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Gartner Insights Pickup(152):

Gartnerの「2020年以降に向けた重要な戦略的展望」に見る「人、テクノロジー、ビジネス」の今後

AIから仮想通貨、オンラインショッピングまで、技術はわれわれの生活やビジネスの在り方、そして人間とその能力に対する捉え方を変えつつある。CIO(最高情報責任者)やITリーダーは、この変化する世界への自社の対応をサポートする必要がある。

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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 日本のあるレストランは人工知能(AI)ロボットのテクノロジーを利用して、身体にまひのある従業員がウェイターロボットを遠隔操作して接客できる店舗を開発している。JPMorgan Chase、Microsoft、Fordは、「ニューロダイバーシティ(神経多様性)」の考え方に基づき、多様な求職者のニーズに配慮した仮想キャリアフェア(就職説明会)を開催している。Enterprise Rent-A-Carは、視覚障害のある従業員向けに点字読み取り技術を予約システムに統合した。

 こうしたAI利用による就業機会の拡大は、Gartnerの2020年以降に向けた重要な戦略的展望のトップ10の1つだ。この展望は、「人間とは何か」という定義をテクノロジーがどのように変えていくかの検討に基づいている。ITリーダーは、変化する環境に適応する準備が必要だ。

 「デジタル時代の進展とともに、人間とは何かという固定観念への挑戦が始まっている」と、Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデント 兼 ガートナー フェローを務めるダリル・プラマー(Daryl Plummer)氏は、2019年10月に米国で開催されたGartner IT Symposium/Xpoで語った。

 「テクノロジーとその応用は、われわれが人間性と呼ぶもののあらゆる側面と、人間の生存条件に影響を与えようとしている」(プラマー氏)

「BYOD」が「BYOE」に

2023年末までにIT部門の30%は、従業員のヒューマンオーグメンテーション(VRやAR、AIなどのテクノロジーの力で人間の能力を人間単独のときよりも強化すること)に対応するために、「個人の拡張能力の業務利用」(BYOE:Bring Your Own Enhancement)によってBYODポリシーを拡大する。

 ヒューマンオーグメンテーション技術の普及が進む中、IT部門では、このテクノロジーを管理下に置き、利用を抑制したいという声が強まるかもしれない。だが、BYOEに対するユーザーの期待の高まりを、業務に生かせる可能性もある。

 現在、自動車や鉱山のような業種はウェアラブル技術を使って現場の安全性を高めており、旅行やヘルスケアのような業種は、このテクノロジーを利用して生産性を高めている。こうした身体的拡張技術の進化に伴い、人々はこうした拡張が生活と仕事にさらに役立つことを期待するようになる。

 企業は、BYOEによって従業員がそうした拡張を業務に利用できるようにすることで、業務上のメリットを得る。その一方で、そうした拡張の利用を管理し、セキュリティを確保しなければならない。こうしたメリットとセキュリティを両立させることが必要になる。

AIが障害のある人の就業機会を拡大

2023年までに、障害のある従業員を雇用する機会はAIや最新テクノロジーによって3倍に増加し、就業への障壁が低くなる。

 米国では、障害のある人の就業率は30%にとどまる。これは、利用されていない巨大な人材プールの存在を示している。現在、採用担当マネジャーが労働市場における人材不足と、それが自社の将来に与える影響について警告している状況であるにもかかわらずだ。

 障害のある人材の活用を進めるには、文化的な変革(スタンドアップミーティング〔立ったまま行うミーティング〕のような慣習の排除など)と、技術的な変革(レガシーシステムのアクセシビリティーの向上など)の両方が必要になる。障害のある人を積極的に採用している企業は、そうでない企業よりも定着率が89%、従業員の生産性が72%、収益率が29%高いという調査結果がある。また、こうした人材活用によるダイバーシティ(多様性)の向上は、視点の多角化につながる。障害のある従業員が商品開発に新たな視点をもたらすことで、新しい顧客層にアピールする商品が生まれる可能性が高くなる。

過度なオンラインショッピングが依存症と認定される

2024年までに、数百万人がデジタルコマースを乱用し、金銭的なストレスに直面することから、世界保健機関(WHO)は過剰なオンラインショッピングを依存症と認定する。

 利用可能な消費者データの増大に伴い、マーケッターは「どの消費者が自社の製品を購入するのか、どの段階で購入するか」を、ピンポイントで想定してターゲティングができるようになっている。テクノロジーの洗練化がさらに進み、マーケッターは「消費者が何を求めるか」「どのように商品価格を設定すべきか」「商品をどこに位置付けるべきか」を、より正確に予測できるようになるだろう。

 だが、その代償もある。こうした高度なマーケティングの効果も相まって、一部の消費者は必要以上に、あるいは使える金額以上に商品を買ってしまう。そうなれば、米国のカジノが“責任あるギャンブル”を推奨、促進しなければならないのと同様に、企業は見込み客に対して浪費を戒める責任を負わなければならなくなるだろう。また、搾取的な、あるいは無責任なビジネス慣行の責任を問う、政府や消費者団体からの圧力が高まるかもしれない。

