通信費削減の切り札「格安SIMカード」はこう選べ（2015年12月改訂版）：運用（1/3 ページ）

　データ通信量がそれほど多くなかったり、音声通話をほとんど行わなかったりする人ならば、「格安SIMカード」と呼ばれる通信サービスを利用すると大幅に通信料金を削減できる。いろいろな会社がサービスを提供しており、テレビCMなども放送されているので、格安SIMカードの存在自体はすでに多くの人が知っていることだろう。総務省の調査によれば、契約数3万件以上の事業者は13社、契約数10万件以上の事業者は9社、契約数50万件以上の事業者は2社あるという（「MVNOサービスの契約数の動向」）。

　しかし格安SIMカードと通信キャリア（NTTドコモやau、ソフトバンクなどの携帯電話会社）とのサービスとの違いや、料金以外のメリット／デメリットなどについては知らないこともあると思う。そこで、本稿では2015年12月上旬時点の各サービスの価格などを含め、格安SIMカードのメリット／デメリット、選び方などについて解説していく。

格安SIMカードって何？

　格安SIMカードとは、通信キャリアの通信回線を借りてサービスを提供しているMVNO（Mobile Virtual Network Operator：仮想移動体通信事業者）が、通信速度やサービス内容などを制限したり、独自のサービスを追加したりして提供している通信サービス（に利用するSIMカード）のことである。通信キャリアの通信料金よりも安価なことが多いことから「格安SIMカード」とも呼ばれる。

IIJmioのSIMカード
IIJmioのSIMカードは、このようなパッケージに挟まれて送付されてくる。写真は、micro-SIM。

　個人ユーザー向けには、NTTドコモの通信回線を利用するMVNOとして、日本通信やIIJ、NTTコミュニケーションズ、DTI、So-net、ニフティ、NTTぷららなど、auの通信回線を利用するMVNOとして、ケイ・オプティコムとUQコミュニケーションズの2社がある。さらにこうしたMVNOから、サービスの供給を受けて、イオンやビックカメラなどの家電量販店でも自社ブランドで格安SIMカードを販売しており、実に多くのサービスプランから選択可能となっている。

　格安SIMカードというと、当初はデータ通信のみで、一定のデータ通信容量に制限することで安価なサービスを提供するものであったが、最近では音声通話が可能なサービスやデータ通信容量の上限がないサービス、IoT向けの低価格サービスなども登場してきている。なお音声通話が可能なサービスでは、現在利用している電話番号をそのまま格安SIMカードへの移行することも可能だ（携帯電話会社を移行する際と同様、MNPによる同番号での移行が可能）。

　ほとんどのMVNOは、LTEのフルスピードで通信できるデータ通信容量や、このデータ容量制限を超えた際の通信速度などが異なる複数のプランを用意している。月額料金、通信速度、SMS対応の有無、提供されるSIMカードの数などから自分の利用形態に合ったものを選択すればよい。主要な格安SIMカードサービスを下表にまとめてみた。表は、SIMカードのみで提供されているサービスを一覧にまとめており、スマホとセットで提供されているサービスは除いている。

　この他にも、日本通信やIIJmioなどのサービスプランをベースに独自のサービスを追加しているところもある。例えば、量販店のビックカメラでは、IIJmioのサービスプランをベースにした「BIC SIM」を販売しており、同じ月額利用料で公衆無線LANサービスの「Wi2 300」が無料で利用可能となっている。

　なお下表の月額料金や通信速度などは変更されることもあり、新しいサービスも次々と登場しているので、購入前に各自再度、調べていただきたい（表中のサービス内容や価格は2015年12月上旬のもの。表中の価格は税別）。

　格安SIMカードは、MVNOのWebサイトで直接申し込みを行いSIMカードを郵送してもらうか、販売店やAmazonなどのオンラインストアでSIMカードのパッケージを購入後、オンラインでクレジットカードなどの情報を登録するかのいずれかで利用開始となる。多くがクレジットカードによる支払いとなっているので、学生などクレジットカードを持っていない場合は両親などの名義による申し込みが必要となる。BIGLOBEなど一部のMVNOは口座振替に対応しているので、クレジットカードの支払が行えない場合は、こうした格安SIMカードを選ぶとよい。

特徴的な格安SIMカード

　上表の「主要な格安SIMカードサービス」の通り、格安SIMカードはさまざまなサービスプランが提供されている。このうち、特徴的なサービスプランについて簡単に解説しておこう。なおサービス内容は原稿執筆時点（2015年12月16日）のものとなる。

■データ通信容量を複数のSIMカードでシェア

　格安SIMカードには、複数のSIMカードでデータ通信容量を分け合えるサービスもある。ちょうどNTTドコモの「シェアパック（パケあえる）」のようなものだ。スマホとタブレットといった複数のデバイスや家族で、こうしたサービスを利用すれば、それぞれのデバイスで格安SIMカードを利用するよりも通信料金を削減できる可能性がある。

　IIJの「IIJmio ファミリーシェアプラン」やNTTコミュニケーションズの「OCN モバイル ONE」、エキサイトの「BB.exciteモバイルLTE SIM3枚コース」、ビッグローブの「BIGLOBE LTE・3G スタンダードプラン」、ハイホーの「hi-ho LTE typeD アソート」「hi-ho LTE typeD ファミリーシェア」、DMM.comの「DMM mobile シェアコース」などがある。データ通信容量や通信料金などが異なるので、サービス内容などを検討の上、選択するとよいだろう。

■NTTドコモとauの回線が選べる「mineo」

　ケイ・オプティコムのmineoは、NTTドコモとauの2種類の回線が選択可能となっている。同一名義ならば、両社の回線の契約を合計したデータ通信容量を分け合えることを可能にしている。例えば、それぞれ1GBのデータ容量を契約した場合、2GBを2種類の回線で分け合うことができる。またNTTドコモとauの回線間での乗り換えも可能なので、例えばauの回線がつながりにくいといった場合、NTTドコモの回線に切り替えることもできる（端末は、それぞれの回線に対応したものが必要になるが）。

■ヘビーユーザー向けのLTE回線使い放題プラン

　通信キャリアも格安SIMカードも一部を除き、データ通信容量には制限がある。そのため、テザリングを使ってリモートデスクトップを長時間使ったり、外でビデオを長時間視聴したりしていると、すぐにデータ通信容量の上限に達してしまう。こうした使い方を行う人は、LTE回線が使い放題のU-NEXTの「U-mobile LTE使い放題（下り225Mbps／上り50Mbps）」や日本通信の「b-mobile SIM高速定額（速度制限なし）」、ソネットの「＋Talk Lプラン（下り225Mbps／上り50Mbps）」、ぷららの「ぷららモバイルLTE 定額無制限（上り下りともに3Mbps）」などを利用するとよい。

■電話かけ放題の「NifMo でんわ」

　頻繁に音声通話を行う人の場合、格安SIMカードに移行すると通話料金がかさみ、結果的に音声定額サービスがある通信キャリアのサービスを利用していたときよりも料金が高くなってしまうことがある。ほとんどの格安SIMカードの音声通話サービスは、国内通話で30秒20円の完全従量制のサービスだからだ。

　そのような人の場合、国内通話が月額1300円（税別）でかけ放題になる「NifMo でんわ」がオプションサービスとして利用可能な「NifMo」を利用するとよい。データ通信容量が3GBのプランの国内通話かけ放題が2900円（税別）であり、通信キャリアの通信料金よりも大幅に安い価格となっている。