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ITエンジニア U&Iターンの理想と現実(19):

秋田編:ノマド制度を利用して地元に拠点を開設――人口減少の最先端で“余白”に挑め (2/3)

小学校も中学校も1校ずつ、65歳以上人口45%超の過疎地で何ができるのか……。U&Iターンの理想と現実をつづる本連載。秋田編は五城目町の廃校を利活用したオフィスで創造的な仕事に取り組む男の奮闘記です。

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秋田→海士町(島根)→五城目町(秋田)

 自己紹介が遅くなりました。はじめまして。「ウェブインパクト」五城目コアリーダーの秋元悠史です。このたび「U&Iターンの理想と現実:秋田編」を担当することになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 筆者は秋田県出身のいわゆるUターンです。五城目町から車で1時間半ほど離れた県南部の小さな町で生まれ育ちました。

 五城目町に移住して半年ほどで、それまでは島根県で約5年半暮らしておりました。日本海に浮かぶ海士町(あまちょう)という小さな離島です。人口はピーク時から3分の1近くにまで減少して、現在は2350人足らず。しかし、日本全国、そして海外からも移住者が集まり、人口の1割ほどをIターン者が占める不思議な島です。

 海士町では近隣町村が設立した公立の塾のスタッフとして、教科指導や進路指導、総務、経理、人材採用などに広く浅く携わっていました。高校と地域の尽力により、地元出身の生徒が半分、全国から入学する生徒が半分という全国的にも珍しい環境で、多様な生徒と関わりながら日々を過ごしました。志を同じくする移住者仲間たちと情報を交換し合い、時に協働して物事を進められたのは、仕事の醍醐味(だいごみ)の1つでした。

 島を離れた後、縁あってたどり着いたのが五城目町です。

 きっかけは3年前、海士町を訪れた人たちの中に、秋田県に移住する男性がいたことです。「五城目町に移住する」と聞いたときは、「なぜ、五城目に? 五城目って何かあったっけ?」と、頭に「?」マークが飛び交いました。

 正直、五城目という町はそれくらい、何も特徴がない場所に見えていたのです。それは逆に筆者の好奇心を駆り立て、筆者自身も移住することになりました。

 とはいえ、秋田から遠く離れた島根の離島で、必ずしも雇用環境が良いと言えない地方の望ましい求人を見つけるのは難しい。そこでまずは五城目町に住居を構え、それからじっくりと仕事を探すことに決めました。

五城目町の魅力

 「仕事より先に家を決めてしまう」という、いわば「見切り発車」を筆者がしてしまったほどの五城目町の魅力は何でしょう。

 1つ目の魅力は「ほど良さ」です。

 五城目町はもともと、隣接地域の中心的位置付けだったため、飲食店や日常的な買い物をする場所にはあまり困りません。町中にはコンビニが、車で5分ほどのところにはイオンスーパーセンターもありますので、それなりに便利です。

 かと思えば、奥地に入ると手付かずの自然が残っており、季節の移ろいをたっぷりと楽しめます(今年はクマに注意が必要でした)。公共交通はあまり整備されていないため、JRの最寄り駅までは車で10分以上かかりますが、秋田市まで車で40分ほどなので、都市的な生活に触れることもそこまで難しくありません。

 ちなみに秋田空港までは車で1時間ほど。秋田〜羽田間はこれまた1時間ちょっとです。都会に近いようで遠く、遠いようで近い、田舎の豊かさと利便性がほど良くミックスした絶妙な町なのです。

 もう1つの魅力は「人」です。

 五城目町には3年前から移住者が続々と集まるようになり、地元の30〜40代の人たちと絡み合って、自分たちのやりたいことをこの町で実現する流れが生まれつつあります。

 町の課題の解決をテクノロジーで図る「いなかソン(いなか×ハッカソン)」、衰退しつつある朝市を文字通り盛り上げようと奮闘する「五城目朝市わくわく盛り上げ隊!」、果てはラーメン二郎インスパイアを自作する「二郎ハックin五城目」と、多種多様な取り組みがこの小さな田舎町で行われています。

 朝市を盛り上げる活動に至っては、2016年度から「ごじょうめ朝市plus+(通称朝ぷら)」という新しい枠組みを導入し、若者たちが自己表現できる場として再生を図りました。その結果、来場者数が平均して3000人を越えるほどの盛況っぷりになりました。

 日ごろ家事に育児に仕事にと追われている女性たちが、こつこつと作り上げてきたハンドメイド品を出品し、道行く人とコミュニケーションを取っている様子を見ると、ここが人口減少の真っただ中であることをついつい忘れそうになるくらいです。

廃校を利用したインキュベーションオフィス「BABAME BASE」

 こうしたムーブメントを織り成す拠点の1つが、「BABAME BASE」と呼ばれる「五城目町地域活性化支援センター」です。138年の歴史に幕を閉じ廃校となった旧馬場目小学校のピカピカの校舎を利活用して、インキュベーションオフィスとして2013年10月に再スタートした建物です。

 BABAME BASEは、もともと教室だった部屋を、月2万円(+電気代)という破格の値段でオフィス用に貸し出しています。開設当初3社だった入居企業は、現在13社。教育、組織開発、コンテンツビジネス、広告代理店、サイクルツアー、ドローンスクール……と多岐にわたる業種の移住者や地元の会社が入居しています。

 筆者が働いているウェブインパクトも、BABAME BASEに2016年8月1日から入居し、五城目コア(弊社は各拠点を「コア」と呼んでいます)を設立しました。その第1号社員が筆者です。

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