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そろそろ銀行に帰ったらどうかね?――二代目はテクニシャンコンサルは見た! 情シスの逆襲(10)(1/3 ページ)

「スマホ・デ・マルシェ」開発頓挫の裏には、質の悪いシナリオがありそうだ。美咲と白瀬は調査のために「アクセル乳業」を訪ねる。同じころ、ラ・マルシェの社長のもとに、招かれざる客が訪れていた。

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コンサルは見た!

連載「コンサルは見た!」は、仮想ストーリーを通じて実際にあった事件・事故のポイントを分かりやすく説く『システムを「外注」するときに読む本』(細川義洋著、ダイヤモンド社)の筆者が@IT用に書き下ろした、Web限定オリジナルストーリーです。



登場人物

ラ・マルシェ

都内に十数店舗を展開する、創業50年の高級スーパーマーケットチェーン

takahashi

高橋雄介

代表取締役社長。ラ・マルシェの経営不振を立て直すために株主たちがメインバンクから招いた。さまざまな施策を行っているが、まだ目に見える効果は出せていない


suzuki

鈴木浩美

創業社長の息子、二代目社長


A&Dコンサルティング

大手コンサルティングファーム

misaki

江里口美咲

ITコンサルタント。凄腕系。ラ・マルシェの小塚の相談を受けてルッツを訪問し、一連の出来事の裏で糸を引く「シナリオライター」の存在を確信する

sirase

白瀬智裕

「A&Dコンサルティング」に化粧品メーカーから出向中の新米コンサルタント。情に厚いタイプで、窮地に陥った小塚のことを心配している

アクセル乳業

中堅の乳製品メーカー。ラ・マルシェに高級チーズを卸している

arakawa

荒川茂之

基幹システム見直しプロジェクトの担当者。ラ・マルシェから増産を依頼されているが、同社のクーデターの話を聞いたこともあり、迷っている


前回までのあらすじ

老舗スーパーマーケットチェーン「ラ・マルシェ」が、IT化施策の目玉として開発を進めているオンラインショップ「スマホ・デ・マルシェ」。だが、2カ月も契約前作業をさせてしまったため、ベンダーの「ルッツ・コミュニケーションズ」から開発の中止と1億6000万円の支払いを求められてしまった。

ラ・マルシェの小塚から相談を受けたITコンサルタントの江里口美咲と白瀬がルッツを訪問するが、日本支社長の本田は法律や判例をたてに反論する。だが、話の細部やルッツの様子には不自然なところが多く、美咲たちは、裏で糸を引く者の存在を確信する。

黒幕は誰だ!

 美咲と白瀬は、「アクセル乳業」の荒川を訪ねていた。

arakawa

 「ラ・マルシェ向けの増産はやっぱりやめた方がいいって、どういうことですか?」

 困惑する荒川に応えるように、美咲は説明した。

 「ラ・マルシェの発注増は、オンラインショップ開設による拡販を見込んでのことです。その開発が頓挫してしまって。ですから、もうしばらくは様子をご覧になった方がいいと思うんです」

 「そうですか。いやウチもちょっと迷ってましてね。貴重な情報をどうも」

 うなずく荒川に、美咲が尋ねた。

misaki

 「ところで以前、ラ・マルシェには高橋社長の解任を望む人がいるとおっしゃってましたね」

 美咲の問いに荒川がうなずいた。

 「そんな話を聞いたことがあります」

 「具体的には誰が?」

 白瀬が尋ねると、荒川は困ったような顔をした。

 「いや、大切なお取引先ですので、あまりいい加減なことは……」

 荒川は口ごもったが、美咲はひるまなかった。

 「大丈夫です。裏はこちらで取りますから。ヒントだけでも教えていただけませんか?」

 「ヒントって……私だって知りませんよ。ただ……」

 「ただ?」

 「業界のウワサでは、ラ・マルシェを昔の姿に……つまり、セレブたちが店舗に足を運んで、高い買い物をしてもらう……そんな、ちょっと懐古趣味な夢を持ってる人が、中にも外にもいるって……」

 「外にも?」

 白瀬は首を傾げたが、美咲は口元を上げた。

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