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“新しいOffice”はいろいろと新しい山市良のうぃんどうず日記(2)

これまで常識と思っていたことが、新しいバージョンでは通用しなくなるというのは戸惑うものです。最近、マイクロソフトの“新しいOffice”の更新に振り回された人は多いのではないでしょうか。

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知っていましたか? “新しいOffice”の更新方法

 前回は「Windows XPのサポート終了のお知らせ」の表示されるタイミングについて、筆者が調べてみた結果を紹介しました。「毎月8日の15時」になったら、街中のPC画面に目を光らせてみてください。もしかしたら、思わぬところであのポップアップ画面を見ることができるかもしれませんよ。例えば、歯の治療中にレントゲン写真を見せてくれる画面とか……。

 今回は、Microsoft Officeのお話。企業であれ、個人であれ、Windowsユーザーの多くは、「Microsoft Office」アプリケーションを利用していると思います。2013年にリリースされた最新のOfficeを購入して使っている人もいれば、PCにプレインストールされたOfficeをそのまま使っている人もいるでしょう。

 Windows向けのOfficeの最新バージョンは、2013年2月に一般向け販売が開始された「Office 2013」になります。今回は、既にOffice 2013を利用しているという人、これから利用する予定の人、この4月のOffice 2003のサポート終了に合わせて新しいOfficeに乗り換えるという人向けに、ぜひ知っておいていただきたい、“新しいOffice”の新しい更新方法について紹介します。

 なお、マイクロソフトではOffice 2013を、“新しいOffice(the new Office)”や単に“Office”と呼んでいますが、バージョンの話が出てくるとややこしくなりますので、本稿では「Office 2013」と記述することにします。

“影響を受ける製品はありません”って、どういうこと?

 マイクロソフトは2014年2月末、Office 2013に対する初のサービスパックである「Office 2013 Service Pack(SP)1」をリリースしました。以下のマイクロソフトによる公式ブログのアナウンス後、これをソースとしたニュース記事が複数のIT系メディアで掲載されました。

 Office 2013ユーザーの中には、いち早くこの情報をキャッチして、Office 2013 SP1をダウンロードした人も多いと思います。そして、Office 2013 SP1をダウンロードした人の多くが、「このパッケージをシステムにインストールすることによって影響を受ける製品はありません」という、理解し難いメッセージを目にしたことでしょう(画面1)。一方で、すんなりとOffice 2013 SP1に更新できた人もいるはずです。

画面1
画面1 Office 2013がインストールされているのに「影響を受ける製品はありません」というメッセージが表示され、Office 2013 SP1に更新できない

 「影響を受ける製品はありません」というメッセージは何かの間違いと思われた人も多いでしょう。しかし、このメッセージの通り、影響を受ける製品が本当に無いのです。そのことは、Office 2013 SP1のダウンロードページにある日本語の説明からは判断できませんし(英語のダウンロードページにはちゃんと書かれてあります)、以下のサポート技術情報も機械翻訳で分かりにくいかもしれませんが、この更新プログラムは「MSI」版のOffice 2013を対象としたものであり、「クイック実行」版のOffice 2013は対象外なのです。

 32ビット版のOffice 2013 SP1更新プログラムは657.4MBと結構なファイルサイズです。もし対象外だとしたら、無駄なダウンロード時間とネットワーク帯域を使ってしまったことになりますね。

 Windows向け(Windows RTを除く)のOffice 2013には、MSI版クイック実行版の2つがあります。MSI版はOffice 2010と同じWindowsインストーラーを使用して、製品メディアからインストールします。一方、クリック実行版は英語では「Click-to-Run」と呼ばれ、アプリケーションのインストールと更新には「Microsoft Application Virtualization」(App-V)というアプリケーション仮想化テクノロジが応用されています。

 今回は詳しく説明しませんが、簡単に言うとOffice 2013のイメージをインターネットからダウンロードするだけで、すぐに実行可能になるというものです。

 日本では、以下のOfficeスイートおよび単体製品が販売されています。実はこの多数の製品の中で、MSI版となるのはボリュームライセンスおよびMSDN(Microsoft Developer Network)サブスクリプションで提供されるOffice 2013だけになります。それ以外のパッケージ製品、プレインストール製品、Office 365サブスクリプション製品は全てクイック実行版であり、MSI版は存在しません。逆に、ボリュームライセンスおよびMSDNサブスクリプションのクイック実行版も存在しません。

Officeスイートのパッケージ(リテール)製品およびプレインストール(PIPc)製品:クイック実行

  • Office Personal 2013
  • Office Home and Business 2013
  • Office Professional 2013
  • Office Professional Academic 2013(パッケージ製品のみ)

