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自動運転トラクターに学ぶ、「運用自動化」と「運用自律化」の本質自動化/自律化が実現するのは、人の「代替」ではなく「アシスト」(2/3 ページ)

ITシステムに、これまでの「静的な運用」ではなく、変化に応える「動的な運用」への変革が求められている。しかしこれを具体的に、どのように実現すれば良いのか。既に実践する他業種やエキスパートの取り組みから、そのヒントと具体策を探る。

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「把握」「分析」「対処」の各段階をつなぐプロセスの自動化も視野に

photo 日立製作所 ITプラットフォーム事業本部 JP1エバンジェリストの加藤恵理氏(IT基盤ソリューション本部)

 続いて、日立製作所 ITプラットフォーム事業本部 JP1エバンジェリストの加藤恵理氏(IT基盤ソリューション本部)が「自動化・自律化で考えるこれからの運用管理」と題するセッションを行った。

 トラクターの自律運転システムに関する菅原氏の取り組みに対し「同じ会社にいても全く違う分野の話だが、非常に興味深かった。自律運転システムをITシステムに置き換えて考えられる」と述べ、こうした一連のシステムを縁の下の力持ちとして支えるITシステム運用の自動化が抱える課題と解決策を説明した。

 ITと経営の融合が進む中で、ITの運用には、ビジネス環境の変化に柔軟かつ迅速に対応できる俊敏性や伸縮性、さらには見える化や自動化といった要素が求められる。「JP1」は、こうした課題の解決を目指した統合運用管理ツールだ。

 加藤氏は、ITシステムの仮想化・クラウド化の進展に伴って新たな問題が生じていると説明した。「仮想化でコストを削減できると思っていたら、集約によってかえってシステムが複雑化したり、障害が発生したときの影響が思わぬところに拡大するといった悩ましい問題が生じている」(加藤氏)。その解決には“より高度な”スキルと知識が求められ、かえって手が回りきらなくなる事態に陥ることもあるという。

 システム運用上の問題を解決するには、「把握」「原因分析」「対処」という三つのステップが必要になる。加藤氏は「各段階はある程度自動化できているが、それら各ステップをつなぐところにはまだ人の判断が介在している。この部分まで自動化できれば、運用管理全体の自動化、自律化につながり、運用の負担が減るのではないか」と述べ、そのためのピースとして、IT運用分析製品である「JP1/Operations Analytics」があるとした。さらにその先には、リアルデータ分析に基づき、各現象間の相関関係を究明し、対処につなげていくことで「究極の自律化につながっていくのではないか」と運用管理の将来像を語る。

 そして、データ解析を活用したサービスとしてのシステム管理基盤を通じて、“スピード経営時代”のITを支えていきたいと述べ、講演を締めくくった。

プロセスとプロダクトのマッピングが鍵に

photo 伊藤忠テクノソリューションズの渥美秀彦氏( ITインフラ技術推進第1部 ITマネジメント技術推進課 主任)

 伊藤忠テクノソリューションズの渥美秀彦氏( ITインフラ技術推進第1部 ITマネジメント技術推進課 主任)は、「超上流工程から導く、クラウド運用自律化への道」と題したセッションで、「(今後、システム部門は)IT運用のポジションをきちんと考えていく必要がある」と呼び掛けた。

 渥美氏は先日、顧客からこう問われたそうだ。「そもそも、人の代わりにITを導入したのに、なぜこんなにお金を掛けて運用しないといけないのか? 運用って必要なのか?」。

 この問いには、「IT運用への投資を、経費ではなく“設備投資”と捉えているならば、改善が必要だ。今後は、サービス提供者としての意識を持ち、運用を抜本的に改革していく必要がある」と答えたという。また、自律化、自動化の進展に伴い、「いずれは、『運用設計の空白地帯を人海戦術でカバーする』ことも通用しなくなるだろう」とも述べ、それを見据えた信頼性の高い仕組みを作り上げていく必要があると指摘した。

 では、その信頼性の高い仕組みとは何だろうか。渥美氏は、近い将来の自律運用が抱えるであろう課題を、自動運転車に例えて説明した。

 「車を走らせるには『状況把握』と『計画立案』『実行』というループを回していく。しかし、状況把握と実行のステップはどうしても誤差が生じてしまう。この誤差をどう埋めるかが課題だ」(渥美氏)。

 実は、JP1がITシステムに対して行っていることも、この自動運転車のループと同じだ。状況把握と立案、実行という仕組みを回すことによって、運用の自律化を支援している。渥美氏は「今から、できるところを自動化するとともに、精度の向上に取り組むべき」と述べた。


 もう一つ同氏が強調したのは、運用におけるプロセスの重要性である。

 「いくらプロダクトが良くても、プロセスがなければ意味がない。製品比較時には、つい機能の有無だけを見てしまいがちだが、必ずプロセスとプロダクトをマッピングした状態で比較してほしい」(渥美氏)。

 その観点から、セルフポータルや構成管理、変更管理、自動化の実装といったポイントを見ていくべきという。

 最後に同氏は「運用プロセスとプロダクトを一緒に進め、そこに自動化や精度向上といったエッセンスを加えることで、次世代の変化に備えた運用基盤が実現できる」と述べ、それを運用部門が「サービス」として提供する視点が重要だと呼び掛けた。

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