検索
連載

「自社の成果物をOSSとして公開しよう」――何に気を付けるべき?いまさら聞けないOSSの基礎知識(3)

自社の成果物をOSSとして公開する場合、どのようなことに気を付けなければいけないでしょうか? OSS利用の変遷を振り返りつつ解説します。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

ベンダーロックインからの解放、そして企業ブランディングへ――OSS利用の変遷を振り返る

 2000年代初めからオープンソースソフトウェア(OSS)はさまざまな目的で活用されるようになりましたが、企業における最も大きな目的は「コスト削減」や「ベンダーロックインからの解放」でした。もちろん、インターネットでダウンロードすればすぐに利用できるため、導入費用ゼロのOSSはそうした点でも注目されました。当時は開発元の戦略で、稼働するOSやミドルウェアを限定したり、垂直統合型の構成にしたりすることでユーザーをロックインしていた商用ソフトウェアのベンダーが多く存在していたため、そうした制約から逃れたいというユーザー企業の要望にも合致していました。

 2010年代に入ると、コンピュータの性能向上やインターネット環境の普及により、クラウドやビッグデータといったキーワードが広まり始めました。ソフトウェアに求められる機能要件は年々増え、1社だけのソフトウェア開発は現実的ではなくなりました。

 本連載の初回で解説したように、MozillaがWebブラウザの開発にコミュニティーの力を借りてより良いものにしようとしたことが、ITのさまざまな分野で起こるようになったのです。筆者の記憶では、当時盛り上がっていたのが分散処理フレームワークの「Apache Hadoop」やクラウド構築基盤の「OpenStack」でした。

 OpenStack関連のセミナーに登壇するベンダーの担当者は、いかに自社がOpenStackに貢献しているかを競うように講演していました。現在でも多くのOSSは、会社に所属する複数の開発者がインターネットを介して知恵を出し合い、共有しながら開発をしています。そうした状況は、「Stackalytics」を見ることで容易に知ることができます。

 参考までにOpenStackとコンテナオーケストレーションプラットフォームの「Kubernetes」の会社別コミット数を紹介します(2020年9月30日現在)。OpenStackは「independent」という個人開発者の比率が少ないことが分かります。一方でKubernetesは個人開発者の比率が高く、ビジネスとして積極的に取り組んでいるRed Hatのコミット数が多いのも興味深いです。

OpenStackとKubernetesの会社別コミット数比率(2020年9月30日時点)
# OpenStack Kubernetes
1 Red Hat 21.4% Google 40.7%
2 Rackspace 7.8% independent 17.6%
3 Mirantis 6.2% Red Hat 15.8%
4 IBM 5.7% Huawei 3.3%
5 independent 5.6% ZTE Corporation 2.2%
6 Canonical 4.7% VMware 1.9%
7 HP 4.4% Microsoft 1.8%
8 NEC 2.7% IBM 1.3%
9 SUSE 2.6% FathomDB 1.1%
10 Others 39.8% Others 14.3%

 OSSの活用は企業のコスト削減やベンダーロックインからの解放が目的でしたが、現在ではOSS活用はもちろんOSSそのものに貢献する個人、企業も現れているというわけです。こうした潮流の中で、社内の技術や成果物をOSSとして公開するケースも複数出てきています。

「成果物をOSSで公開することにした」場合、注意すべきことは?

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る