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5分で分かる人工知能(AI)5分で分かるシリーズ(1/2 ページ)

人工知能をビジネスで活用したい人に向け、最新技術情報に基づき、人工知能の概要、注目される理由、歴史と課題、できること、次の一歩を踏み出すための参考情報を、5分で読めるコンパクトな内容で紹介する。

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連載目次

本稿は、2021年3月29日に公開した記事を、2022年4月7日の最新情報に合わせて改訂したものです。マルチモーダルに関する情報の追記や、書籍情報の修正などのアップデートを行いました。


1分 ―― 人工知能 (AI:Artificial Intelligence)とは

 人工知能というと、映画でよく見られるようにコンピュータやロボットなどの頭脳を思い浮かべるでしょう。広義には、その認識で間違いありません。より技術的に表現するなら、人工知能AI)とは、人間が行う「知的活動」をコンピュータプログラムとして実現することです。知的活動とは、頭(厳密には脳)で考えて実行する活動全般のことです。例えば「絵を描く」「言葉を認識する」「ゲームをする」など、あらゆる人間の行動がこれに当てはまります(図1)。

図1 人工知能(AI)とは
図1 人工知能(AI)とは

人工知能(AI)の実現レベルと現状

 先ほど「広義には」と注意書きをした理由は、現時点で人間の頭脳のような汎用(はんよう)的なAI(AGI:Artificial General Intelligence)はいまだに完成していないからです。現時点で実現しているAIは全て、用途が限定される、つまり基本的に1つの知的活動を専門に行う特化型のAIです。例えば「絵を描く」「言葉を認識する」「ゲームをする」の全てができる汎用型AIではなく、「絵を描く」AIや、「言葉を認識する」AI、「ゲームをする」AIというように個別の知的活動(タスク)を専門に行う特化型AIが今は開発されているというわけです。ちなみに汎用型AIと特化型AIは、哲学者ジョン・サールによって、

  • 強いAI=汎用型AI
  • 弱いAI=特化型AI

とも命名されています。

 もちろん汎用型AIを目指す研究は行われています(後述するマルチモーダルの項で紹介)。とはいえ依然として、特化型AIと比べて汎用型AIはハードルが高く、その実現のめどは立っていません。

専門家による人工知能(AI)の定義

 基本的なAIの意味は上記の通りですが、厳密な定義文が存在するわけではありません。たとえ専門家であっても、人によってさまざまな定義がなされています。参考までに、13人のAI研究者による学術的な定義を表1に掲載しておきます。

表1 13人の専門家による人工知能(AI)の定義(2015年時点の情報)

2分 ―― 人工知能(AI)が注目される理由

技術面

 技術的な面では、AI研究においてディープラーニング深層学習)という革新が2006年に起こったことが、一番重要なきっかけです。ディープラーニングとは、ニューラルネットワークというネットワーク構造を持つ仕組みを発展させたものです。

 ディープラーニングの特長は、大量のデータから特定の問題を解く方法を学習することです。これは例えば子供に犬や猫を覚えさせるのと同じようなものをイメージするとよいでしょう。

 このようにデータから機械的に学習することを機械学習と呼びます(図2)。機械学習にはディープラーニング以外に、古くから例えば回帰分析や主成分分析、決定木、サポートベクタマシンなど多くの手法があります(詳細割愛。別記事「5分で分かる機械学習(ML)」で紹介)。ディープラーニングが注目される中、その周辺領域である機械学習も大きな注目を集めています。

図2 人工知能(AI)と機械学習とディープラーニングの関係
図2 人工知能(AI)と機械学習とディープラーニングの関係

 ディープラーニングの登場により画像認識の精度(=性能)が飛躍的に向上し、現在では画像認識の特に分類時の正解率は多くの場面で人間を超える結果が出ています(場面によっては人より劣る場合もあります)。他には、音声認識や音声合成、画像生成、翻訳、文章生成、将棋などのゲームプレイ、各種予測など、多方面にディープラーニングは活用されています。

