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アプリケーションチームに今必要な創造的破壊とはGartner Insights Pickup(197)

アプリケーションリーダーは、今後のコンポーザブルビジネス時代にチームが成功するために、組織の構造やガバナンス、文化、リーダーシップスタイルを変える必要がある。

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ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 チャールズ・ダーウィンの言葉に次のようなものがある。「生き残るのは、最も強い種でも最も賢い種でもなく、変化に最も適応できる種だ」(※編集部注:ダーウィンが実際に述べた言葉ではないともされている)

 企業がソフトウェアを構築、利用する方法が根本的に変わろうとしている。これらの将来の在り方は、いわゆる「コンポーザブルビジネス(※1)」の中で、組み立てられ、再構築され、容易に拡張され得るアプリケーションがベースになる。

※1 編集部注:Gartnerはコンポーザブルビジネスを、レジリエンス(回復力)の改善に向けてアーキテクチャを設計し、破壊的変化を標準として受け入れるビジネスと定義しており、次のような見解を示している。「企業は今後のデジタルビジネス時代において、コンポーザブルビジネスの3つのビルディングブロック(『創造的な思考が決して失われないようにするコンポーザブルシンキング』『柔軟性とレジリエンスを確保するコンポーザブルビジネスアーキテクチャ』『現在および未来のためのツールであるコンポーザブルテクノロジー』)を使用し、コンポーザビリティの4つの必須原則(『検出によるスピードアップ』『モジュール化によるアジリティの強化』『オーケストレーションによるリーダーシップの向上』『自律によるレジリエンスの実現』)を適用して、コンポーザブルビジネスを進める必要がある」

 Gartnerのアナリストで、ディスティングイッシュト バイスプレジデントのマシュー・ホトル(Matthew Hotle)氏は、「アプリケーションはコンポーザブルビジネスの中核を担う。だが、現状では、アプリケーションチームはそのための態勢が整っていない。多くの場合、アプリケーションチームは組織の中央に置かれ、階層型の組織構造となっているため、動きが遅くサポート対象のビジネス部門とも距離がある」と指摘する。

 アプリケーションリーダーは、今後のコンポーザブルビジネスに向けて組織を改革し、こうした連携不足を解消しなければならない。以下では、アプリケーションリーダーがアダプティブアプローチによって、ガバナンス、予算配分、文化変革、組織設計にどのように取り組めばよいかを解説する。

アプリケーションユーザーの近くで開発、提供

 多くの企業は、アプリケーションの開発、提供を分散することに消極的だ。ガバナンスやコントロールが失われるのを恐れるからだ。だが、アプリケーションの開発と提供を分散すれば、管理志向の組織内の境界を再定義し、コンポーザブルビジネスへと進むのに役立つ。

 アプリケーションリーダーは、CIO(最高情報責任者)やビジネス部門リーダーと積極的に協力し、最適な場所でのアプリケーション開発および提供を促進すべきだ。

部門横断チームでソフトウェアを提供

 コンポーザブルビジネスに移行し始めた企業では、ソフトウェアの提供は“アジャイル”または“フュージョン”チームによって行われることが多い。こうしたチームは、技術とビジネスの両方のスキルを併せ持った人員が配置されており、さまざまな経歴や職歴のメンバーをそろえることで恩恵を受ける。

 Gartnerの調査では、これらのチームが他のチームと比べて、20%迅速にビジネス成果を達成することを明らかにしている。こうした部門横断型アプローチは、柔軟で適応力の高い組織構造を促進する。

組織構造をフラット化

 コンポーザブルビジネスへのシフトは、幾つかの管理階層を減らす機会になる。チームにこれまでより高い自律性が与えられるからだ。既にこのシフトを開始した先進的な企業は、正式な報告系統だけでなく、柔軟で流動的な管理構造も維持するように編成されたチームを擁している。

 だが、多くの企業では、確立された階層構造を全面的に見直す準備はできていない。こうした企業は自己管理に抵抗があり、事あるごとに、チームの活動に対して1人の人物が責任を負うことを求めてしまう。

 こうした企業のアプリケーションリーダーは、チームの自律性を高めることに着手しなければならない。チームの個々人を、自律性を発揮するための適切なスキルセットと文化の両方の習得に導き、上層部の信頼を獲得する必要がある。

適応型ガバナンスフレームワークを確立

 分散されたアプリケーション機能は、エコシステムとして扱う必要がある。ガバナンスは、さまざまなテーマについて誰が決定権を持つかを定義することで、このエコシステム内の有機的なつながりを支える。これらのテーマには、「誰がどのアプリケーションに責任を持つか」「新しいアプリケーションを開発する、購入する、または既存コンポーネントから組み立てる権利を誰が持つか」などがある。

 このガバナンスの下では、エコシステムへの個々の貢献者がそれぞれ自分の仕事を最適化してもエコシステム全体が損なわれることはない。今後のアプリケーションチームは、適応型ガバナンスフレームワークによって、こうした意思決定を民主化しなければならない。このフレームワークは、意思決定が最適な場所で行われるようにする効果もある。

資金配分をアプリケーションや製品と整合させる

 コンポーザブルビジネスでは、各アプリケーション機能に予算が確保され、ロードマップが策定される。また、各アプリケーション機能が生み出すビジネス成果やビジネス価値を報告する方法も規定される。

 これらを可能にするには、組織の中央で行われる“ガバナンスボード”を通じた資金配分プロセスを変更し、資金配分を製品ラインや製品のマネジャーの裁量に任せる必要がある。これにより、製品マネジャーは、この資金をどう使って目指すビジネス成果を達成するかを決められる。

 ガバナンスと資金配分プロセスの民主化は、適応力と柔軟性が高く、ビジネス価値の迅速な提供にフォーカスしたアプリケーションエコシステムの実現に不可欠だ。

文化の理解と適応

 コンポーザブルビジネスに移行する中で、アプリケーションリーダーが直面する最大の課題は、組織文化の変革だろう。アプリケーションリーダーは、CIOや他のリーダーと連携し、まず現在の文化がどのようなものかを把握し、今後目指すべき文化のビジョンを描き、例を示しながら新しい文化の創造をリードすべきだ。

 コンポーザブルビジネスに不可欠な強いチームは、2つの重要な文化的な規原則を持たなければならない。

  • 1.信頼

 ほとんどのリーダーシップモデルは、「組織で地位が高い人ほど信頼できる決定を下す」という前提に立っている。だが、意思決定プロセスを真に民主化するには、そうであってはならない。リーダーは従業員を信頼し、従業員はリーダーを信頼しなければならない。

  • 2.アカウンタビリティ

 信頼されるには、アカウンタビリティ(説明責任)を果たさなければならない。そのためには、信念を持ってビジネスのために正しいことをする必要がある。こうした規原則を持つ組織では、トップダウンでのアカウンタビリティではなく、組織を通して相互にアカウンタビリティを果たし合う。


 アプリケーションリーダーは上記のフレームワークを用いることで、シニアビジネスリーダーとの協力により、ビジネス成果を促進する優れたエクスペリエンスの提供にフォーカスしたアプリケーション機能を実現できる。ただし、そのためには、そうしたアプリケーションを生み出すパフォーマンスの高いチームを、従業員が作れる環境を整備する必要がある。

出典:It’s Time to Disrupt the Application Organization(Smarter with Gartner)

筆者 Meghan Rimol

Senior Public Relations Specialist


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