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エンジニアに資格が必要な時、いらなくなる時仕事を楽しめ! エンジニアの不死身力(12)(1/2 ページ)

あなたはエンジニアの仕事を楽しんでいますか? この連載では、仕事を「つらいもの」から「楽しいもの」に変えるためのヒントを考えていきます。

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資格はいる? いらない?

 エンジニアとして「技術スキル」の次に気になるもの、それは「資格」です。

 資格があれば初めて顔を合わせる顧客に対して自分の技術力をアピールできるし、IT関係の勉強会などで同業のエンジニアから「すごいですね」と言ってもらえます。

 世の中には、さまざまな種類の資格があります。看護師や弁護士のように資格がなければ仕事ができないものから、任意団体が発行している資格までさまざまです。一方、エンジニアの資格は、「これがないと仕事ができない」というものではありません。そのため、資格を取った方が良いのか、取らなくても良いのかで、迷う人が多いのではないでしょうか。

 実際、筆者は以前こう思っていました。

 「エンジニアにとって大切なのは資格なんかじゃない。いかに技術力があるかが大切なんだ!」

 ですが、もし今、かつての自分に一言掛けられるなら、こう言いたいです。

 「『スキルがあれば資格はいらない』なんて言っているけれど、本当は資格を取る勉強が面倒くさいだけなんじゃないの? スキルを、資格を取らない言い訳に使っているだけなんじゃないの?」

 今回のテーマは「エンジニアの仕事において資格はいるか、いらないか」。これから、エンジニアにとっての資格は何か、エンジニアに資格はなぜ必要なのか、どう生かせばいいのかについて、紹介します。

「資格」=「“より素晴らしい自分”を演出するツール」

 ところで、資格とはそもそも何でしょうか? 「第三者機関による客観的評価」「スキルアップするためのツール」――さまざまな意見がありますが、筆者は「資格=より素晴らしい自分を演出するツール」ではないかと考えています。

 例えば、資格は「合コンに着ていく洋服」のようなものです。

 合コンで初めて出会う異性に自分をアピールするためには、やはり見た目を意識したいもの。多くの人は、いつもよりおしゃれをして出掛けるでしょう。その結果、気になる異性と楽しい会話ができたら、「やったね!」という感じです。

 資格も同じです。初めて会う顧客や同業者に、自分を「ワンランク上のエンジニア」に見てほしい。名刺に書かれた資格によって「このエンジニアは高い能力があるのだな」という評価をもらえたら、「やったね!」です。

 合コンに着ていく洋服も資格も、どちらも自分を「ワンランク上の自分」に引き立ててくれます。第一印象は大切です。

第一印象は良くても……? 時間が経つと変わる「評価対象」

 ここで、「自分の評価」についてさらに踏み込んで考えてみましょう。大切なのは、第一印象だけなのでしょうか?

 合コンがきっかけで、付き合いが始まったとしましょう。次第に、洋服は日常のものに変わっていきます。同じ時間を一緒に過ごすうちに、相手がどんな人なのかも分かってきます。

 「初対面の時はすてきに思えたのに、付き合ってみたらなんか違う……」

 資格についても、同じようなことがよくあります。難易度の高い資格を持っている人と接したとします。最初は「この人はすごい!」と感じても、付き合いが長くなるにつれ、資格より「どんな人なのか」「どのような仕事をするのか」に目が向くようになります。「名刺交換した時はすごい人だと思っていたのに、一緒に仕事をしたらなんか違う……」となってしまうことは比較的、多いのではないでしょうか。

 第一印象は確かに大切です。しかし、時が経過するにつれて、評価軸は「人そのもの」「姿勢や考え方」「仕事ぶり」に変わってきます。最初の評価は「資格 > 人そのもの」だったのが、時間の経過とともに「資格 < 人そのもの」という関係性に変化するのです。

 下記の図は、筆者の経験を基にした「資格と評価の関係性」です。

 資格は、最初の信用を得るために効果があります。しかしそれ以降、時間の経過とともに資格はあまり気にならなくなり、「その人が、一体どういう人なのか」に評価軸が移っていきます。

資格に過大な期待を抱き過ぎていないか?

 「この資格は、就職や転職にどれだけ有利ですか?」

 このような質問をよく耳にします。なぜこうした質問が出てくるのでしょうか?

 これは、「資格さえあれば、評価されるのではないか」と、資格に過大な期待を抱いているからかもしれません。資格への期待が大きいほど、「あれ? せっかく資格を取ったのに全然評価してくれないなんて……」と思ってしまいます。

 筆者には苦い経験があります。会社員からエンジニアとして独立した時、自分をアピールできるものが何もなかったので、「資格があればアピールできるだろう」と安易に思い込み、「とにかく、他の方から信頼される資格が欲しい」と考えました。調べてみると、経済産業省推進資格の「ITコーディネータ」資格を知り、「エンジニアの仕事につなげるなら、経営の相談に乗れるように、コンサルタントの資格があった方が有利だろう。経済産業省推進なら客観的に見たら信頼も高い。これしかない!」と思い、勉強を始めました。

 試験と研修を終えて無事に資格が取れたので、名刺に「経済産業省推進資格 ITコーディネータ」と入れて配りました。「経済産業省の推進資格ですか、すごいですね」と評価してくれる人がいた一方、それ以外の人からは期待する反応はなし。「あれ? 資格さえ取れば何とかなるんじゃないの?」――会社員時代に抱いていた、「資格があれば何とかなる」という希望は見事に打ち砕かれ、現実の厳しさをこの時、痛切に実感したのでした。

 合コンに着ていく洋服ではありませんが、「資格で自分をワンランク上に見せようとしていた」のです。しかし、この経験をきっかけに気付きました。

 「資格で着飾るのも大切。でも、着飾ること以上に大切なのは、資格を超えたところで信頼される人になることだ」

 当時、同じ理由で中小企業診断士の勉強もしていましたが、資格はITコーディネータがあれば十分だと思い、中小企業診断士の勉強を打ち切りました。それからは、「いかに仕事を通じて成果を出すか」「いかに信頼してもらえるか」に意識を向けてきました。  

 最近は名刺に資格名を入れなくなりました。少しずつ、資格なしでも自分を表現できるようになっていったのです。

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