顧客獲得とシスアドに大切なこと(第4話)目指せ!シスアドの達人(4)(2/4 ページ)

» 2005年09月16日 12時00分 公開
[森下裕史(シスアド達人倶楽部),@IT]

シスアドとしての活躍

 「ロートン」のトラブルも一区切りし、新営業支援システムの電子会議室の内容も充実し始めた。最初は文字入力に抵抗のあった岸谷や藤木も、自分の都合の良い時間に書き込みができ、過去の内容も一目瞭然の電子会議室の魅力を理解したようだ。もちろん、坂口が操作手順を分かりやすくマニュアル化して配布し、入力の基本操作の講習会を開いて操作に不安が出ないようにしたのだ。情報システム部の福山もマニュアルの出来栄えには感心していた。

  営業部で坂口が行ったIT化も、段々と実を結んできていた。松下の一件では、先走って少し失敗したが、あの話し合いの後からは、むしろいろいろな相談を受けるようになった。松下自身もシステム開発メンバーに選ばれた以上は、もうコンピュータを毛嫌いするわけにいかない。最初は戸惑ったことも多かったが、坂口の丁寧な説明とアドバイスのおかげで、ツールの便利さを実感し始めていた。また、システムに使うための記入項目の整理も松下の役目となり、いままでためていた知識を披露できる場所を提供されて、まんざらでもない様子である。

 谷田は、メンバーに選ばれなかったのを残念に思いつつも、自分の業務改善にかこつけて、何かと坂口に相談を持ちかけていた。

谷田 「坂口さん、この前の得意先別、製品別の集計方法なんですが、基幹システムから出るテキストデータを、エクセルのシートに取り込んで集計できるようになりました。いままでは紙のデータを打ち替えていたんですごく楽になりました!」

坂口 「よかった。それ、意外とみんな知らないんだよね」

谷田 「こんな簡単なことなのに」

坂口 「機能のことは情報システム部に聞けばすぐに分かるんだけど、それが業務の何に利用できるかを知っているのは業務を担当している各部署の人なのさ。そこの橋渡しがうまくできていないんだよ」

谷田 「そっか、それが初級シスアドの役割なんですね」

坂口 「そう、それも大事な役割の1つさ。もちろん、部署でのシステム環境作りや教育支援なんかも大事な役割だよ」

 一方、椎名は手書きのメモを報告書に清書しようとして、ワープロソフトと悪戦苦闘していた。

椎名 「ワープロのけい線機能はどうも好きになれないなぁ」

坂口 「椎名さん、自分の使っているファイルでよければ、ひな型として利用できますよ。グループウェアの『文書管理』のところにあります。そう、そこをクリックすると出てくるでしょう」

椎名 「お、すごいな!いろいろあるぞ」

坂口 「実は松下さんに頼んで、よく使う社内文書を電子化してもらったんですよ。自分が作ったファイルも載せてあります。総務部には深田さん経由で仮の許可は取ってあります。もちろん、試作中なので、まだまだ改善しなくてはいけないんですが」

椎名 「これはいい。松下嬢の記入要領も付いているし、分かりやすいな」

坂口 「まだ未完成ですが、使ってみてください」

椎名 「ほかの連中にも教えてやろう。きっと喜ぶぞ」

坂口 「ありがとうございます。何か希望があったら教えてください」

 坂口は谷田や椎名が積極的に使い始めてくれたことに感謝していた。実のところ、彼らも使いたかったのだが、使い方がよく分からなかったのだ。情報システムに頼んでも基本的な操作は教えてくれるが、現実の業務における使い方がイメージできない。坂口は業務に直結した利用方法を説明することの大切さをあらためて痛感していた。そこへ、「何やら楽しいことをやってそうだ」と思った水元が輪の中に入ってきた。

水元 「3人で何話しているんですか? 飲み会の話なら、わたし抜きにしたら駄目ですよぉ!」

坂口 「いやいや、社内文書のことなんだけど。これがみんなのところで見られるようにしてあるんだよ」

 坂口は、椎名のパソコンに表示された文書管理の画面を水元に見せながら概略を説明した。

水元 「へぇ〜、いいですね。私も使っちゃおうっと。これって私も登録できるんですか?」

坂口 「登録者は情報システム部に申請して許可をもらわないと駄目なんだけど、ファイルをくれれば松下さんに登録してもらえるよ」

水元 「分かりました。この中にないもので作った書式があるので、後でメールで送りますね」

坂口 「ありがとう、そうか、ほかにも作っている人はいるんだよな。いろいろ集められるといいんだけど」

水元 「私に任せてください。飲み友達は全部署にいますから、一声掛ければあっという間ですよ。えっへん!」

 水元はかわいらしい容姿に似合わず酒豪である。あっちこっちの部署の飲み会に借り出され、というより乗り込んでいっているようだ。おかげで若手にもかかわらず、知名度はNo.1である。酒の勝負では1度も負けたことはないらしい。

椎名 「それは頼もしいな。ただし、それにかこつけて飲み会を開いたりしないように」

水元 「えっ! 駄目なんですか? つまんなぁ〜い」

坂口 「いや、うまくいけば自分がおごりますから」

水元 「やったー! 約束ですよ! 坂口さん」

椎名 「坂口、そのせりふは後悔するぞ。まぁ、1度経験してみればいいか」

 4人は笑いながら、それぞれの業務に戻っていった。

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