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偽装請負から身を守るための法律知識偽装請負から身を守るための法律知識(1/2 ページ)

ITエンジニアだろうがなかろうが、論理的な思考はビジネスパーソン共通のスキルである。では、それをすぐに学習する方法は何か? そう、記事を読むことだ。そんな記事を紹介しよう。記事を読み、論理思考を身に付けよう。

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 フリーとして活躍するITエンジニアにとって、法律の知識は必須であるといえるだろう。本記事では、@IT自分戦略研究所主催のカンファレンス「フリーエンジニアのための法律入門講座」でのセッションから、特に「偽装請負」に関する法的知識をまとめた。

 セッションの担当は、クレア法律事務所所属の弁護士 佐藤未央氏。佐藤氏は元ITエンジニアであるため現場の状況に明るく(参考記事:「ITエンジニア経験を生かし法律のプロに!」)、ITエンジニアを取り巻く社会環境にも関心が高い人物だ。これからの社会をつくっていくITエンジニアが、どのような視点を持って業務に臨むべきかを、法律の観点から語ってくれた。

偽装請負とは何か

 偽装請負とは、契約上は業務請負であるのに、実際には人材派遣になっている状態を指す。

 2006年に大手新聞社が行った報道によって、社会問題として広く認知されるようになった。大手メーカーグループなどにおいて、一部偽装請負が常態化していたことが明らかになり、改善が急務であると認識されるに至ったのだ。

 IT業界も、この違法行為と無縁ではない。むしろ常駐という勤務形態の多いIT業界では、偽装請負が発生しやすいといえる。

 ただ、違法行為として認識こそされているものの、実際どういった状態が偽装請負に当たるのかは十分に理解が行きわたっていない面がある。

 佐藤氏は、企業と社員の契約関係を単純化した図で、分かりやすく偽装請負の解説を行った。

図1 ユーザーX社、業務を請け負ったY社、Y社の社員A
図1 ユーザーX社、業務を請け負ったY社、Y社の社員A

 通常の業務請負なのか偽装請負なのかは、主に業務の進行方法に従って判断される。要点は「誰の指示で動いているのか」である。

 図1を見てほしい。X社は自社システム開発について、Y社と業務請負契約を締結している。実際の開発はY社の社員Aが担当している。この場合、社員AがY社の社内規定に従い、Y社の指示を受けて働いていれば問題はない。しかしX社が社員Aに直接仕事の指示をしていれば、偽装請負ということになる。

 より正確には、適正な請負であると認められるには「労務管理上の独立性」「事業管理上の独立性」を持っているかどうかがポイントとなる(参考:東京労働局「情報サービス業に於ける請負の適正化のための自主点検表」)。

 X社が社員Aに指示をしたいのであれば、Y社に要望を提示し、Y社から指示させる必要がある。社員Aをフリーエンジニアに置き換えてもこれはまったく同じで、X社の社内規範に従って行動する必要はない。

 なぜ、X社が社員Aに指示をすることが問題なのか。X社が自らの社内規範にのっとって社員Aを働かせるということは、社員Aを実質的にはX社の社員として勤務させていることになる。「請負」であるように偽装して、実際は派遣社員として業務に当たらせていることが問題なのだ。この場合、社員Aが残業をしようと業務でけがをしようと、X社は何ら保障をする必要はないことになる。法律的には、X社と社員Aの間には契約が存在しないからだ。

 表1に、請負と労働者派遣の違いをまとめた。

表1 請負と労働者派遣の違い
  請負 労働者派遣
関連法規 民法632条 労働者派遣法2条1号
特徴 雇用者と使用者の一致 雇用者と使用者の分離
労働者への
指揮命令
注文主から労働者への
指揮命令なし
派遣先から労働者への
指揮命令あり

 IT業界では、業務の性質上、負傷などが少ないため、労働災害補償などで法律問題に発展するケースが少なく、これまで問題が顕在化してこなかった。しかし実際は、偽装請負はかなりの数に及んでいると見られる。

 今回のカンファレンスの来場者には、偽装請負についての危機意識が高い人が多かったようだ。佐藤氏が最初に出題した「このケースは偽装請負に当たるか?」という挙手形式の質問に対して、ほとんどが正解していた。

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