 今もディープラーニングの進化は続いており、特に2019年まではCNNという構造を使った画像認識や、GANという構造を使った画像生成が大きな成果を出して注目されていました。2020年以降ではBERTGPTという構造を使った自然言語処理のブレークスルーが続いています。また、BERT/GPTのベースとなるTransformer技術が画像認識などの別分野に応用されてきており、さらにTransformerを超える新技術の研究も進められています。こういった絶え間ないAI技術の進化も、AIへの注目を継続させる大きな要因です。

環境面

 また技術を支援する環境的な背景としては、

  • ビッグデータの増大: 大量のデータが必要なディープラーニングにとって、世界中にあふれるビッグデータが役立っていること
  • コンピュータの高性能化: 大量のデータを処理できるようになり、(CPUではなく)GPUによって並列処理する技術も確立していること
  • ディープラーニングや機械学習のための開発ライブラリの充実: PyTorch/TensorFlow/scikit-learnなどのライブラリが登場し、非常に手軽にディープラーニング/機械学習を実装できるようになっていること

が挙げられます。

3分 ―― 人工知能(AI)の歴史と、現在の課題

図3 人工知能(AI)研究の歴史
図3 人工知能(AI)研究の歴史

第1次AIブーム(1950〜1970年代)

 「人工知能」という名前が初めて提起されたのは、1956年のダートマス会議です。ここからAI研究が本格的に始動し、1957年にはニューラルネットワークの基盤となるパーセプトロンという概念が考案されています。それから20年ほどAI研究はブームとなりました。この時代では、主に「(迷路やパズル、数学定理の証明などの)推論・探索」に関する研究が行われました。

冬の時代(1970年代)

 そのパーセプトロンですが1960年代に入ると、トイプロブレム(=迷路やオセロのようにルールとゴールが決まっている世界の問題)しか解けないことが明らかになりました。この限界に失望し、AI研究の人気は徐々に下火になっていきました。

第2次AIブーム(1980〜1990年代)

 しかしAI研究は1980年代に入ると、医療など特定分野の知識を蓄積しておき質問に答えるエキスパートシステムという技術を生み出し、これが世界中の企業でブームとなりました。この時代では、主に「知識」に関する研究が行われました。

 ちなみにニューラルネットワークはこの時代においてブームの本流ではないものの、1986年にバックプロパゲーション誤差逆伝播法)という学習アルゴリズムが考案されるなど発展しています。

冬の時代(1990〜2000年代)

 そのエキスパートシステムですが1990年代に入ると、知識を膨大にため込む必要があるので莫大(ばくだい)なコストがかかることが明らかになりました。この限界に失望し、AI研究の人気は再び下火になっていき、しかもより長い冬の時代を迎えることになったのです。

第3次AIブーム(2010年代〜現在)

 2006年にディープラーニングが登場したことは既に紹介しましたが、その人気に火を付けたのが、2012年に行われた画像認識コンテスト「ILSVRC」でディープラーニングを用いたAIが他のAIの認識精度を大幅に上回ったことです。これが世界的な熱狂を巻き起こし、3度目のAIブームが始まり今も継続中です。この時代では、主に「ディープラーニング」と「機械学習」に関する研究が行われています。

現在の人工知能(AI)が抱える課題

 しかし現在のAIが抱える課題も幾つか提起されています。2018年ごろまでは、AIが人間を超越するシンギュラリティというAI脅威論がありましたが、最近ではトーンダウンしてきています。2019年ごろからは、AIの学習用データが白人寄りのため黒人やアジア人には不利だとする人種差別問題や、有名人の顔をAIで勝手に動かすディープフェイク問題、他にはAIの軍事利用の問題など、主に倫理面での課題が数多く噴出しています。こういった課題に対処するために、各企業/組織が責任あるAIを実現するための基本原則を公表することが2021年以降は増えてきています。

目次

1分 ―― 人工知能(AI)とは(現ページ)

2分 ―― AIが注目される理由(現ページ)

3分 ―― AIの歴史と、現在の課題(現ページ)

4分 ―― 現在のAIができること(次ページ)

5分 ―― まとめと、次の一歩のための参考情報(次ページ)


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