情報システム部門を戦略部門化できるか?システム部門Q&A(10)(1/2 ページ)

「情報システム部門を戦略部門化せよ」といわれて久しい。しかし、なかなかそうはならないのが現状だ。その理由はなぜか。そして、本当に情報システム部門は戦略部門に変わらなければならないのだろうか。

» 2004年07月03日 12時00分 公開
[木暮 仁,@IT]

質問

情報系システムを戦略部門にするには?

情報システム部門の部長です。情報システム部門を戦略部門にするべきだとよくいわれていますし、私もそうあるべきだと思っています。しかし現実の環境は戦略部門とは程遠い状況です。戦略部門に脱皮するには、どのようなことに留意する必要があるでしょうか。



「戦略部門化」の根拠とは

 戦略部門化以前に、情報システム部門を「人材育成部門」として認識するべきです。

情報システム部門=戦略部門化の根拠

 情報システム部門の戦略部門化の論拠は、次の三段論法に基づいていると考えられます。

1. 経営戦略の策定には、情報活用技術動向の把握と自社への適用検討が重要である。
↓
2. 情報活用技術の動向をよく認識しているのは情報システム部門である。
↓
3. ゆえに、情報システム部門を戦略部門として経営の中枢に位置付けるべきである。

 この論法において、1は真であることは明白でしょう。2も真でしょうが、「情報システム部門だけが、情報活用技術の動向をよく認識している」とするのには疑問がありますし、3には論理の飛躍があります。

 プログラムを作成したりコンピュータの運用をする従来からの業務を「DP業務」、経営戦略と情報活用技術動向を統合するような業務を「IT業務」と呼ぶことにします。

 1980年代にSIS(戦略的情報システム)の概念が普及しましたが、そのころから情報システム部門が「DP部門からIT部門へ」脱皮することが重要だといわれるようになりました。また、「短期は長期を駆逐する」ので、IT業務に専心するためには、DP業務をアウトソーシングすることが必要だともいわれてきました。

それどころか、大企業にコンピュータが本格的に導入された1960年代ですら、「コンピュータ導入の目的は手作業の機械化ではない。それを機会に業務の改革をするのだ」といわれ、情報システム部門(当時は「電算室」などの名称でしたが)はチェンジ・エージェンシーであると位置付けられていました。ちなみに私が所属していた企業では「合理化推進室」という名称でした。

 このような主張や動向は基本的には適切だといえます。すでにIT部門として経営者や利用部門から認められている企業では、戦略部門として成果を上げているケースも多く見られます。しかし、いまだDP部門として評価されている情報システム部門も多いでしょう。そのような成熟度が不十分な状況では、単に名目だけIT部門にしても、その成果が得られない危険があります。

情報システム部門に根付く2つの文化

1.リスク回避の文化

 DP業務を主体としている情報システム部門では、正しく処理できて当たり前、プログラムやオペレーションでミスがあるとしかられます。それで、情報システム部門はリスクに敏感になり、リスク回避を重視する文化が根付きました。よく「情報システム部門は新しい業務に否定的だ」といわれます。それはこのような環境が大きく影響しているのです。


 ところが、経営戦略は本質的にハイリスク・ハイリターンです。リスク回避の文化に染まった情報システム部門は、どうしてもリターンよりもリスクを重視して改革に関して消極的になりがちです。このような文化は戦略部門としては不適切だといえます。

 リスク回避の典型的な例は、1980年代末から1990年代初頭にかけてダウンサイジングへの対応です。慎重な態度を取る情報システム部門は、マスコミから「情報システム部門は、レガシーシステムにしがみついている保守反動派だ」とレッテルを張られ、情報システム部門バッシングの風潮になりました。

 情報システム部門が慎重であった理由は、「1日トラブルが発生しなかったら神の奇跡」である信頼性の低さと「サーバ1台に人身御供1人」が必要な運営コストの増大でした。その後、ダウンサイジング環境の運用コストの増大が指摘されTCOが重視されるようになりましたが、もはや名誉は回復せず、情報システム部門は委縮してしまいました。

2.利用部門へのリーダーシップ

 情報システムの企画や開発では、「ユーザー主導」であるべきだといわれてきました。ユーザーニーズを満足させることは重要ですが、ややもすると「ユーザーの声は神の声」であり、「ユーザーがいうことを実施しさえすればよい」という受け身的な文化になってしまいました。

 経営戦略を策定して実行するには、利用部門の組織や仕事の仕方などを抜本的に改革することもあり、必ずしも利用部門の利害に一致しません。そのような場合に、従来の情報システム部門は、利用部門を説得して実現するリーダーシップを発揮する訓練が不十分です。これまでと逆な立場になったとき、優柔不断な態度になったり、極端に権限を振り回すことになる危険があります。

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