DXの実現を目指す企業がクラウドネイティブの取り組みを推進すべき理由レッドハット伊藤氏とマイクロソフト寺田氏が語るクラウドネイティブ(2)

レッドハットでソリューションアーキテクトを務める伊藤智博氏とMicrosoftでクラウドアドボケイトを務める寺田佳央氏が第3回にわたってクラウドネイティブを語る本連載。第2回はクラウドネイティブに注目が集まる理由、クラウドネイティブの最終目的について。

» 2021年03月30日 05時00分 公開

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 Web系テクノロジー企業の間で取り組みが広まっている「クラウドネイティブ」について、レッドハットのソリューションアーキテクトを務める伊藤智博氏とMicrosoftでクラウドアドボケイトを務める寺田佳央氏が語る本連載。第2回は、クラウドネイティブという考え方をどう捉えていくべきか語った。

変革の鍵はクラウドネイティブではない

――ビジネス要求の変化に対応する形で、ここ数年でさまざまな技術や方法論が登場してきました。特に注目されている技術や方法論はありますか。

伊藤氏 私が注目しているのは「プロセス」と「文化」です。ビジネス部門からの要求を実現するには、プロセスや文化も変える必要があると考えています。ここでいうプロセスとは自動テストや自動構築など作業内容のつながりのことです。文化とはアジャイル開発などシステム開発全体の考え方を意味しています。しかし、プロセスと文化を変革させることは容易ではありません。システム開発だけではなく、パートナーとの契約も見直す必要があるからです。従来は多大な要件を決めて、パートナーから見積もりを受けて請負契約を結ぶ形が多かったと思います。これからは、一定のリソースを契約して、そのリソース内で開発を始め、環境の変化に合わせて要件も変えていくスタイルの開発にシフトさせる必要があります。企業によっては購買部門がなかなか良しと言ってくれないことも多くあると聞いていますが、ビジネスの存続を踏まえた要求の変化に答えるためには不可欠です。

 うまくいっているシステムはアーキテクチャ、プロセス、文化を三位一体で変革させています。昨今はクラウドネイティブに注目が集まっていますが、プロセスと文化が整っていないと、クラウドネイティブのメリットを最大限に受け取るのは難しいか、失敗すると見ています。

寺田氏 ビジネス課題を解決するために、以前から「リーンスタートアップ」「スクラム」「アジャイル」などの開発手法が取り上げられてきました。現在はコンテナ仮想化技術や「Kubernetes」を活用して、迅速にマイクロサービス環境を構築する手法が注目されています。システム開発に利用されてきたJavaもKubernetesも日々新しいライブラリやフレームワークが開発、公開されているため、エコシステムは拡大し続けている状況です。

 あえて、私が今注目している技術は伏せておきたいと思います。私も伊藤さんがおっしゃるように、ビジネス課題を解決するために重要なポイントは、こうした手法や特定技術の採用ではないと考えています。あるビジネス課題を解決するために、特定の技術だけを利用したり精通したりしておけばよいのではなく、その時に何が最善な方法なのか、最適な採用技術は何なのかを個別に考えて検討すべきでしょう。

 私がとあるお客さまと会話をしたときの話です。相談の時点で「モダンな手法や技術を採用すると良いだろう」と考えていましたが、詳しくヒアリングする中で、納期、コスト(初期、ランニング、教育)や人的リソースなどの要因を踏まえ、新しい手法や技術を採用すると失敗するリスクが高いという判断に至った例があります。おそらく当初考えていたようなはやりの手法を採用していたらプロジェクトは失敗していたでしょう。

 こうした経験も踏まえ、お客さまから製品選定に悩んでいると問い合わせを受けた際、いつも「何が一番重要なのか優先順位をつけて考えてください」と伺うようにしています。例えば以下のような項目ですね。

  • ビジネス課題の解決
  • コスト、納期の圧縮
  • エンジニアのスキル、レベル向上

 今ある技術や手法がいつも、そしていつまでも新しく正しいわけではありません。新しいとされていた技術もすぐに古くなっていきます。今置かれた状況で、何が最適なのかを考えて選択するのが重要だと考えています。

 製品の選び方に関しては2020年9月に開催された「Cloud Native Day Tokyo 2020」というイベントでも解説しました。気になる人はこちらの動画もご覧いただければと思います(Cloud Native Architecture ことはじめ 最適な実行環境を選ぶポイント〈YouTube〉)。

SoEにもSoRにもクラウドネイティブは適用できる

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