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価値創造時代のプロジェクトマネジメントは「自在な発想」で楽しもう羽ばたけ!ネットワークエンジニア(12)(1/2 ページ)

今、ICTにはこれまでにないサービスを創出したり、ビジネスプロセスを革新的に変えたりする価値創造が求められている。価値創造を目的としたプロジェクトでは旧来のプロジェクトマネジメントにはない「自在な発想」が必要だ。今回は新しいプロジェクトマネジメントの在り方について述べたい。

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 プロジェクトとは明確な目的を持ち、それを達成するための人の営みである。ICTに関わるプロジェクトだけでなく、世の中にはさまざまなプロジェクトがある。社会活動はプロジェクトの集合体だ、と言っても過言ではない。

 ICTにおけるプロジェクトマネジメントは、時系列順に作業を表した「線表(別名ガントチャート)」、作業の細分化とコストや人員の配分を行う「WBS(Work Breakdown Structure)」、プロジェクトで見つかった課題を管理共有するための「課題管理表」が3種の神器ともいうべきツールだった。しかし、短期間で遂行する価値創造型のプロジェクトでは、従来のやり方はスピードや自在性に欠ける。

 今回は線表やWBSに依存しない自在なプロジェクトマネジメントの例を2つ見てみよう。

「線表」がない「マイクロ・グローバル」なプロジェクト

 まず紹介するのは2018年12月15日に日本科学未来館で開催した第49回情報化研究会でageet 代表取締役 岡崎昌人氏に講演していただいた内容だ。

 ageetはソフトフォン専業の会社で、スマートフォンやゲートウェイなどさまざまなデバイスにIP電話機能を持たせることを得意としており、NTT東西やNECなどと幅広い仕事をしている。10人余りの社員のほとんどがソフトウェア技術者であり、営業マンがいないこと、社員の過半数が外国人だという特徴がある。

 ageetの業務の流れは図1のようになっている。ここで使われているコラボレーションツールは以下の通りだ。

  • AGEphone ageetのソフトフォン。スマホ、PCなどで利用でき、世界のどこにいても内線電話や電話会議ができる。外線への発信も可能だ
  • Slack チャネルと呼ばれるテーマ別のチャットルームでプロジェクトメンバーがあたかも対面しているように会話したり、さまざまな情報を共有したりできる。botを使った作業の自動化を組み込むこともできるビジネスチャット
  • Zoom 連載第6回で紹介したクラウド型テレビ会議サービス。PCやスマホで簡単に利用でき、高音質、高画質なテレビ会議ができる。1対1の会議は無償で時間無制限に利用できる
  • Trello トヨタのカンバン方式を参考に作られたタスク管理ツール。掲示板にタスクが付箋のように表示され、タスクをドラッグ&ドロップすることで担当者への割り当てやタスクの進捗(しんちょく)を表す(関連記事
  • Jira バグトラッキングや課題管理に用いられるタスク管理ツール

図1 ageetの業務フロー

 営業マンがいないので、プロジェクトは電話の問い合わせから始まる。案件情報の共有と担当窓口が決まると依頼元と電話会議か、ビデオ会議を行う。提案や見積もりを経て仕事を受注すると、開発チームを結成。その後、タスクの細分化と担当者へのアサインをする。

 図1の中央上にある赤丸で示したSlackの部分の画面例を図2に示す。


図2 Slackの画面例

 タスクはJiraのチケット管理システムで可視化し、消化する。依頼元からのメールや電話での問い合わせや状況確認を受け、必要なものはタスクにフィードバックする。図1の左下にある4つのボックスのサイクル(Jira、AGEphone、Jira、Slack)でタスクを全て消化できるまで回すと、ソフトウェアが完成し、納品となる。

 ageetのプロジェクトのメンバーは開発5人、試験2人で、本社のある京都の他、東京、スイス、ハワイなどに分散している。開発期間は4〜5カ月程度である。

 線表やWBSは作っておらず、納期までにタスクを消化するというシンプルで柔軟なプロジェクトマネジメントがなされている。規模は小さいがコラボレーションツールを駆使してグローバルな人材を活用し、高効率な開発を行う「マイクロ・グローバル」なプロジェクトだ。図3は代表取締役の岡崎昌人氏とシニアエンジニアのフレッシェル・マルクス氏(日本在住のドイツ人)がスイス在住でAGEphoneのAndroidアプリを担当するマーティアス氏を訪問した時の写真である。


図3 スイスの開発拠点の様子 右上の人物は、左からマーティアス氏、岡崎氏、マルクス氏
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