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■プロジェクトマネジメント
 
世界一わかりやすい プロジェクト・マネジメント
●サニー・べーカー、キム・ベーカー、G・マイケル・キャンベル=著/中嶋秀隆、香月秀文=訳
●総合法令出版 2005年4月
●2800円+税 4-89346-899-5
 プロジェクト・マネジメントについて満遍なく、かつ簡潔に扱った実用書。目次も一目で流れが分かるものと、詳細に本文の見出しを記載したものと2種類用意し、すぐに調べたい項目が探せる構成になっている。
 7パート30章と量で圧倒されるが、かなり頻繁に「賢者の言葉」や「プロジェクト用語」などのコラム・解説を織り込みながら、ポイントを絞った解説にとどめている。章の始めには章の流れが、終わりには章のまとめがあり、読み進めるうえで理解が深まる。
 30章ある中で注目したいのが、第3章「ゲームのルール」だ。プロジェクト失敗の7つの原因と、プロジェクト成功の12の黄金律を紹介する。黄金律からいくつか抜粋すると、「成果物について合意を得る」「最良のチームを育てる」といったことから、「できること以上のことをやらない」「変更を躊躇しない」など、当たり前だが何らかのしがらみで実現しづらいことが並ぶ。ほかに、第5章の「ステークホルダーの特定」、第9章の「WBS(作業分解図)」、パート4以降のリーダー論などが実用的だ。
 500ページ弱の厚みのある本だが、ウィットに富んだ文章でぐいぐいと引き寄せるパワーがある。プロジェクト・マネジメントの手法を知るためにも、実際のマネージャが自分の仕事の進め方をチェックするためにも活用できる便利な本だ。オフィスに常備し、必要に応じて見直していくことをオススメする。(ライター・生井俊)
 
実務で役立つWBS入門
●グレゴリー・T・ホーガン=著、伊藤 衡=監訳
●翔泳社 2005年3月
●2200円+税 4-7981-0849-9
 ワークブレークダウン・ストラクチャ(WBS)は、プロジェクトにおける一連の作業を分解し構造化する手法だ。その目的は作業項目を整理、定義、実行することである。
 第1章「WBS入門」では、WBSの考え方と作成の4つのステップを紹介する。4つのステップとは、最初のステップでプロジェクトの目的を決め、次に顧客に提供するプロダクト、サービス、結果などの成果物を決める。ステップ3では具体的な成果物を漏れなく特定し、ステップ4ではステップ2と3の各項目を計画やコントロールするうえで適切な大きさになるまで分解を続けるもの。
 第2章「基本概念」では、「100パーセント・ルール」を解説する。100パーセント・ルールは、WBSの作成と分解手法の評価において最も重要な指標で、「WBSの次の分解レベル(子ども)は、親要素に属するすべての作業を表す」。これが守られている限り、そのWBSに必要なすべての作業が包括されていることが保証される。
 解説部分は6章立て、約100ページでさっと読める。また、付録の「Q&A」「WBSとWBS辞書のサンプル」が充実しており理解を深めることができる。これまで“みようみまね”で何となくWBSを書いてきた人にオススメしたい。(ライター・生井俊)
 
覚悟の技術──プロマネが教える成功する人の考え方
●弓場秀樹=著
●ソシム社 2004年12月
●960円+税 4-88337-423-8
 ご存じのように「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というネタがある。「青信号」「赤信号」はGOかSTOPかの決めごとであり、信号の色に関係なくみんなで渡っても危険なときがある。つまり、本来は「安全かどうか」で判断しなくてはいけない。
 本書は、著者がプロジェクトの中で出会った、そのようなノリで行動してしまう人たちを記録・分析し、本質とは何かをまとめたもの。基礎編、職場編、人生編の3章構成で、55のテーマを扱う。「一から考えるVSゼロから考える」「時間をかけて待つVS時間をかけて考える」「夢をもつVS夢に向かう」などのテーマに対し、「さらりーまいんど」「ビジネスまいんど」を提示する。1テーマ3ページで完結し、よくある事例を挙げながら、最後に教訓として「覚悟の技術」を披露する。
 新しい行動に移る決断ができるかどうかを左右するのは、勇気や決断力ではなく「覚悟」だと筆者はまとめる。プロジェクトのみならず、会社の経営手法やしきたりに不満や歪みを感じているマネージャが、新しい仕組みを生み出す上で役立ちそうだ。(ライター・生井俊)
 