Office単体製品のパッケージ(リテール)製品:クイック実行

  • Word 2013
  • Excel 2013
  • PowerPoint 2013
  • Outlook 2013
  • Publisher 2013
  • Access 2013
  • OneNote 2013(※OneNote 2013の無償版が2014年3月18日に公開されました → Microsoft OneNote

Officeサブスクリプション:クイック実行

  • Office 365 ProPlus(Office 365 Professional Plus)

Officeボリュームライセンス:MSI

  • Office Professional Plus 2013
  • Office Standard 2013

MSDNサブスクリプション(Visual Studio Ultimate with MSDNおよびPremium with MSDN):MSI

  • Office Professional Plus 2013(※MSDNサブスクリプションで提供されるソフトウェアは、原則としてソフトウェアの開発、テスト、デモ、または評価を目的とした使用に限定されますが、Officeについては一般業務用に一部を使用できます → ライセンスの考え方:Officeの一般業務用ライセンスについて

 上の一覧には含めませんでしたが、VisioやProjectも同様であり、ボリュームライセンスおよびMSDNサブスクリプションで提供されるものはMSI版、それ以外はクイック実行版になります。この他、Office 2013 RTというものもありますが、これはWindows RTに同梱されているもので、Windows Updateを通じてOffice 2013 RT SP1に更新されます。

MSOのバージョンが「15.0.4569.1506」ならSP1適用済み

 MSI版のOffice 2013のユーザーには、既にWindows Update経由でOffice 2013 SP1が配信されています。Office 2013 SP1に更新済みであれば、インストールされた更新プログラムの一覧で確認できます。

 Office 2010以前とは異なり、各Officeアプリケーションのバージョン情報に「SP1」の記述はありません。アプリケーションのバージョン情報に「MSO(15.0.4569.1506)」(またはそれ以上の番号)があれば、Office 2013 SP1に更新済みです。

 なお、Officeアプリケーションのバージョン情報は、「ファイル」メニューの「アカウント(またはOfficeアカウント)」を開くと確認できます。コントロールパネルの「プログラムと機能」のOffice製品の「バージョン」列で確認することもできます(画面2)。

画面2
画面2 Office 2013 SP1に更新済みのMSI版Office 2013

 一方、クイック実行版のOffice 2013には、Microsoft Updateを通じてOffice 2013 SP1が配信されることはありません。Office 2013 SP1の更新は、Office 2013自身が備える更新機能で行われます。Officeアプリケーションの「アカウント(またはOfficeアカウント)」ページにある「Office更新プログラム」のバージョンが「15.0.4569.1507」より大きな番号(3月末時点では15.0.4569.1508が最新)であれば、既にOffice 2013 SP1に更新済みです。あるいは、アプリケーションのバージョン情報の「MSO(15.0.4569.1506)」で確認することもできます。

 まだOffice 2013 SP1に更新されていないという場合は、「更新オプション」で「更新を無効にする」を選択して自動更新を無効にし、再度「更新を有効にする」を選択することで最新の更新プログラムの検出とダウンロードを開始できるはずです。また、クイック実行版の場合、Office 2013 SP1公開後に新規インストールしたものは、最初からOffice 2013 SP1以降の最新バージョン(3月末時点では「15.0.4569.1508」が最新)になっています(画面3)。

画面3
画面3 Office 2013 SP1に更新済みのクイック実行版Office 2013

 以上のように、MSI版とクイック実行版ではOfficeの更新方法がまったく異なります。それぞれに別のサポート技術情報が公開されているので、混同しないように注意してください。

おまけ ―コピペがより簡単に!―

 Office 2013 SP1に更新したWordで、リボンメニューの「挿入」タブに「Wikipedia」コマンドが追加されていることに気が付いた人はいますでしょうか。これは、ドキュメントで選択した部分を「ウィキペディア」で素早く検索できるOfficeアプリの機能を呼び出すコマンドです(画面4)。

画面4
画面4 Office 2013 SP1でWordに追加された「Wikipedia」コマンド。アプリ自体は2013年7月から利用可能だった

 ですが、このウィキペディア検索機能がOffice 2013 SP1の新機能と考えるのはちょっと違います。このOfficeアプリの現在のバージョン(v1.2.0.0)は「2013年7月」には既に利用可能になっており、Office 2013 SP1に更新されていないWordやExcelでもOfficeストアから追加すれば利用可能になります。

 Office 2013 SP1では、単にWordのリボンメニューに機能を呼び出す機能(Microsoftアカウントにまだアプリを追加していない場合は簡単に追加できる機能)のコマンドが追加されたというだけです。同じように、Office 2013 SP1のExcelには、「Bing Maps」と「People Graph」の2つのOfficeアプリを追加して呼び出すコマンドが追加されています。

 日本向けのOfficeストアは製品リリースから半年ほど遅れた2013年7月31日に公開されたので、Officeアプリという機能自体がまだ認知されていないのかもしれません。

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筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2014)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手がける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。


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