制は、実際に働いた時間にかかわらず、事前に労使で取り決めた労働時間(みなし労働時間)分働いていると見なされる。法廷時間を超えるみなし労働時間を制定するには、労働組合または労働者の代表と企業間で36協定の締結が必要。

現実は甘くない裁量労働制

 一方、この働き方が合わない作業もある。

 ソフトウェアエンジニアならば、運用保守作業のように一定時間必ず働かなければならない仕事はもちろん、作業の段取りや優先順位を自分では決められず、リーダーや作業依頼者(発注者、お客さまなど)の指示に基づいて作業をするような場合は、「今日の仕事は終わった」と午後4時に帰ることは難しい。

 絶対的な作業量が多過ぎて残業が常態化している場合も、裁量どころではない。裁量労働制には向き不向きがあり、当てはまらない仕事やポジションもあるのだ。

 今回取り上げるのは、原告側の作業が本当に裁量労働制に合っているものなのか、そもそもこうした作業を裁量労働制にしてもいいのかどうかが問題となった裁判だ。労働基準法の施行令では、ソフトウェアエンジニアを裁量労働制が適用可能な職種としているが、十把ひとからげにそう考えていいのだろうか。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。