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Dell’Oro Groupのアナリストが分かりやすく解説:

5Gサービスはなぜ、これほど進展が遅いのか (1/2)

2020年中には、主要モバイル通信事業者による5G対応が本格化する。だが、これは長い移行プロセスの始まりに過ぎない――。調査会社Dell’Oro Groupのアナリストが、5Gサービス進展の見通しや、Wi-Fi 6との関係について分かりやすく説明した。

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 2020年中には、主要モバイル通信事業者による5G対応が本格化する。だが、これは長い移行プロセスの始まりに過ぎない――。通信業界に強い調査会社Dell’Oro Groupのコアインダストリーアナリストであるデイブ・ボラン氏は、米シリコンバレーで開催された「NetEvents Global IT Summit」で、5Gサービス進展の見通しや、Wi-Fi 6との関係について分かりやすく説明した。これを以下に要約してお届けする。

米国事業者の5Gサービス、現状は非常に限定的


Dell’Oro Groupのコアインダストリーアナリスト、デイブ・ボラン氏

 米国のサービス事業者による商用5Gサービスが登場してから1年近くが経過したが、現状は非常に限定的と言わざるを得ない。

AT&T

 AT&Tは、2018年12月に企業向けの5Gサービスを、米国12都市で提供開始した。これはWi-Fiホットスポットから5Gネットワークにアクセスするというものだった。その後、ビジネスユーザー向けのスマートフォンを提供開始した。現時点で、同社は20都市およびダラスのAT&Tスタジアムで、28GHzおよび39GHzのミリ波帯を使ったサービスを展開し始めている。同社は、2020年前半までに、全国をカバーすると約束している。

Sprint/T Mobile

 スプリントは、2019年5月に4つの都市で5Gサービスを提供開始した。2019年10月時点では、9都市で2.6GHz帯によるサービスを提供している。一方T-Mobileは2019年6月に6都市でミリ波帯によるサービスを開始したが、2019年10月時点でもそれ以上に拡大してはいない。2社は合併を目指しているが、これが成立するかどうかは予断を許さない。

Verizon

 Verizonは2018年10月、5Gの固定無線アクセス(FWA)サービスを4都市で提供開始した。当時は「5Gを提供開始」と言っていたが、3GPPではなく独自仕様だった。一方2019年4月には、ミリ波帯を使い、2都市で5Gモバイルを提供開始した。現在までに、13都市と13のNFLスタジアムをカバーしている。その後同社は、2019年末までに30都市へ拡張すると発表した。


Ooklaによる米国の5G Map(2019年10月時点)。商用サービスの展開が、まだ非常に限定的であることが分かる

 結局、Ooklaが公開している「5G Map」を見ても、米国内で現在、商用サービスが提供されているのは20都市程度に過ぎない。これは以前、Verizonが4G/LTEを立ち上げた際、一挙に38都市と全ての主要空港をカバーしたのに比べ、勢いがかなり弱いと言わざるを得ない。また、現在の(米国での)サービスは、全て「5Gノンスタンドアロン」と呼ばれるモードに留まっている。

 さらに、サービス展開中の都市であっても、実際に5Gサービスを受けられる場所は非常に限られている。

 例えばAT&Tは、携帯端末上で「5G」という表示を行っている。このためユーザーは、既に5Gが使えるようになっていると誤解するかもしれない。これは、同社が「5GE」と呼んでいるもので、実際には4Gのサービスだ。5Gの電波をつかもうと思っても、どこに行けばいいのか分からない。Sprintは9都市で展開しているというが、1都市に1基地局しかないかもしれない。

5Gノンスタンドアロンから5Gスタンドアロンへの移行

 上述の「5Gノンスタンドアロン」は、LTEネットワークに依存するモード。5G基地局はLTE基地局と連携し、通信端末はLTE基地局を通じて制御信号のやり取りを行う。ユーザーデータについては(利用可能な場合)5Gの基地局を通してやり取りする。

 これに対し、「5Gスタンドアロン」モードはLTEと完全に独立した5Gの運用を行うモード。5Gコアを配備し、制御信号、ユーザーデータの双方を、5G基地局および5Gネットワークで処理する。

 米国のモバイルキャリアは全て、2020年に5Gスタンドアロンモードへの投資を進めると表明している。5Gでは、特に高速通信を実現できるミリ波の場合、電波の到達範囲が非常に狭い。このため多数の基地局を設置しないと、カバー率を高めることができない。だが、5Gノンスタンドアロンでは、単一のLTE基地局に単一の5G基地局しかひも付けられないという制限がある。このため、5Gサービスの今後の展開では、5Gコアを投入し、5Gスタンドアロンの基地局を増やしていく必要がある。

 5Gスタンドアロンサービスは、おそらく後述の対応端末が出荷開始された後の、2020年中ごろに提供され始めるだろう。

「ダイナミックスペクトラムシェアリング」による4Gインフラの活用

 5Gサービス拡大に向けたもう1つの取り組みとしては、「ダイナミックスペクトラムシェアリング(DSS)」が挙げられる。これは、4Gと5Gで周波数帯を共有し、4G端末と5G端末に対して動的に割り当てるという技術。これによって既存の4Gインフラを活用し、5Gユーザーのニーズにも対応できることになる。つまり、「5Gサービス」のカバー率を高められる効果がある。

 ただし、DSSで4Gインフラを活用する場合、4Gの周波数帯域しか使えないことに変わりはなく、「5Gサービス」とは呼べてもユーザーエクスペリエンスには制限がつく。

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