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羽ばたけ!ネットワークエンジニア(18):

「ローカル5G」は企業のニーズに合った5Gなのか? (1/2)

大手携帯通信事業者によって全国で展開される「5G」。これに対して地域のニーズや産業分野の個別ニーズに応じて、さまざまな主体が構築する5G通信システムを「ローカル5G」という。だが、企業にとってはローカル5Gより「5Gインドアソリューション」の方が有用ではないだろうか。その理由を解説する。

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 「ローカル5G」が話題になっている。先日、説明会に出席する機会があったのだが、概念や想定されるユースケースの話ばかりで、一番知りたいことについての説明がない。そこで最後に質問を投げ掛けた。「なぜローカル5Gでなければいけないのですか? 5Gの電波さえ届いていれば、工場の中だろうとオフィスだろうとキャリアの5Gでよいではないですか? わざわざ免許を取り、設備投資をしてまでローカル5Gを使うメリットはあるのですか?」

 この質問に対してすっきりした回答はもらえなかった。

5Gとは「異なる」ローカル5G

 5Gはもはや新しい話題ではない。図1に挙げた「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」という5Gの特徴を何度も目にした読者も多いだろう。ここにもう一つ加えるなら「高信頼性」が挙がる。これは無線LANの不安定さに悩まされている企業ネットワーク担当者にとって、5Gの一番の魅力かもしれない。


図1 5Gの特徴(出典:総務省、2019年6月3日 情報通信審議会 情報通信技術分科会 新世代モバイル情報システム委員会 委員会報告(案))

 2020年オリンピック・パラリンピック東京大会までに、政府は5Gの商用化を目指しており、2019年4月には5Gで使用する周波数がNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社に割り当てられた。

 5Gで使う周波数帯は3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯の3種類である。電波特性が似ている3.7GHz帯と4.5GHz帯には合わせて100MHz幅を6枠、28GHz帯には400MHz幅が4枠設定されている。NTTドコモには3.7GHz枠1つと4.5GHz枠1つ、28GHz枠1つが割り当てられた。KDDIは3.7GHz帯2枠と28GHz帯1枠、ソフトバンクと楽天モバイルにはそれぞれ3.7GHz帯1枠と28GHz帯1枠が割り当てられた。

 4社が5Gを全国サービスとして展開するのに対し、地域や産業分野の個別ニーズに応じてさまざまな主体が独自に構築する5Gを「ローカル5G」と呼び、総務省が制度化を進めている。その用途は図2のように低遅延性を生かした建設機械のリモート制御や工場でのロボット制御、低遅延と大容量を生かした遠隔診療など多岐にわたっている。

 ローカル5Gで使う周波数帯は4社の枠とは別に4.6〜4.8GHz、28.2〜29.1GHzが想定されている。中でも28.2〜28.3GHzの100MHz幅が先行しており、2019年内の制度化が検討されている。


図2 ローカル5Gの用途(出典:総務省、2019年6月3日 情報通信審議会 情報通信技術分科会 新世代モバイル情報システム委員会 委員会報告(案))

ローカル5Gに残る疑問はコスト

 5Gとローカル5Gを概観したところで冒頭の疑問に戻ろう。「5Gの電波さえ届いていれば、工場の中だろうとオフィスだろうとキャリアの5Gでよいではないですか? わざわざ免許を取り、設備投資をしてまでローカル5Gを使うメリットはあるのですか?」

 ローカル5Gの機器は無線LAN機器より高価になるといわれている。電波も無線LANのようにタダではない。電波利用料がかかるのだ。2019年5月に交付された改正電波法では28GHz帯の基地局は年間2600円/台、端末は年間370円/台の利用料がかかる。利用料を支払うため、ローカル5Gの運営主体はこれらの設備数を管理しなければならない。

 ローカル5Gで使える端末、例えば今後登場するスマートフォンやPCは周波数帯の違うキャリア5Gでも使えるのだろうか、という疑問も残る。

 無線局免許を取り、高い設備投資を決断し、電波利用料の支払いを含む運用を自社でこなす。これほど負担の大きいことをしなくても5Gの電波が届き、その特徴が生かせるのならキャリアの5Gをオフィスビル内や工場内で使えるようにする「インドアソリューション」の方が望ましいのではないか。

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