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新会社グレープ・ワンの社長に聞いた:

ローカル5Gでケーブルテレビ業界に勝算はあるのか、携帯会社の対抗軸になるわけではない理由 (1/2)

ケーブルテレビ業界の無線活用に対する期待感から生まれたローカル5Gの新会社グレープ・ワンは、どのように事業を設計しているのか。同社は必ずしも、ナショナルモバイルキャリアの対抗軸となるわけではないという。この動きは基地局シェアリングにもつながる可能性がある。

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 総務省は2019年12月24日、ローカル5G免許申請の受付を開始した。2020年2月中旬時点では13の企業や自治体が申請済みだが、このうち6社はケーブルテレビ事業者だ。ケーブルテレビ業界はなぜ、これほどローカル5Gに積極的なのだろうか。また、ケーブルテレビと無線事業といえば、成功したとはいえない地域BWA(Broadband Wireless Access)の取り組みがある。その二の舞にならないのだろうか。

 ケーブルテレビ事業者の無線コアネットワーク運営を賄う企業として、ローカル5G免許申請受付開始と同日に事業立ち上げを発表したグレープ・ワンの社長、小竹完治氏は、「地域BWAの時よりも無線活用に対する業界全体の意識が強い」とする。

「業界としての生き残りがかかっている」

 グレープ・ワンは住友商事が過半を出資し、インターネットイニシアティブ(IIJ)、ケーブルテレビ5社、地域ワイヤレスジャパンと共に設立した企業。社長の小竹氏も、住友商事のメディア事業本部 ケーブルテレビ事業部長だ。住友商事は、KDDIとの共同出資によるジュピターテレコムを通じ、長年ケーブルテレビ事業を推進している。

 とすると、グレープ・ワンは業界の一部による取り組みに過ぎないのか。小竹氏は日本ケーブルテレビ連盟が推進する無線事業において重要な役割を同社が担っていると話す。グレープ・ワン設立のプレスリリースにも、「2020年3月以降、一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟と連携し、ケーブルテレビ事業者向けの各種サービス提供を開始します」とある。

 また、グレープ・ワンという社名は、「ケーブルテレビ事業者をはじめとした地域事業者が、地域無線プラットフォームを通じて1つにまとまるイメージから付けた」という。


グレープ・ワンはケーブルテレビ業界を中心に、業界外とも協力して無線コアネットワーク運営事業を進める

 背景には業界全体の危機感があると、小竹氏は説明する。

 ケーブルテレビ各社は、地域密着型の「トリプルプレイ(放送、通信、電話)」事業を展開してきた。「だが、5Gでいよいよ高精細なテレビ放送が快適に視聴できる速度が実現できるようになる」(小竹氏)。併せて動画コンテンツおよびテレビ放送のネット配信がさらに進めば、ケーブルテレビの存在価値が根本的に覆される可能性が高まる。

 MNO(移動体通信事業者)による5G通信サービスの提供開始当初は、カバーできるエリア/地点が限られるし、日常的な高精細テレビ視聴に必要となるデータ通信量への課金がリーズナブルな範囲に収まるとは考えられない。しかし、ケーブルテレビ業界は、この2つが実現される時期がいずれ来ることを想定した対策を講じる必要がある。

ケーブルテレビの「ラストワンマイル」を5Gに置き換え

 グレープ・ワンは、ケーブルテレビ事業者の無線事業における「黒子」として、5Gコアネットワークの運営、基地局の調達・運用・監視、端末の調達・提供などを担う。

 同社ではケーブルテレビ事業者が、ケーブルネットワークの契約者宅への引き込み接続を5Gに置き換える支援をしていくという。

 「ケーブルテレビでは、契約が結ばれると、電柱に設置した分岐器から契約者宅にケーブルを引き込み、解約されればケーブルを撤去している。関連コストは、業界全体で年間数百億円に達する」(小竹氏)

 これを5G無線に置き換え、加入や解約に伴うケーブルテレビ事業者の作業を減らすことで、コスト削減を目指すという。開通時の受信確認と調整などの作業は残るかもしれないが、特に解約時は宅内工事、ケーブル撤去工事が共に不要になるからだ。

 また、現在のケーブル引き込みによる接続手法では、マンションなどの集合住宅の場合、建物全体としての対応が必要になる。個人宅では壁に穴を開けなければならないケースがある。宅内引き込みの5G化により、こうした理由で獲得できていない契約が得やすくなるとする。

 ローカル5Gでは、基本的に土地所有者が自らの利用のために免許を取得し、利用する(自己土地利用)。一方、他者所有の土地に対してサービスを提供することも認められているが(他社土地利用)、この場合、不特定多数を対象としたモバイル接続ではなく、FWA(Fixed Wireless Access)による固定通信での利用を図る必要がある。宅内引き込みの5G化は、これに該当する。ただし、個々のサービス対象に対して、基地局を1対1で割り当てる必要はない。従ってケーブルテレビ事業者は、電柱などに設置した自社の基地局から、特定多数の世帯に対してサービスを提供することになるという。

 この事業の採算性(あるいはコスト削減効果)は当然、各基地局の世帯集約率、および基地局設備の価格および設置・運営費用に左右されることになる。そこで、次に小竹氏は基地局シェアリング事業の可能性を紹介する。

携帯事業者も対象とした基地局シェアリングの可能性

 5Gは高速、低遅延、多数同時接続のメリットをもたらす一方で、周波数特性上、各基地局のカバーエリアは従来に比べ大幅に狭い(ミリ波の場合、LTE基地局と同等サイズの装置では、セル半径が最大100m程度との想定もある)。このためMNOにとって、特に人口の少ない地域をきめ細かくカバーするのは難しい。都市部であっても、想定ニーズとの兼ね合いで、チャンネル幅とセル半径を考慮し、メリハリの効いた投資をする必要がある。

 ここに、モバイル通信事業者がカバーしきれない場所/ニーズを補完できる、ローカル5Gの価値がある。また同時に、地域密着型の通信インフラを運営してきたケーブルテレビ事業者の役割も大きいと、小竹氏は話す。具体的には、エリア内に5G基地局を展開して宅内引き込みに使う一方、アンテナを共用としてMNOなどに貸し出し、シェアリングすることが考えられる。

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