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不自然なことの裏には、下手くそなシナリオライターがいるのよ――三文オペラコンサルは見た! 情シスの逆襲(9)(1/3 ページ)

「ラ・マルシェ」から相談を受けた美咲と白瀬は、同社に1億6000万円を請求した「ルッツ・コミュニケーションズ」を訪問した。そこで彼らが目にした、数々の不審な点とは……。

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コンサルは見た!

連載「コンサルは見た!」は、仮想ストーリーを通じて実際にあった事件・事故のポイントを分かりやすく説く『システムを「外注」するときに読む本』(細川義洋著、ダイヤモンド社)の筆者が@IT用に書き下ろした、Web限定オリジナルストーリーです。



登場人物

ラ・マルシェ

都内に十数店舗を展開する、創業50年の高級スーパーマーケットチェーン

kozuka

小塚大地

取締役 兼 営業部部長。オンラインショップ「スマホ・デ・マルシェ」を発案し、EUCで開発を進めていたが、ベンダー「ルッツ・コミュニケーションズ」から突然、作業の中止とそれまでの開発費用1億6000万円を請求する内容証明を送り付けられ、困り果てている

hanyuu

羽生孝志

情報システム部部長。小塚の同期。「AI在庫管理システム」の発案者。スマホ・デ・マルシェの開発では、ベンダー探しと契約だけを任される(押し付けられる)という損な役回り

A&Dコンサルティング

大手コンサルティングファーム

misaki

江里口美咲

ITコンサルタント。凄腕系。小塚の相談に乗っている。一連の流れに不自然なものを感じて、ルッツを訪問。疑惑は確信に変わった

sirase

白瀬智裕

「A&Dコンサルティング」に化粧品メーカーから出向中の新米コンサルタント。情に厚いタイプで、窮地に陥った小塚のことを心配している

ルッツ・コミュニケーションズ

大連に本社を置く、社員数30人ほどのITベンダー

honda

本田修三

日本支社長。「ラ・マルシェ」からオンラインショップの開発を請け負っていたが、開発着手から2カ月たっても契約を締結できないので、強気の手段に打って出た。法律や裁判事例に詳しい

前回までのあらすじ

老舗スーパーマーケットチェーン「ラ・マルシェ」が、IT化施策の目玉として開発を進めているオンラインショップ「スマホ・デ・マルシェ」。だが、2カ月も契約前作業をさせてしまったため、ベンダーの「ルッツ・コミュニケーションズ」から開発の中止と1億6000万円の支払いを求められてしまった。

スマホ・デ・マルシェ担当の小塚から相談を受けたITコンサルタントの江里口美咲と白瀬がルッツを訪問し、関係の修復を促すが、日本支社長の本田は法律に詳しく、美咲たちを論破してしまう。

不自然なことの裏には

 日本橋の「ルッツ・コミュニケーションズ」を出た美咲と白瀬は、オフィスのある丸の内まで歩いて帰ることにした。美咲は机の前に座っているよりも歩いていた方が頭が回るタイプであることを、白瀬は知っていた。

sirase

 「前門の虎、後門のオオカミって感じだな。どっちにしたって金を払うことになりそうだね」

 白瀬はムッとした表情で話した。

 「そうかもしれないわね」

 そう言いながらも、美咲の表情に落胆の色が見られないことに、白瀬は気付いた。

 「何か考えでもあるのか?」

 「これといってあるわけじゃないけど……でも」

 「でも?」

misaki

 「あなた、気付かなかった?」

 「何に?」

 「ルッツよ。不自然なことがたくさんあったじゃない。まずはオフィスに人がいなかった

 「そういや、支社長1人だけだったね」

 「小さい会社だから、何か案件があれば出払っちゃうのかもしれないけれど、マルシェの案件をストップしてからまだ数週間よ。その期間で全員が出払うほどの案件がポンとやってくるなんて、そんな都合の良いことがあるのかしら? 一体、いつ引き合いをもらって、いつ提案して、いつ受注してプロジェクト開始までこぎつけたのかしらね」

 白瀬が目を丸くして、美咲の顔を見つめた。

 「もしかして……ルッツは最初からマルシェの開発を放り出すつもりだったってことか?」

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