ドキュメントレビューに役立つ40のチェックポイント企業システム戦略の基礎知識(14)(2/3 ページ)

» 2005年12月27日 12時00分 公開
[青島 弘幸@IT]

見積書のチェックリスト

 ソフトウェアの原価は、ほとんどが人工(にんく)費であるので、生産量と生産性の合意が基本となる。

 ここでは、ファンクションポイント法(FP法)による見積もりを前提に、チェックポイントを紹介する。従って、仕様書上で要求されている画面・帳票・ファイルに対して過不足がないこと、各構成要素の難易度や改修率に応じたファンクションポイント数(FP数)、単位FP数当たりの生産性や原単位などが妥当かどうか、がチェックのポイントとなる。複数の業者から相見積もりを取る場合も、このような見積もりであれば比較検討しやすい。一式いくらでは、比較検討のしようがない。単に安いか高いかだけでは、もしかすると大きな見積もり漏れや、作業範囲などに相違があるかもしれない。見積書は、提案書でもあるので、その内容を見れば実力や誠意をうかがい知ることができる。

(1)数量・単価・金額が、明示されているか
 数量(工数)、単価、金額は、明示されており、計算間違いはないか。これは、いうまでもなく見積書の基本だ。ここが、いいかげんでは、その先をチェックする時間さえ惜しい。

(2)見積もり有効期限が、明示されているか
 見積もり有効期限は、明示されているか。この見積もりは、いつまで有効なのか、時々刻々変わる状況変化に対する配慮がなされているか、どうかの問題だ。

(3)帳票、画面、ファイルの種類・数は、仕様書と整合的か
 システム仕様書に対し、帳票、画面、ファイルの種類および数は過不足なく定義されているか。この整合性をチェックすることで、漏れや勘違いを事前に確認する。基本的なところで勘違いがあり、見積もり段階でのボタンの掛け違いに最後まで気が付かないと悲惨だ。

(4)外部機能に着目して見積もりしているか
 処理方式ではなく、外部機能(帳票、画面、ファイル)に着目して見積もりしているか。あくまで、見積もりはユーザーの視点に立ったものでなければならない。

(5)一時ファイルを見積もり対象としていないか
 内部処理の作業用一時ファイルを見積もり対象としていないか。作業用一時ファイルなどは、顧客や利用者にとって付加価値のないものというのがFP法の基本的立場だ。

(6)改修作業では、改修関連のみを対象として見積もりしているか
 改修作業における階層型データベースや表データベースでは、全体ではなく改修作業に関連するセグメントや表の
 各帳票、画面、ファイルごとの入力、出力、入出力区分は、システム仕様書に対し妥当か。

(8)難易度別、データ型の数は妥当か
 難易度別、画面、帳票、ファイルの数は、システム仕様書に対し妥当か。

(9)難易度の選定は妥当か
 難易度の選定(難易度表:データ項目数、処理の複雑さ)は、システム仕様書に対し妥当か。あくまで利用者の視点に立った難易度であることを忘れずに。納得いかなければ、とことん話し合うこと。

(10)修正率の選定は妥当か
 これも、利用書の視点に立ち画面、帳票、ファイルに対する修正率を考えること。簡単に見えても内部的には複雑な改修もあるので、納得いくまで説明を求めること。

  • 類似ソフトの流用、プログラム部品の使用を考慮しているか
  • 改修でも、外付け可能な機能追加は、その部分を新規開発とした場合と比較検討する

(11)開発言語、ツールの選択は妥当か
 開発言語の生産性は妥当か。生産性の良い、適切な開発言語、ツールを選択しているか。汎用ソフト、ユーティリティ、開発ツールの使用を考慮しているか。選択の根拠を確認すること。

 納得いかなければ、事前に比較検討作業だけを発注してみてもよい。

(12)FP係数は妥当か
 FP係数(単価/FP数、または作業工数/FP数、またはFP数/人月)は妥当か。

 開発標準により、作業工程と各工程での実施作業および成果物が明確化されていることを確認し、その上で、委託する作業範囲および成果物、仕様書の完成度に応じて妥当かを確認する。

 作業工程の標準として、共通フレーム:SLCP-JCF98JIS X 0160なども参考にするとよい。

【参考書籍】
システム開発の体系?JIS X0160・共通フレーム98対応(日本ユニシス情報技術研究会=編/1999年1月/東京電機大学出版局)

(13)合計金額、合計工数は、システム規模に対し妥当か
 マクロ的に見て、合計金額、合計工数は、システム規模に対し妥当か。

 過去に実績のある、同等内容・規模のシステムと比較して見る。このためにも、システム構築の実績を画面・帳票数、FP数、作業範囲、成果物、発注金額などで記録しておくとよい。

(14)計算間違いがないか
 各帳票、画面、ファイルごとの入出力区分、難易度、FP数、金額は、矛盾や計算間違いがないか。基本的なことであるが、後でもめないようにキッチリとチェックし、納得できないところはしっかりと説明を求めるべきである。

(15)付帯作業や出張旅費の見積もりがあるか
 別途、導入・移行作業などの付帯作業や出張旅費が必要な場合に、見積もりがしてあるか。見積もりから漏れていることが少なくない。実用開始直前に追加費用が発生したり、出張費用を実費で請求されたりして慌てないようにしたい。

(16)必要な購入品を別途、見積もりしてあるか
 ハードウェア、ソフトウェア、ライセンスなど、必要十分な購入品を別途、見積もりしてあるか。システム仕様書および実際の業務要件、運用環境に対して、必要十分な性能・容量・数量などがサイジングされているか、その算出根拠も含めて十分確認のこと。

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