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コロナ禍で、ITに対する意識が二分――存続できる企業、できない企業の「明確な差」読者アンケート「コロナ禍における企業のIT戦略」結果速報

@IT編集部では2020年6月4日〜19日にかけて読者アンケート「コロナ禍における企業のIT戦略に関する調査」を実施した。その結果から垣間見えた実態を基に、企業の今後を占う。

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コロナ禍は企業とITに何をもたらしているのか

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミック(世界的大流行)を受け、多くの企業がリモートワーク/シフト勤務を急ぎ導入することとなった。社外向け、社内向けを問わず、ビジネスコミュニケーションはITを介することが前提となり、社会、ビジネスともに新たな様式への変革が求められている。

 ソーシャルディスタンスを保った生活様式は、業種・業態によっては深刻な経済的ダメージをもたらし、国際通貨基金(IMF)の2020年6月24日の発表によると、2020年の世界経済の成長率見通しは−4.9%、日本は−5.8%と、2008年のリーマンショック時とほぼ同水準の落ち込みが予測されている。企業においても投資を絞り込む傾向が見られているのは周知の通りだ。

 だが、半ば強制的にリモートワークを強いられたことは、生産性向上をはじめ、IT活用のメリットを多くの企業が再認識することにもつながった。収束時期の予測が難しいことも手伝い、リモート前提の働き方、ビジネスの在り方は今後定着していくことが予想される。

 こうした中で、ITをどう捉えるのか。テレワーク関連ツールさえ導入すればビジネスを問題なく運用できるわけではない。新たな様式に変革する上では、制度や文化、コミュニケーションの在り方など、IT以外の問題も含めて、ビジネスプロセスを根本から見直すことが求められる。特にエッセンシャルワーカーなくして立ち行かない業種・業態においては、ビジネスモデルそのものを見直す必要性も生じつつある。

 では、実際はどのような状況なのか。@IT編集部では2020年6月4日〜19日にかけて読者アンケート「コロナ禍における企業のIT戦略に関する調査」を実施。(調査方法:@IT Webサイト上の自記式アンケート/調査対象者:@IT読者を中心とするITmedia ID会員/回答数:1218件)。アンケート結果の一部を基に、1000件を超える回答から垣間見えた企業の現状と意識をお伝えする。

「従来の課題」と「ITに対する認識」が露呈

 まず注目したいのは「テレワークの導入状況」と「導入時期」だ。以下のように、「全社的に導入している」「限られた職種や部門で導入している」を合わせると、実に85.9%に及ぶ。だが「導入時期」は「直近3カ月以内」、つまり政府の緊急事態宣言が出された2020年4月6日前後以降に導入したことが分かる。各種メディアで報道されている通り、必要に迫られて急ぎ導入した格好だ。

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図1 「テレワークの導入状況」と「導入時期」(n=1218/1047)《クリックで拡大》

 では導入してどうだったのか。「テレワーク環境整備の課題」に関する設問では、「業務に必要なシステムの全てを使用できない」「ネットワーク遅延」「従業員のITリテラシー」などの課題が目立ち、混乱、困惑が広がっていたことが改めてうかがえる。

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図2 「テレワーク環境整備の課題」(n=1094)。当面の問題に縛られ、「ライセンスコスト」「ガバナンス」に目が向いていない傾向が強い《クリックで拡大》

 だが、致し方ないとはいえ、「セキュリティ」以外、守りの施策に対する関心が低い点は気がかりなところだ。日頃の取材の中では、「コミュニケーション関連ツールを導入するに当たり、急ぎSaaS利用を開始した結果、コストが増大してしまった」「リモートワーク用端末を用意できず、従業員の私物端末を使ってもらった」「VPNの設定を各従業員に任せるしかなかった」といった声も聞かれる。

 IT資産に対する意識やリテラシーに起因する問題はシャドーITを生み、セキュリティはもちろん、コスト、ガバナンス、コンプライアンスに大きな影を落とす。この辺りは、以前から指摘され続けてきた問題が、コロナ禍によって一気に露呈したと捉えることができる。

 BCP(事業継続計画)/BCM(事業継続マネジメント)も後回しにされている傾向が強い。「対策を行った」のは約24%。「行う予定」も含めた約76%は、アンケート回答時点で対策を行っていない。さらに「事業継続のために採用している製品/サービスをいくつでも選択してください」という設問では、コミュニケーション関連ツールがバックアップツールなどよりも目立つ傾向にあった。

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図3 「BCM/BCP(事業継続マネジメント/事業継続計画)の見直しや準備状況」(n=1218)。「対策を行った」のは約24%《クリックで拡大》

 「当面の問題」に対応せざるを得なかったということだろうが、備えは平時に整えておいてこそ意味がある。およそ全てのビジネスをデータとITが支えていながら、事業基盤の脆弱(ぜいじゃく)性を放置してきたという結果も、「ITと事業が分断されている」という現実を裏付けているといえるのではないだろうか。

「ニューノーマル」に対する企業のスタンスは二分

 だが、冒頭で触れたように、新たな様式に対応する上では、制度や文化、人材、コミュニケーションの在り方も含めて、ビジネスプロセス、場合によってはビジネスモデルそのものを見直す必要がある。緊急事態宣言や東京アラートが解除されて以降、通勤ラッシュが復活したが、2020年7月16日現在、感染者は再び拡大し、第二波も予想されている。デジタル化の流れは着実に加速していくはずだ。

 アンケートでは、そうした流れを読み取っているのであろう企業と、そうでない企業で大きく二分することになった。

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