導入時には抵抗勢力ばかり?ITILの現状を聞くトレンド解説(11)(2/2 ページ)

» 2005年02月23日 12時00分 公開
[アットマーク・アイティ編集局,@IT]
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「ITIL推進者が抵抗勢力になる」

 「ITIL推進者が抵抗勢力になる」。日本ヒューレット・パッカードのソフトウェア統括本部 シニア・テクニカルコンサルタント 久納信之氏は、HPが1月24日に開催したITILのセミナーでこう述べた。ユーザー企業の誤解でITILの導入が進まないことが多いという久納氏の体験をベースにした考えだ。

日本ヒューレット・パッカード ソフトウェア統括本部 シニア・テクニカルコンサルタント 久納信之氏

 久納氏がITIL推進者の誤解として挙げた例の1つは、「ITILは理論本であることの理解不足」。ITILには、ITの運用に関して当たり前のことしか書かれていないとして、「もうすでにやっている」と後ろ向きになってしまうのだ。しかし、久納氏は「当たり前のことを理論立てて見直しを改善するのがITILの応用」と説明した。また、SLAを否定するITIL推進者も多いという。その理由はSLAは自分で自分の首を絞めると考えること。しかし、久納氏にいわせると「ITIL=SLA。SLAがないとITILは正しく回らない」。正しいビジネス要件に基づいたITサービスを明確化、文書化してユーザー部門とIT部門が合意するのがSLAの本来の姿だ。

 SLAを策定するコツは、事業部門とIT部門がSLAの目的を正しく理解すること。SLAは事業部門、IT部門が自らの立場を守り、責任を一方に押し付けることに利用されるケースもある。しかし、久納氏は「SLAの本来の目的はビジネス要件に基づくIT運用の日々の最適化であり、ビジネスとIT間のWin-Winの関係を構築する」と説明し、「IT側の見方ではなく、ビジネスの言葉で書くことがポイントだ」と述べた。また、自らの体験として「SLAが締結でき、効果的に実践できるかどうかは、ビジネス側マネージャとIT側サービスレベルマネージャとの関係次第といっても過言ではない」と説明し、人材の適切な配置が重要になると述べた。

ITILは20の努力で80の効果を狙う

 ただし、久納氏はすべての項目を導入しないとITILの本当の効果がないとは考えていない。久納氏がセミナーで訴えたのは「ITILで100点を取るのは大変。ITIL実践は“20の努力で80の効果を狙う”のがポイント」ということだ。狙うのは「IT運用業務の透明化と日々の改善」。日々の改善を実施するには、SLA導入による目標値の設定と、ツールを使った効果測定、IT運用の透明化がポイントになるという。小さいところからスタートしてできるだけ早期に成果を出すのが鍵になる。

 具体的にはサービス・デリバリの「サービスレベル管理」とサービス・サポートの「インシデント管理」「問題管理」「変更管理」などを導入する。導入の目標は3カ月。久納氏が示した導入プロセスでは、最初にIT運用に関する問題意識、ITIL導入の目的意識をIT部門、ユーザー部門で確認する。次いでトップマネジメントからITIL導入への協力を取り付ける。さらにSLAを管理するマネージャを社内で指名し、簡易版のSLAをIT運用に導入する。最後にHPのOpenViewなどSLAに照らし合わせてITILの効果を測定できるツールを導入し、日々の運用改善と透明化を進める。

 ITIL導入の3〜6カ月目はITILの結果が出てくる期間だ。久納氏は期待できる効果、目標としてヘルプデスクにかかるコール数の50%削減や、システム・ダウンによるビジネスへの悪影響の30%減、IT運用を行うエンジニアの士気の向上などを挙げた。しかし、「過大な目標設定はダメ」として「挑戦的かつ達成可能な目標の設定が重要」と指摘した。

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