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「文系エンジニアは世界で通用しない」は本当か?〜シリコンバレーの常識学歴=大学名ではない(2/3 ページ)

「米国では、いや日本以外の国では、理系出身者しかITエンジニアになれない」「文系エンジニアというものは海外には存在しない」――このようなウワサを聞いたことはないだろうか。日米のエンジニアが文系エンジニアについて真剣に解説する前後編。後編は、シリコンバレー在住のエンジニアが、米国の採用事情や学歴の考え方、そして文系エンジニアはシリコンバレーに存在するのか、を解説する。

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学歴=大学名ではない

 米国のIT業界には、日本の情報処理試験のような便利な物差しはありません。従って、履歴書を基に行われる書類選考でスキルをアピールできるのは、新卒なら「学歴」や「専攻」、中途なら「職務経歴」です。

 ただし、学歴といっても有名大学卒が有利ということではありません。

 日本と決定的に違うのは、学歴=出身大学ではなくて、学歴=専攻や卒論の内容、ということです。大学院を出ていれば有利ですが、一部の超エリート大学を除けば、普通の州立、私立大学は大学名で選別されることはあまりありません。

 「どこの大学を出たか」ではなく「大学で何を専攻したか」を「資格」と捉えますから、「専攻」が入社の最初の関門です。従って、IT関連の専攻ではない人は、新卒時はこの点で大きく不利だ、というのは事実です。

文系向きのIT系職種

 シリコンバレーのIT企業で文系学部出身のITエンジニアというのは極めてまれな存在です。米国の大学は、日本のように学内が理系と文系とにはっきり二分されていることはありませんが、文系的な専攻を卒業して、コードをバリバリ書くエンジニア部門に“新卒で”採用されるケースはかなり限定されます。これは米国に限らず、たぶん日本以外の多くの国でも同じかと思います。

 しかし現代のシリコンバレーのIT業界は業務が細分化されているので、文系出身者の多い職種もたくさんあります。幾つか例を挙げましょう。

プロジェクトマネジャー、プログラムマネジャー

 文系向きの職種の代表格がマネジャー職です。米国の採用の特徴として、マネジャー、つまり何かの管理をする専門の人を外部から雇用することが多々あります。

 例えばプロジェクトマネジャー=通称PMは、経営陣から下りてきたプロジェクトの工程に従って、開発の人員、予算の管理、外注管理、などの計画を行い、状況を日々監視し、プロジェクトを成功へ導く仕事です。

 ただし、マネジャーといっても、日本の会社の「管理職」とは違います。米国のPMは、部下を管理する「役職」ではなく、プロジェクトを管理する「仕事」です。芸能人のマネジャーや野球部のマネジャーに近い感じでしょうか。

 米国のPMは、実働する開発エンジニアを支え、経営陣とのコミュニケーションをとる重要な職種です。プログラマー経験がある方が理想的ですが、文系卒であったり、若手で機動力のある社員が担当することもあります。

テクニカルアカウンタント、カスタマーエンジニアリング

 客先と直接対話して仕様を詰めたり、クレームを受けたりする仕事です。

 比較的大きいIT企業では、「客先と接する部門」と「実際に開発を行う部門」の人員を明確に分けることが多いため、このような職種が存在します。

 仕事内容は日本のIT企業でのSEに近いのですが、開発部門の上に位置して指示するのではなく、客先と開発部門を取り持つポジションです。

テクニカルライター

 客先向けの仕様書やWebサイトの情報など、最終ドキュメントを作成する仕事です。

 世界中に顧客を持つIT企業は、日本語を含む世界中の言語を扱わなければなりません。そのため、それぞれの言語をネイティブとして読み書きできる人材が必要です。テクニカルライターは、最も文系向きの職種かも知れません。

データアナリスト

 文系といえども、現代は「数字」を避けては生きていけません。直接CやJavaのような言語でプログラミングはしなくても、大量データを統計的な手法で扱う分野の仕事はたくさんあります。そのような特定の専門分野の求人はむしろ増える傾向があります。

米国でIT企業を経営する、Graymatics社のShanbhag CEO(インド工科大学卒)に、ずばり聞いてみました。「文系エンジニアってアリですか?」(聞き手:アイティメディア GO阿部川)

 他にもオープンソースソフトウェアのライセンスを取り扱う法務部門や、サードパーティーとの契約を扱う調達部門など、文系ではあるものの開発部門との密接なコミュニケーションが必要な部門はたくさんあります。

 大学の専攻が文系でも、こうした職種から段階を経て徐々にエンジニア部門に移行していくことは十分可能です。

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