Database WatchDatabase Watch 2011年2月版

OSS-DB技術者注目の資格試験がやって来る

加山恵美
2011/2/16

オラクルが新たに提供するデータ連携ツール

 次はオラクルの話題です。1月25日、オラクルはデータベース間でデータを連携させるためのツール「Oracle GoldenGate 11g」の提供を始めました。

 Oracle GoldenGateはデータベース間で高速にデータを複製する機能を提供します。仕組みは簡単。RDBMSのログを読み取って、データを転送します。片方向のデータ複製だけでなく、双方向のデータ同期にも対応します。最新のOracle Database同士でしか使えないということはなく、異なるバージョン間のデータ複製も可能です。インメモリデータベース「TimesTen」にも対応します。さらに、「Microsoft SQL Server 2008」や「IBM DB2 v9.7」、「MySQL」などにも対応可能です。

 GoldenGateは、約1年半前にオラクルが買収で得た製品です。買収時に得たGoldenGateはバージョンを「10g」としていました。その後、オラクルの手法に則って開発し、関連ドキュメントなどを整備し、新バージョンはオラクル純正製品として「11g」を冠することになりました。

 製品のアーキテクチャは、買収時に得た10gから大幅に変えることなく、GoldenGate 11gではいくつかの機能を改良しして使いやすさの向上を狙っています。11gの主な特徴としてはまず、パフォーマンスの向上が挙げられます。これは、レプリケーション行程の最適化や障害時のリカバリ時間の短縮で達成しました。さらに、運用管理を容易にするために、管理コマンドを増強し、ログ管理機能の強化を強化しました。ほかにも、ダイレクトロード時のトランザクションに対応したり、対応プラットフォームを増やしたりしています。

 と言っても「GoldenGateなんて初耳」という人もいるでしょう。買収前は日本法人もなかったそうですから、日本ではあまり使われていないのも事実です。しかし北米では金融業界や通信業界で人気と実績のある製品です。

 用途としては先に説明したように、システム間のデータ連係がまず考えられます。ほかには、分散したデータベースのリアルタイム分析などが挙げられます。データベースをクラウドのデータベースにアウトソースしてシステムを拡張するときにも使えます。そして、最も利用頻度が高いのはシステムをノンストップで移行、統合するときに利用するケースだそうです。

 例えば、一時もサービスを止められない大規模なeコマースサイトで、新しいシステムに移行するとき。ある段階までのデータを旧システムから新システムへコピーし、移行中はこのGoldenGateで旧システムと新システムの間でデータを同期させ、準備が整ったらユーザーは新システムに移行するといった具合です。

 重要なシステムでシステム移行をするときには役立つツールとなりそうです。

データベース友の会でチューニング勉強会

 この連載で何度か紹介しているデータベース友の会はますます勢力的に活動しています。1月22日には「Oracle勉強会 パフォーマンスチューニング@アクアシステムズ」を開催しました。

 パフォーマンスチューニングというと、筆者にはエンジニア時代のいい思い出でもあります。かつて社内で試験的にメールシステムの運用を始めたら「これは便利」と続々と参加希望者が増え、サーバの性能が許容する負荷を超えたまま運用することになってしまいました。社内向けシステムなので簡単にはハードウェア増強の経費が下りず、なんとかしのぐためにあれこれチューニングしたものです。的確にチューニングするには、データベースの仕組みと、幅広い知識が欠かせません。パフォーマンスチューニングの現場はどこも厳しいものですが、学ぶことが多い場でもあります。

 データベース友の会が開いたパフォーマンスチューニング勉強会では、パフォーマンスチューニングの難しさとして「一筋縄ではいかない。完了目標が明確ではない。本番環境で練習できない。障害が突発的に発生する」などの点が挙げられていました。またデータベース管理者からすると「最後の統合テストで性能問題が発覚する。SQLの修正はDBAの役割だろうか?」といったジレンマを抱えることも少なくありません。共感できる人は多いのではないでしょうか。

 勉強会で講師が紹介した実践テクニックとしては、SQLのチューニング、Indexの設計ポイント、診断手順などがありました。例えばSQLなら、「暗黙的型変換を避ける」のがコツだとのこと。よくあるケースとしてフラグを判定することがありますが、その時の式で文字列や数値などの型変換をさせてしまうと性能が劣化する場合があるので、型変換を避けるようにSQLを書くべきとのことです。

 講師を務めてくれたのはアクアシステムズのデータベース専門家である川上明久氏や篠田靖氏です。どちらも受講者に「先手を打てるDBAになろう」と呼びかけていました。DBAとなると、自分に非がなくても障害対応を迫られることもあります。そこでSQLを作成するときの規約を定めたり、Indexの設計に加わったりするなど、上流工程にかかわり、トラブルを未然に防ぐように先回りして行動できるようにしようという提言です。下の写真は、アクアシステムズTechnology Divisionのマネージャーである川上明久氏です。Oracle Databaseのパフォーマンスチューニングテクニックについて語ってくれました。

 2月24日にはこの川上氏らが「DBAのための、上流からおさえる攻めの性能管理」と題してオラクルのダイレクトセミナーで講義するそうです。

 データベース友の会の原点ともいえるデータベーススペシャリストの勉強会はこれからが佳境です。3月12日にはClub DB2と合同で“デスペ勉強会”を開くそうです。仲間が増えればやる気も増えますね。頑張ってください!

 2月はほかにもPostgreSQL Conference 2011(2月25日)があります。PostgreSQL 9.0に関するセッションが盛りだくさんです。

 ではまた来月、お会いしましょう。過去記事もどうぞ!

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Index
OSS-DB技術者注目の資格試験がやって来る
Page 1
オープンソースデータベースの新試験登場
想定するRDBMSはPostgreSQL
→ Page 2
オラクルが新たに提供するデータ連携ツール
データベース友の会でチューニング勉強会



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