検索
連載

進化を続けるWindows Serverのストレージ機能【徹底解説】Windows Server 2012 R2(2)(1/2 ページ)

これまでの企業システムでは、ハードウェアベンダーが提供する専用ストレージを使用するのが定番だった。Windows Server 2012 R2ではWindows Server 2012で強化されたストレージ機能をさらに向上させ、それらの機能をフルに活用することで専用ストレージに代わる新たな選択肢の1つとして検討に値するまでなったといえる。今回はWindows Server 2012 R2でさらなる進化を遂げたストレージ機能を解説する。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

 Windows Server 2012 R2のストレージ機能を詳しく説明する前に、まずは一般的なWindowsシステムにおけるストレージの役割について確認しておこう。

図1
図1:Windows Serverに搭載されているストレージ機能の役割ごとのレイヤー

 Windows Serverではディスク、ファイルシステム、サービスの各レイヤーでさまざまなストレージ機能を提供している。今回はディスクとサービスの役割を詳しく解説し、ファイルシステムに関しては割愛させていただく。

ストレージの信頼性と性能を大きく向上させる「記憶域スペース」

 Windows Server 2012で初めて実装された「記憶域スペース」は、Windowsベースのストレージ環境を構築するための記憶域仮想化機能になる。基本的な概念は、Linux、UNIX系のOSで利用できるディスク管理機能「LVM(Logical Volume Manager)」と類似した三層(物理ディスク、記憶域プール、記憶域スペース)の管理構成を採る。

図2
図2:記憶域スペースの三層管理

 Windows Server 2012 R2の記憶域スペースは、複数の物理ディスクをまとめてプール化(記憶域プール)し、仮想ディスクを作成(記憶域スペース)して使用する方式だ。つまり、記憶域プールは複数の物理ディスクを束ねた“仮想的な1つのストレージ”であり、記憶域スペースはその仮想的な1つのストレージ上に作成する仮想ディスク(ドライブ)になる。

 記憶域スペースに使用する物理ディスクは、容量が異なっていても構わない。ただし、ミラーやパリティを構成する場合は制限が発生することがあるので、できれば同一容量のディスクを利用するのが望ましい。

 なお、記憶域プールは物理ディスクのオンライン増設をサポートしており、システムが稼働中でも随時ディスクを追加して容量を増やせる。また、後からディスク追加もできるので、コストを抑えた導入が可能となる。

 Windows Server 2012 R2の記憶域スペースでは、データの冗長性を確保する回復性の種類として、以下の3つの記憶域のレイアウトをサポートしている。

  • シンプル(回復性なし)

 データを複数の物理ディスクに分割して書き込むこと(ストライピング)で、ディスクI/O(Input/Output)のスループットを高速化すると共に、物理ディスクの容量を余すことなく利用できるレイアウト。ただし、物理ディスクに障害が発生した場合には、全てのデータが失われる恐れがある。

  • ミラー

 データを2つ、あるいは3つに複製し、それぞれ異なる物理ディスク上に保存することで障害に対する信頼性を向上させるレイアウト。

  • パリティ

 データを複数のストライプに分割し、各ストライプとパリティをそれぞれ異なる物理ディスク上に書き込むことで障害に対する信頼性を向上させるレイアウト。

図3
図3:「記憶域のレイアウトの選択」画面。3つのレイアウトから選択できる

 記憶域スペースを作成する場合、回復性を考慮すると「シンプル」という選択肢は排除される。しかし、シンプルの場合には、ストライピングによるディスクI/Oの向上というメリットが得られる。

 ミラーとパリティでは、回復性の仕組みによってディスクに障害が発生してもデータが損失することはない。さらに、ディスクに障害が発生した際には、ホットスペアや記憶域プール内の他のディスクの空き容量を使用して、修復、再構成が可能だ。ただし、パリティの場合はディスクI/Oがシンプルやミラーよりも遅くなることが導入時の考慮点となる。

 そこで、注目したいのがミラーのレイアウトになる。ミラーの場合、構成によっては回復性を維持しつつ、書き込み性能を向上できる。デメリットとしては物理ディスクの全容量に対し、実際に使用できる容量が2分の1、もしくは3分の1となるため、シンプルやパリティよりもややコストが高くなることだろう。

SSDによってさらなる高速化が実現

  • 記憶域階層

 SSD(Solid State Drive)は記憶素子として半導体メモリを用いたストレージで、HDD(Hard Disk Drive)よりもディスクI/Oが高速なのが特徴だ。Windows Server 2012 R2では、SSDとHDDを組み合わせた2つの記憶域から構成される仮想ディスクを作成できるようになった。これが「記憶域階層」と呼ばれる新機能になる。

 記憶域階層にはSSD階層とHDD階層の2つがあり、SSD階層は頻繁にアクセスされるデータ用(ホットデータ)、HDD階層はアクセス頻度が少ないデータ用(コールドデータ)として使用される。この機能により、優れたパフォーマンスと記憶域容量を両立した仮想ディスクを作成できる。

図4
図4:記憶域階層ではSSD階層にホットデータを配置することで、記憶域スペースのパフォーマンスを向上
  • ライトバックキャッシュ

 記憶域プールにSSDが存在する場合は、SSDの一部領域をランダム書き込みのバッファとして用いる「ライトバックキャッシュ」が利用できる。ライトバックキャッシュは書き込み性能が高いSSDに最初に書き込まれ、その後、HDDに書き込むことによってディスクI/O性能を飛躍的に高める機能だ。先に紹介した記憶域階層とライトバックキャッシュは両方同時に、あるいはどちらか一方だけを使用するように構成することも可能だ。

標準サポートになった「iSCSIターゲットサーバー」

 プライベートクラウドをHyper-Vベースで構築する際には、クラスターと組み合わせることで仮想化基盤の可用性を向上させることができる。さらに「System Center 2012 R2 Virtual Machine Manager」との連携により、ライブマイグレーションや動的最適化、電源管理など、運用管理面でより多くのメリットを享受できるようになる。

 ここで考慮しなければならないのが、クラスターサービスとストレージ機能の関係だ。このWindows Serverのクラスターサービスでは、SAN(Storage Area Network)上の共有ディスクにSAS(Serial Attached SCSI)、FC(Fibre Channel)、iSCSI(Internet Small Computer System Interface)のいずれかを選択する必要がある。

 iSCSIターゲットサーバーがOSの標準機能となり、Windows Server 2012 R2をiSCSIストレージとして構成することによって、クラスター対応ストレージを別途購入する必要はなくなった。当初、この機能が搭載されていたのはWindows Storage Serverだけだったが、多くのユーザーからの要望を受けて、Windows Server 2012から標準機能となったのだ。

 iSCSIターゲットサーバーでは、ローカルディスクおよびWindows Server 2012以降の記憶域スペース(記憶域プールおよび仮想ディスク)が記憶域として使用できる。

 Windows Server 2012のiSCSIターゲットは、LUN(論理ユニット番号)を提供するiSCSI仮想ディスクとして容量固定タイプのVHDを採用していた。Windows Server 2012 R2のiSCSIターゲットはVHDXを採用することにより、最大64Tバイト(テラバイト)までのディスクを割り当てられる他、容量固定、容量可変、差分ディスク、オンラインでのリサイズをサポートする。

       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る