ここが違う! 仕事ができるプロジェクトマネージャー──そのノウハウと育成法
●野間 彰=著
●日刊工業新聞社 2004年10月
●1700円+税 4-526-05365-1
 できるPM(プロジェクトマネージャ)と一般PMとの差はあまりにも大きい。大手システム・インテグレータの調査によると、できるPMが担当したプロジェクトは、トラブルや納期延期が少なく、一般PMに比べ3割以上高い利益率を達成しているという。
 できるPMのノウハウを生かして、できるPMを作り出すのが本書の目的だ。世界的標準である「PMBOK」を活用しながら、ノウハウを体系化・共有・拡充する技術を確立するまでのストーリーを折り込む。
 本文はI〜Vの5章立てで、冒頭のI〜IIIでは第2、第3のできるPMを作るための事例を紹介している。Iでは、PMBOKの「穴」を埋めるための考え方を提示、できるPMのノウハウの標準化や移植についてを中心にまとめている。IIでは、できるPMの鍛え方を制度化することがテーマ。PMを成長させるためには矢面に立たせ、泣かせることが重要という論を展開する。IVでは、ノウハウの体系化法を扱う。ここで、できるPMがもつ「ノウハウ(短い言葉)」とは、方法論の「コンセプト」である、と説いている。
 事例中心で、適宜流れや考え方をまとめた図表があり、PMBOK初心者でも読みやすい。人材育成担当者や優秀なPMのノウハウを水平展開したいと考えているマネージャにお勧めしたい。(ライター・生井俊)

関連記事
有能プロジェクトマネージャ育成術(@IT情報マネジメント > ITスタッフ)
 
