Database WatchDatabase Watch 2012年6月版

HANAはSAPの中軸製品になれる?

加山恵美
2012/6/18
今月は、最近注目を集めているインメモリデータベース「SAP HANA」SP4の発表に伴って、担当者の方にHANAの生い立ちや戦略、なかなか見ることができない実機を見せてもらいました。また、IBMとマイクロソフトによる“夢!?”のコラボレーションを取材しました。

SAP HANAがSP4提供開始、統計言語Rとの連携機能強化

 6月5日、SAPジャパンはインメモリデータベース「SAP HANA」の最新サービスパックとなるSP4を提供開始しました。

 SP4の機能強化点は大きく分けて2つ。(1)統合データベース基盤に向けた機能強化と(2)運用管理機能の拡張です。

 (1)は分析用途からアプリケーション開発まで幅広く視野に入れ、また昨今のビッグデータに関するトレンドも含めて、機能強化しています。具体的には関数群の追加や強化、統計言語「R」との連携機能強化、非構造テキスト検索と分析、Hadoop/MapReduce連携サポートです。特に「R」の連携機能強化は大きいですね。

 (2)はミッションクリティカルな環境で安心して使えるようにするための機能拡張です。アップデートやパッチ適用、バックアップやリカバリ、セキュリティ機能の拡張、およびSLT(SAP Landscape Transformation) Solution Managerとの統合で運用管理現場の保守性や可用性の向上が見込めます。

 SAPジャパン リアルタイムコンピューティング事業本部長 馬場渉氏(写真)は「個々の機能というより統合的に使える」ことを強調していました。

 ほかにも同日、SAPジャパンは開発者向け施策として、SAP HANAをAWS(Amazon Web Service)において無料で提供すると発表しました。開発者は登録すればAWS上でHANAインスタンスを稼働することができます。昨今、Webサービスとして利用できるデータベースが充実してきましたね。

SAPがこだわる“リアルタイム性”を実現するSAP HANA

 さて昨今、人気急上昇中のSAP HANA。5月には、SAPは「リアルタイム・データ・プラットフォーム製品戦略の軸にSAP HANAを据える」と発表し、同時にデータベース市場への強い意気込みも見せていました。

 ところで、筆者の素朴な疑問として、「戦略の軸に一般的なディスク書き込み型のデータベースではなく、インメモリデータベースを据えるのはなぜかしら?」というのがありました(だめだという理由もないのですが)。その点に関して、SAP内でも戦略の方向性を決める際に、多少の迷いはあったようです。しかしSAPにとってHANAは「秘蔵っ子」のような存在です。思い入れがあり、また主要な理念にもかなう製品だからではないかと理解しています。

 あらためてSAP HANAの生い立ちを振り返ってみましょう。SAPがSybaseの買収を発表したのが2010年5月、同年11月末からHANAの(限定)出荷を始めています。そこから半年ごとにサービスパックを出し(実質的にはバージョンアップ)、現在SP4に至っています。

 さらに前の話をSAPジャパンのリアルタイムコンピューティング推進本部 HANA事業開発マネージャ 池田真人氏(写真右)と同社 リアルタイムコンピューティング推進本部 プリンシパルアーキテクト 松舘学氏(写真左)がHANAが生まれるまでの歴史をひもといてくださいました。

 「もともとSAPが目指していたのは経営をリアルタイムで可視化するということでした」(松舘氏)。

 SAPの有名なERP製品として「SAP R/3」(現在は後継製品「SAP ERP」)を記憶している方も多いことでしょう。この「R」は「リアルタイム」を意味するほど、SAPにとって“リアルタイム”は重要な概念です。しかしデータが増えるにつれ処理が重くなり、肝心のリアルタイム性の確保が困難になってきました。そこでDWHを使うようになったのですが、次に「データをデータベースへコピーするのに時間がかかる」という悩みを抱えるようになりました。ほかのハードウェアに比べ、ハードディスク(回転数)はさほど高速化が進んでいないですからね。

 一方、SAP共同創業者のハッソ・プラットナー氏はドイツのポツダム大学にてHPI(Hasso-Plattner-Institut)という研究所を立ち上げました。目指したのはやはり「早いERP」です。「ボトルネックがディスクにあるのだから、オンメモリでやろう」という結論に至り、テキスト型検索エンジン「TREX」などの前身技術を経て、さらに発展して生まれたのがHANAでした。

 HPIにおける研究開発の中でSAPはインテルとも協業。「Intel Xeonプロセッサ」への最適化を行い、優れたパフォーマンスを出せるように設計されています。「開発過程ではインテルの技術者と、SAP HANAのソースコードレベルで共有し、高速化のためにあらゆる最適化を徹底的に行いました」(池田氏)。

 SAP共同創業者がSAPにとって重要なリアルタイム性を実現するために生み出したものがHANAだと考えると、SAPがHANAを戦略の軸として据えるのも不思議はないですね。なおSAPとHPIは、SAP HANAでGerman Innovation Award 2012を受賞したのだそうです。

 ところで、SAP HANAの実物はもうご覧になりましたか。SAP HANAはアプライアンスなので多様なハードウェアベンダのサーバで稼働しています。今回はIBM製と日立製のものを見せてもらいました。(写真)上がIBMのラック型(指をさしている部分)、下が日立のブレード型です。一見しただけでは、SAP HANAが動いているかはわからないと思いますが、実物例です。

 SAP HANAは半年ごとにSPを出すサイクルとなっており、次は年末にSP5が出る予定です。そこではERPとHANAの連携も視野に入っています。HANAはいよいよSAPの中枢を担う製品となっていきそうです。


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SAP HANAがSP4提供開始、統計言語Rとの連携機能強化
SAPがこだわるリアルタイム性を実現するSAP HANA

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マイクロソフトとIBMがタッグ、夢のコラボセッション
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