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» 2021年05月27日 05時00分 公開

開発1カ月で「セゾンのお月玉」をリリース――クレディセゾンが語るDX推進のコツ「スピード」と「安全」をどう両立させていくか(1/2 ページ)

クレジットカードで知られるクレディセゾンはDXの取り組みを進展させ、新規サービスを1カ月で開発するなど価値創出につなげている。どのような体制を築き、何に取り組んできたのか。

[齋藤公二,@IT]

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 デジタルトランスフォーメーション(DX)や新型コロナ禍を契機に、新たな価値創出に向けた取り組みが各業種で進んでいる。では、DXやデジタル活用を成功に導くために必要な要素とは何だろうか。2021年5月11、12日に開催された「AWS Summit Online」で講演したクレディセゾン CTO(最高技術責任者)兼CIO(最高情報責任者)の小野和俊氏がクレディセゾンでDXを推進するため何に挑戦しているのか、現在の取り組みを語った。

3700万会員を抱えるクレディセゾンのITアーキテクチャ

 クレディセゾンは3700万人の会員が利用するクレジットカード「セゾンカード」や、3800万人の会員が利用するプリペイドカードなどを展開している。提携パートナーは200社を超え、連結カードショッピング取扱高は7兆円、ポイントモールの売上高は500億円規模だ。社員は4500人で、ファイナンス、不動産、リース、エンターテインメントなどの事業も手掛けている。

 小野氏は、データ連携ツール「DataSpider」を開発するアプレッソの創業社長としてIT業界で知られた存在だ。セゾン情報システムズの常務CTO時代には「HULFT」を含め、デジタル領域の取り組みを加速させ、クレディセゾンでは、1万人に現金1万円が当たることをウリにしたセゾンカードの「セゾンのお月玉」を開発した。

 「クレディセゾンのITアーキテクチャは、基幹システム、コア業務アプリ、デジタルサービスの大きく3つのレイヤーに分かれます。基幹システムには、顧客管理、カードのオーソリ情報、入出金、残高管理などが中核にあります。その周辺には、コア業務アプリとして、入会審査、与信管理、カードの不正利用の検知、カードの回収などのアプリがあります。デジタルサービスとしては、DMP(Data Management Platform)やMA(Marketing Automation)、ポイント関連、スマホアプリ、スコアリングなどを活用しています」(小野氏)

 これらシステムのアーキテクチャを小野氏は木に例えて説明した。基幹システムが幹に、コア業務アプリが枝に、デジタルサービスが葉に相当し、太い幹のもとで枝葉を伸ばし、全体が成長することで、さらに大きな木へと成長していくというイメージだ。

 しかし「3つのレイヤーそれぞれで課題を抱えています」と小野氏は述べた。

クレディセゾンがDX推進で抱えた3つの課題

 クレディセゾンがITアーキテクチャで抱えていた課題の1つは、「基幹システムの存在が大き過ぎる」ことだ。

クレディセゾン CTO(最高技術責任者)兼CIO(最高情報責任者) 小野和俊氏 クレディセゾン CTO(最高技術責任者)兼CIO(最高情報責任者) 小野和俊氏

 「ミッションクリティカルなシステムは、個人情報や重要データなど守らなければいけないものが数多くあり、結果としてものすごく巨大になっています。無事故で安定的に運用することが極めて重要で、気軽には手を入れられません。そこで対策として、普遍的な機能に絞り込んで、安定化、固定化を明確に進めていくことが重要になります」(小野氏)

 2つ目の課題は「コア業務アプリのシステム間連携が不十分」なことだ。

 「業務は回っているものの、システム間連携が十分にできていないため、『データを活用しようと思ってもデータが取れなかった』ということがまだ起きています。枝葉の末端まで栄養が行き届いていない状態です。対策として、APIを用意して社内外で利活用できる連携基盤の開発を進めていきます。アーキテクチャとしてはモノリシックではなく、マイクロサービスにできるだけ近いものを想定しています」(小野氏)

 3つ目の課題は「デジタルサービス開発のスピード不足」だ。

 「顧客が驚くようなサービスを次々と展開していきたいのですが、どうしても基幹システムやコア業務と同じ感覚で進めるために、スピードが遅くなってしまっています。対策としては、クラウド活用や内製化を進め、サービスのAPI開発を進めること。従来とは違うモード2の開発ができるパートナーを開拓していくことが求められます」(小野氏)

デジタルサービスから基幹システムまでAWSを活用

 こうした課題を解決することで、基幹システムの幹は、安全、安心をつかさどるシンプルなものになり、コア業務アプリの開発スタイルとの区分けも明確になる。コア業務アプリも、与信管理や入会審査などのそれぞれで区分けが整理され、デジタルサービスとの違いも明確になる。デジタルサービスもより気軽に開発していくことが可能になる。

 「新サービスが続々生まれ、既存システムも拡張していくことができる。そんなアーキテクチャを目指して、取り組みを進めています」(小野氏)

 具体的には、3つのレイヤーごとにクラウドサービスの活用方法を変えているという。クレディセゾンはAWS(Amazon Web Services)を採用しており、2019年時点では主にデジタルサービスの分野での活用を進めてきた。カスタマーデータプラットフォーム(CDP)の「セゾンCDP」や、スマートフォンアプリ「セゾンクラッセ」、MAツールなどだ。社内ツールや「Amazon Alexa」に対応したコンテンツ配信でも、AWS関連サービスを活用してきた。

 2021年も取り組みを進め、デジタルサービス分野では「セゾンのお月玉」や「SAISON CARD Digital」などの取り組みで、コア業務アプリとしては「入会受付」「ポイント管理」などでAWSを活用。基幹システムも「審査」「与信」「回収」の基盤の一部、基幹システムの一部でも、AWSの活用を進めている段階だという。

 「デジタルサービスは基本的にAWSを活用しています。AWSの活用が進んで、新しいサービスを世の中に届けることができるようになっています」(小野氏)

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