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プログラマの基礎体力を作るのは、パソコンじゃないゆとり世代が問う「好きなことをやって何が悪い!」(5)

2月17日、Life is Tech ! 主催「Edu×Tech Fes 2013 U-18」が開催された。そこで行われた「驚異のプレゼンテーション」をレポートする。

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本連載では、Life is Tech ! が主催するイベント「Edu×Tech Fes 2013 U-18〜驚異のプレゼンテーション〜」をレポートする。Edu×Tech Fes 2013 U-18は、テクノロジーから教育を考え、教育からテクノロジーを考えるイベント。天才中高生が語るゾクゾクする3時間を、全7回の連載でお届けする。

幼いころからパソコンを触らせるだけでは、だめ

 1996年生まれ、現在16歳の矢倉大夢氏は「幼少期に身に付けておくべき力は、2つある」と述べる。彼は、中学3年生のころ、情報処理推進機構が行う「未踏IT人材発掘・育成事業」に最年少で参加。現在は灘高校に通い、パソコン研究部の部長を務めている。Linuxカーネルの開発にも参加しており、バグを修正した矢倉氏のコードは現在も世界中で動いているという。

矢倉大夢氏
矢倉大夢氏

 セキュリティにおける専門性を有することを認定する国家試験「情報セキュリティスペシャリスト試験」には、最年少で合格。高校生の科学技術コンテスト「ジャパン・サイエンス&エンジニアリング・チャレンジ(JSEC)」では、日本文部科学大臣賞と富士通賞をダブル受賞している。他にも、多数のコンテストでの受賞歴がある。

 彼は、小学校のときからインターネットに触れていたが、プログラムを書いていたわけではなかった。両親がIT系の職業に就いていたわけでもない。矢倉氏がプログラミングを始めたのは、中学1年生のとき。特に理由もなく、パソコン部に入部したのがきっかけだった。

 プログラミングを始めてから3年半、矢倉氏はこう振り返る。――「幼いころからパソコンを触らせるだけではだめだと思う」――彼はこの言葉の意味を「三つ子の魂百まで」ということわざに照らし合わせて語った。

幼少期に身に付けておくべき2つの力

 「幼少期に身に付けておくべき力は、2つある。1つは、疑問を持ち、考える力。もう1つは、つながりを見つけ出す力だ」と、矢倉氏は言う。

 彼は、幼いころから「なぜ」を考え続けてきた。「常に『なぜ?』を考えることが大切だ」とよく言われるが、このことは非常に重要だという。矢倉氏は幼少期にあったできごとを語った。

 「なぜ、鳥の『ユリカモメ』は『ユリカモメ』という名前なのか? そんな会話をぼくは母としていた。母は、「百合の花のように白いからではないか」と言った。しかし、ぼくは「立っている小さな姿が、百合の花のようだからではないかと答えた。調べてみると、「イリエカモメ(入江鴎)がユリカモメに転じたもの」だということが分かった。川の上流まで上ってくるため、『入江鴎』という名前が付いたことも分かった。『なぜ』という質問に『分からない』『後で』などと考えたらいけないということは、よく言われる。しかし、もっと重要なことは、すぐに検索するのではなく考えてみること。検索する前に、『どうしてそうなのか』と自分の頭で考えるステップが、ぼくの今の思考力を育ててきたと思っている。これは、プログラミングにも通じるもので、『なぜ動くのか』という疑問を持ってそれについて考える。疑問に持った部分を調べて、作って、解消するというプロセスを何回も繰り返す。この基礎体力のようなものが、今のぼくの力になっている」(矢倉氏)。

 「例えば、『三拍子揃う』という言葉の語源をご存じだろうか。ぼくは、ワルツのテンポに乗って、ものごとが上手く進んでいくことだと思っていた。しかし、それは間違っていた。三拍子とは、日本の伝統芸能『能楽囃子』に用いられる笛(能管)、小鼓(こつづみ)、大鼓(おおつづみ)の3種の楽器がそろった囃子のこと。こういった文化や歴史とのつながりを知ることで、世界の見え方が変わってくる。見え方が変わることは非常にエキサイティングな体験で、それは学ぶモチベーションになる。自分の好きな分野からつながりを見つけると、自分の興味の幅を広げられる。興味の幅を広げれば、視野が広がる。ぼくに『つながり』を見つけ出す力が付いたのは、いろいろな体験教室などに行って実際に経験したからだと思っている」(同氏)。

 矢倉は続ける。「『三つ子の魂百まで』を辞典で引くと、『幼いころに習ったり覚えたりしたことには用いない』と書いてある。つまり、親は子どもに『考えなさい』『つながりを見つけなさい』と教えるのではなく、子どもが自ら身に付けていけるような環境を作るべきということ。例えば、『なぜ?』を一緒に考える。それが、重要だと思う。ぼくがLinuxカーネルの開発に携わっているのも、プログラミングを深く掘り下げていったらその分野にたどり着いたから。プログラマを目指すためには、幼いころからパソコンに触れさせればいいというわけではない。もちろんそのような環境は恵まれているが、幼少期には基礎体力作りがその後に生きると思う」(同氏)。


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