自力で社内の埋蔵金を発掘するためのノウハウ公開!最先端BPM実践講座(3)(3/3 ページ)

» 2005年09月02日 12時00分 公開
[大川原文明,IDSシェアー・ジャパン株式会社]
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ノウハウ3.ヒヤリング結果のまとめ方と主要因の特定

1.プロジェクト目標のまとめ方例

 IDSシェアーが提供するBPMツールARISの「目的図」機能を使って、図6のようにモデル化できます。ここでは、目的と手段を取り違えないことが重要です。BPMツールでモデル化するメリットの1つは、文章と異なって、誰が見ても関係や重みがひと目で理解できることです。

ALT 図6 プロジェクト目標のまとめ方例

2.部門間、会社間の関係可視化モデル

 次に、図6の目的を阻害する会社間、部門間の業務プロセス/チェーンを探し出すための可視化を行います。会社間、部門間の当該プロセスが、どんな媒体を介してつながっているかをモデル化します(図7-1)。モデル化していく中で、無駄なチェーンや欠落しているプロセスがないか、確認し合うプロセスを踏むことが重要です。

 すると、いままで見過ごしていたプロセスが、見えてくるはずです(図7-2:「部門間、会社間の関係のモデル化で気付く例」)。実際のビジネスチェーンは複雑になりますから、BPMツールを使うことをお勧めします。図7-3は、ARISの「e-ビジネスシナリオ図」でモデリングしたサンプルです。

ALT 図7-1 部門間、会社間の関係のモデル方例
ALT 図7-2 部門間、会社間の関係のモデル化で気付く例
ALT 図7-3 部門間、会社間の関係のまとめ方例

3.ネック業務のフロー化

 2の手順でモデル化する中で、ボトルネックとなっていそうなプロセスについては、深掘りして業務フローまで掘り下げることが必要です。ARISを使うことで、図7-3中のプロセスにつなげて、図8に示すような業務フロー(EPC図)を容易に描くことができます(図8は見積もりプロセスの一部)。ここでは、業務フローを書くだけでなく、課題とその発生するプロセスの関係を可視化することが大切です。課題を抽出する時の観点として、プロセスそのものの意味(付加価値)やそのプロセスを実行するうえでの工数、時間、費用、頻度といった指標値を把握することが重要です。

ALT 図8 問題プロセスの詳細フロー化と課題抽出のモデル化例

4.抽出した個別課題から主要因を見いだす

 抽出した課題は、課題ツリーとしてまとめます(図9)。因果関係のある課題は、色分けして描いておくと、分かりやすいでしょう。そのうえで課題の因果関係を見極め、主課題を見つけ出します(図10)。この種の課題こそ、隠れている埋蔵金です。主課題は、それが本当の埋蔵金であるかどうか、図5のスケジュールの中日と最終日のレビューで、議論し、関係者の理解を得ます。

ALT 図9 課題ツリーのモデル化例
ALT 図10 主課題の特定

(補足)主要因を特定するためのシミュレーション実行

 主要因を特定するために、問題の大きさをBPMツールのシミュレーション機能(図3)などを使って、評価することは有効です。埋蔵金の在りかが特定できたところで、いよいよ発掘です「新業務プロセスの設計〜実行へ」。

 10日間のヒヤリングと課題レビューで、改革に向けた主要因(埋蔵金の在りか)が特定できたら、継続して主要因を解決するための新プロセス設計のフェイズに入ります。業務改革というと、ついつい斬新な発想が求められがちですが、ここに記述したこれまで踏み入らなかった金脈部分のプロセスを可視化し、そこにかかわる各部門の関係を的確にとらえるための基本手順を実行することで、ぜひ、地に足の着いた(現場からマネージャ、幹部の誰もが納得する)改革につなげてください。

 業務改革を進めるうえで大切なのは、投資対効果を見極める最初のステップ、すなわち埋蔵金の在りかとその価値を的確に把握するステップが重要です。むやみにあちこち掘ってみる、例えば、取りあえずERPシステムを導入してから考えよう的なアプローチは、現在ではさすがに減ってきています。本文に記した、埋蔵金の在りかとその価値を判定するステップを確実に踏むことで、最小投資にして最大の効果を生む成果につながることを約束いたします。


 今回で最先端BPM実践講座も最終回となります。第1回では、「業務プロセスとシステムをつなげてモデル化する手順とポイント」を、第2回では「事業計画をモニタリング・コントロールする手順とポイント」、そして今回は「自力で業務改革を進めるうえでの手順とポイント」を掲載させていただきました。これらが、皆さまの悩みを解決する一助となれたら幸いです。

profile

大川原 文明(おおかわら ふみあき)

IDSシェアー・ジャパン株式会社ディレクター

昭和63年NTT入社〜交換機、汎用システム開発に従事

1995年〜ERP導入ビジネス立ち上げプロマネを担う

2002年IDSシェアー社入社〜BPM、プロセス指向型システム導入を実践中


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