プロジェクト成功への決め手――構想・企画から商談・契約まで
●井野 弘=著
●英治出版 2004年12月
●2000円+税 4-901234-62-5
 本書は「プロジェクト失敗の根本原因」から「プロジェクト成功への<3つの力>」までを4部8章構成でまとめる。
 外注化モデルには、「システム構想・企画」「システム構築」「運用・改善」の3つの構成要素があり、そこには「発注契約」「発注側のプロジェクト・マネジメント」「検収条件・受け入れ」という3つのモヤモヤがある。ここでいうモヤモヤとは、不明瞭な状態のことで、各要素間のインターフェイスに関する取り決めが不透明なさまを指している。この3つの構成要素を着実に実施し、3つのモヤモヤをいかに明確化し、有利にするかがプロジェクト成功の鍵だ。
 「システム構想・企画」の品質を上げ、受注側と合理的な契約を交わし、「システム構築」を外注化する。それを受けて受注側は「システム構築」をきちんと成功させる。そのために必要なのは、「プロジェクト・マネージャの個人力」「PM組織力」「経営力」の3つの力を強化することだ。受注側・発注側それぞれが果たすべき役割を強く自覚すること、経営者自身が大きな構図でふかんし、リーダーシップを発揮することを求めている。
 図表を多用し、各項目について2〜10ページでまとめているため読みやすい。外注とのコミュニケーション不足に悩むプロジェクト・マネージャやプロジェクト・マネジメントでのリーダーシップの取り方を学びたい人に最適だろう。(ライター・生井俊)
どうすればシステム発注で失敗を防げるか
●田中徹=著
●技術評論社 2004年8月
●1580円+税 4-7741-2072-3
 情報システム部門に配属になった人や、システムを発注する担当者のためのバイブル。発注前の予備知識から、社内体制の整備、開発会社の見極め、イニシアチブの取り方などの7章構成となっている。
 システム発注に必要なことは「いいシステム会社を見つけること」と、「発注する準備が整っていること」の2つ。システム発注の作業としては、まず、複数の会社から見積もりを取り、適正価格を知り、予算の修正などを行う。システムの規模に応じ、大手の開発会社とソフトウェアハウスを使い分けることも必要だ。
 システムコンサルタントによれば、発注者側の体制の不備がトラブルを引き起こしていることが少なくないという。それを最小限にするためには、発注担当窓口を1人にし、可能な限り権限を委譲してもらうこと。また、開発に関する知識は最低限で構わないが、業務知識の中でも特に、会社独自のデータの流れに精通している必要がある。
 発注の仕方、SEの見分け方、システムコンサルタントの使い方など、開発に沿った必要なことが網羅してあり、入門書として手元に置いておきたい1冊である。(ライター・生井俊)
熊とワルツを──リスクを愉しむプロジェクト管理
●トム・デマルコ、ティモシー・リスター=著、伊豆原弓=訳
●日経BP社 2003年12月
●2200円+税 ISBN4-8222-8186-8
 著書「ピープルウエア」で知られるデマルコ&リスターの最新刊。ITプロジェクトにおけるリスク管理(おとなのリスク管理)を行うべき理由から、その基本的な考え方と手順について軽妙な語り口で述べていく。
 筆者は、「ソフトウエア開発がリスクをともなうのは、プロジェクトのあらゆる面が不透明だからだ」という。しかし、だからといってどのくらい不透明であるかを知らなくいいことにはならない。本書は、プロジェクトの進ちょく、コスト、利益などの不透明さを扱うやり方やリスク回避・低減の方法、そして具体的なプロセスを述べる。リスク管理の専門書では、おうおうにして込み入った確率計算の数式などが出てくるが、グラフや表、概念図にまとめられており、プロジェクトのリスクを他人に説明・報告する際にも役立つだろう。
 「やればできる式管理」で推進されているプロジェクトの参加者はもちろん、発注先のSIerのリスク管理能力を知りたいと考えている情報システム部門マネージャの方々にお奨めだ。
プロジェクトはなぜ失敗するのか──知っておきたいITプロジェクト成功の鍵
●伊藤健太郎=著
●日経BP社 2003年10月
●1800円+税 ISBN4-8222-8177-9
 ITプロジェクトの成功・失敗はどこで決まるのか。
 プロジェクトの失敗が分かると、責任の押し付け合いが始まる。そして、プロジェクトマネージャの交代などによって、失敗の経験が次のプロジェクトに生かされないことが多い。プロジェクトは初期段階で仕様の詳細まで固まっているケースが少なく、不確実性が高いものだ。どちらかといえば、失敗する確率が大きいにもかかわらず、こうした事後処理に終わることが多いようだ。
 本書では、「失敗を基準にプロジェクトを考える」視点を持つことで、プロジェクトに対する行動が変わると説いている。プロジェクトを成功に導くために、まず「プロジェクトを実施する目的」と「プロジェクトの成功の状態」を明確にすることが重要になる。その問いへの答えが明確でないと、意志決定で正しい解が導き出せないのだという。
 失敗した前例を分析し、問題点を浮かび上がらせる内容になっており、ここで学ぶべきことは実に多い。例えば、文書化がされていなかったり、悪い情報を隠ぺいしたりといったことでの失敗──。それは、任務遂行に適切な判断材料となる文書があればより適切な判断が下されたかもしれず、情報の隠ぺいが行われずリスクの検討がされていれば、適切な予算処置などが行うことが可能だったかもしれない。
 いま進行しているプロジェクトも、これからスタートするプロジェクトも、プロジェクトを「失敗するもの」として、いま一度この書を参考に見直してみてはいかがだろうか。(ライター:生井俊)
 
拝見!プロジェクトマネージャの仕事──ITプロジェクトの成否の鍵を握る人々
●金子則彦ほか=著、金子則彦=監修
●技術評論社 2004年1月
●1880円+税 ISBN4-7741-1903-2
 ITプロジェクトにおける失敗やミス事例を、ストーリー仕立てで具体的に示し、初級者にも「プロジェクトマネジメントとは何か?」が疑似体験的に理解できる構成になっている。登場人物の性格に由来する失敗ストーリーなどもあり、一般的なPM教科書を補完する内容になっている。対象読者はIT業界のSI会社のプロジェクトマネージャ(予備軍含む)だが、カウンターパートであるユーザー企業側の情報マネージャ、プロジェクトメンバーが読んでも役立つだろう。

 

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