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IBMが歴史を変える!? 新カテゴリの製品を発表

加山恵美
2012/5/25
 今月IBMはDB2の新バージョン DB2 10に続き、新たな製品カテゴリとなる「PureSystems」を発表。DB2 10とビッグデータの関係、PureSytemsの斬新さはどこかに迫ります。またMicrosoft MVP受賞者にもお話を聞きました。

パターン化とオープンのIBM PureSytems

 4月12日、IBMは全世界で同時に「PureSystems」を発表しました。サーバ、ストレージ、ネットワーク、仮想化などを統合したものが「IBM PureFlex System」(写真左)、さらにミドルウェアも搭載したものが「IBM PureApplication System」(写真右)です。日本IBMの橋本孝之社長は「歴史的な転換点」として斬新さを強調していました。実際IBMとしては「エキスパート・インテグレーテッド・システム(EIS)」という新たな製品カテゴリとなるそうです。

 ただ、一見した感じでは他社も出しているハードウェアとソフトウェアが一体化した製品のようです。何が新しいのでしょうか。筆者の理解を大ざっぱに表現すると「パターン化かつオープン」です。

 日本IBM 専務執行役員 システム製品事業担当の薮下真平氏(写真)によると、IBM PureSystemsではこれまでIBMが培ってきた専門家の知見を「パターン化」して導入されているのが特徴です。

 あらかじめ用意されたパターンを活用することで、導入にかける時間やコストを抑えることができます。ハードウェアとソフトウェア一体型でありながら構成は固定ではなく、一定の自由度があります。

 加えてオープンでもあります。先述した「パターン」はIBM製品やIBMの知見だけとは限りません。IBMのパートナー企業がパターンを作成し、提供したり、顧客自ら作成することも可能です。ちょっと大胆ですが、理論的にはIBM PureSytemsにOracle Databaseを稼働させることもできるそうです。

 パターンはすでにIBM PureSystems Centerで公開されています。見るとIBM以外の企業もパターン(ソリューション)を提供しています。薮下氏は「iTunesでアプリを選ぶ感覚」と例えていました。

 ハードウェアとソフトウェアを統合した製品ながらの強力な性能を持ちつつも、パターン化で手軽さやオープン性も持ち合わせているというIBMの新製品ファミリーが登場しました。これからIT業界にどんなインパクトをもたらすでしょうか。

ビッグデータ時代に対応したIBM DB2 V10登場

 4月10日、IBMはDB2の新バージョン「IBM DB2 V10.1(以下、DB2 10)」を発表しました。同日より日本IBMおよび日本IBMのビジネスパートナーから販売開始し、4月30日からダウンロード提供開始となります。

 4月はDB2 10の解説を聞く機会が何度かありました。1つは4月17日にIBMが開催した情報管理製品のイベント「Information On Demand Conference Japan 2012」(資料はこちら)です。この中で日本IBM インフォメーション・マネジメント事業部 アーキテクト 野間 愛一郎氏(写真)がビッグデータとDB2 10の特徴について「3つのV」とキーワードを掲げて解説しました。IBMは数年前からビッグデータという方向性を見すえていたため、このトレンドと合致する新機能がDB2 10に搭載されています。

 ビッグデータの「3つのV」とは「Variety(データの多様性)」「Velocity(データの頻度・速度)」「Volume(データや計算のサイズ)」です。ビッグデータは構造化・非構造化が混在した多種多様なデータ、大量・大規模なデータを高速に処理する必要があるからです。

 こうした背景にDB2 10はどう対応できるようになっているか、野間氏は具体的な機能を挙げていきました。1つ目のV「Variety」はDB2 9からの特徴となるXMLをネイティブかつ高速に処理できるpureXMLの強化、InfoSphere BigInsights(Hadoop)との連携、加えて新機能「タイムトラベル照会」(後述)があります。

 2つ目のV「Velocity」はデータの頻度・速度に関してはpureScale強化、基本性能向上、ワークロードマネジメントなど拡張性や性能向上があります。3つ目のV「Volume」はデータの圧縮技術の新機能「アダプティブ圧縮」、ストレージ管理新機能「Multi-Temperature Storage」(後述)、加えてセキュリティのさらなる強化です。

 この中の「アダプティブ圧縮」について。従来DB2のデータ圧縮では表レベルで頻出用語にコードを割り当てる形で「辞書」を作り、データ圧縮を行っていました。これに加えてDB2 10ではページ単位の圧縮も行えるようになります。両者を組み合わせるので「アダプティブ圧縮」。より圧縮できるようになります。データが小さくなれば運びやすくなり、処理性能向上にも寄与するというわけです。

 そしてもう1つ、4つ目のVとして野間氏は「aVailability」を挙げました(「V」とするにはちょっと苦しいですが)。このVにはpureScaleとHADR(High Availability Disaster Recovery)強化が該当します。後者で目立つのはMultiple Standby対応、つまり10ではスタンバイは最高3台まで設定することができるようになった点です。

 DB2 10は9で登場した機能をより強化し、ビッグデータ時代を見越して必要な機能を盛り込んでいるという印象です。


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パターン化とオープンのIBM PureSytems
ビッグデータ時代に対応したIBM DB2 V10登場

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