AIの感情検知がオンライン広告を左右

2024年までに、AIによる感情の識別が、表示されるオンライン広告の半分以上に影響を及ぼす。

 バイオメトリクス(生体情報)センサーの普及拡大や「人工感情知能(AEI:Artificial Emotional Intelligence)」の進化を背景に、企業は消費者の感情を検知し、それを利用して販売を伸ばせるようになる。環境や挙動の指標情報とともに、バイオメトリクスが深いレベルのハイパーパーソナライゼーションを実現する。ブランド企業は「消費者のデータがどのように収集、使用されるか」を消費者に知らせ、透明性を提供しなければならない。

挙動のインターネットが人々とアクションを結び付ける

2023年までに、個人の活動は「挙動のインターネット」を通じてデジタルに追跡され、全世界人口の40%のメリットやサービスの資格に影響を及ぼす。

 「挙動のインターネット(IoB:Internet of Behavior)」が、人々とその行動をデジタルに結び付けるのに使われるようになる。例えば、企業は顔認識や位置情報の追跡、ビッグデータを通じて個人の行動をモニタリングし、その挙動を他のデジタルアクション(乗車券の購入など)と結び付けるようになる。

 さらにIoBは、一連の特定の行動を促したり、抑止したりするのに使われるようになる。例えば、Allstateの「Drivewise」やState Farmの「HiRoad」といった米国の保険会社のプログラムは、ドライバーの運転状況を追跡し、それに応じて保険料を高く設定したり(高速走行や安全ではない運転をする傾向がある場合)、あるいは低く設定したりする(適度な速度で安全運転をしている場合)。

 だが、この技術の適用範囲を拡張し、特定の行動に対する報奨または懲罰として、社会サービス(学校や住宅支援など)へのアクセスに差をつけることには、倫理的な懸念がある。

従業員がビジネスアプリケーションを調整

2023年までにプロフェッショナルな従業員の40%が、音楽ストリーミングのエクスペリエンスのように、ビジネスアプリケーションのエクスペリエンスや機能を調整する。

 これまで企業は従業員に、一律の最大公約数的なアプリケーションを提供してきた。業務内容やニーズに関係なく、各従業員が同じビジネスアプリケーションを使って働いてきた。従業員は業務をアプリケーションに合わせることになり、ときにはそのために業務に支障が生じることもあった。

 ビジネス部門やIT統括部門は今後、機能をビルディングブロックの形で入手し、従業員が自分の業務やニーズに合わせて、ビルディングブロックを組み合わせてアプリケーションをカスタマイズし、独自のアプリケーション“プレイリスト”を作成できるようになる。

モバイル仮想通貨ユーザーが増加

2025年までに、銀行口座を持たないスマートフォン所有者の50%が、モバイルでアクセス可能な仮想通貨口座を利用する。

 2020年末までに、主要なオンラインマーケットプレースやソーシャルメディアプラットフォームが、仮想通貨による決済への対応を開始する。これを受けて、世界の多くの地域でモバイル対応の仮想通貨口座の利用が広がり、アフリカで最も急速なペースで普及が進む見通しだ。

 こうした仮想通貨口座の利用拡大は電子コマースを促進する。これまで金融市場にアクセスできなかった地域の購入者と販売者に、取引の機会がもたらされるからだ。

ブロックチェーンによるコンテンツ認証が普及

2023年までに世界のニュースやビデオコンテンツの最大30%が、ディープフェイクテクノロジーに対抗するブロックチェーンによって本物であると認証される。

 大昔からフェイク(偽)ニュースは存在するが、ソーシャルメディアbotがこの手の込んだ偽情報の拡散スピードを急激に加速させている。従来型のニュース記事に加えてテクノロジーを駆使し、説得力のある偽の音声や動画が作られている。

 だが、今では企業や政府機関もテクノロジーを活用してフェイクニュースに対抗している。例えば、ブロックチェーン技術を利用してニュースの写真や動画を認証している。このテクノロジーは、コンテンツの不変の記録を作成し、その共有を実現するからだ。この記録は、消費者も見ることができれば理想的だ。

G7諸国でAI設計が自主規制の対象に

2023年までに、G7のうち少なくとも4カ国以上では、AIおよび機械学習の設計者を監督するための自主規制団体が設立される。

 AI技術では、暗黙または明示的なバイアスや、論理のギャップ、アルゴリズムの一般的な複雑さが発生しやすい。AI技術を大規模に運用すると、これらの問題が関連する全ての集団に影響し、AIの目的によっては重大な結果を招く恐れがある。

 AIの規制は難しいが、業界は今後、開発と認定に関する標準化を行うとともに、AIの倫理的利用に向けた専門的な基準を策定する必要がある。

デジタルトランスフォーメーションにかかる期間とコストが想定の2倍に

2021年末までに、従来型の大企業はデジタルトランスフォーメーションの取り組みに対し、平均して想定の2倍の期間とコストをかけることになる。

 従来型の大企業はデジタルトランスフォーメーションに苦労する。テクノロジーのモダナイゼーションの難しさと、オペレーションの相互依存関係を簡素化するコストが大きな負担になるからだ。

 これは俊敏な小規模企業にとっては、いち早くデジタルトランスフォーメーションを実現し、市場で先行者メリットを享受するチャンスになる。

出典:Gartner Top Strategic Predictions for 2020 and Beyond(Smarter with Gartner)

筆者 Kasey Panetta

Brand Content Manager at Gartner


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