データ活用の新しいかたち・後編

“参照系処理の集約”で
人の知恵を活性化する基盤を作る

サイベース株式会社
マーケティング本部
冨樫 明
2009/6/5

参照系基盤への移行の考え方

 ここで少し、現在さまざまなシステムで実際に稼働している参照系処理をどのような考え方で移行すればよいのかというところに触れてみます。

 まずデータの移行です。現在の基幹系システム内のデータを見てみましょう。基幹系システムの中には、マスタデータのテーブルと入力されたデータのテーブルが存在します。マスタデータと入力データを組み合わせてはじめて初めて参照できるデータとなります。

 帳票やオンラインレポートを作るために、一般的には、アウトプットの形に合わせサマリテーブルが作られます。極端にいえば500本の帳票があれば500個のテーブルが存在します。これ以外に、外部のデータマートにデータ提供するために、サマリテーブルを持っています。問題はこれをどのように移行するのかということです。

 結論からいいますと、500個すべてのテーブルを移行するわけではないのです。何のために500個ものサマリテーブルを作っているのかといえば、汎用データベースが“参照に弱い”ために、明細データから一気に帳票を作れないからです。今回移行しようとしているのは、“参照系専用の高性能データベース”です。同じ構造をコピーする必要はありません。もっと管理しやすいシンプルな構造にすればよいのです。

 まず、マスタデータと入力された生データをコピーします。そこから参照用のテーブルを作るのですが、目的別のサマリではなく、もっとデータ粒度の細かい、すべての帳票や集計が共有できるテーブルを作ればよいのです。

図4 データの集約

 次にプログラムの話をします。参照系のプログラムには、先に挙げたサマリテーブルなどを作るためのバッチプログラム、帳票を作成するためのプログラムなどがあります。帳票バッチの切り離しといったお話をすると、すぐにプログラムの移行の話になります。「いま使っているプログラムはそのまま使えるのか?」という疑問です。この疑問の理由は、移行する先にも、現在と同じくたくさんのデータテーブルを持つものだと思ってしまうからでしょう。汎用データベースを長年使っているとこのような構築が常識になり、明細データによるシンプルな構造でそのまま参照できるというイメージがわかないのだと思います。

 せっかく開発したテーブル作成用のプログラムですが、参照系処理専用のデータベースでは必要ないのです。もっとシンプルに、マスタデータと入力データを組み合わせて、明細レベルのデータを例えば大福帳で持つようなテーブルをいくつか用意すればよいのです。また、帳票作成のプログラムは、もし手組みのプログラムで帳票作成しているようでしたら、なんらかのツールの活用をお勧めします。生産性は格段に向上するでしょう。それがさらに将来のコストを低下することになります。

参照系基盤を選択すべき本当の意味

 ここまで、登録系処理と参照系処理を切り離し、参照系処理は汎用データベースから決別、全社データをアーカイブした基盤として集中管理することで大幅な運用コスト削減ができる可能性があります、というお話をしてきました。しかし、参照系処理の集中管理基盤には、コストダウン以上に大きな戦略的な意義があります。

 この基盤の中には、全社のデータがいつでも使える状態になっている、ということです。新しいデータニーズがあったときに、基幹系システムからどうやってデータを取ってくるのかとか、データベースはどういう設計にすればよいのかとかいうことを考える必要がなくなり「どのような分析をするのか」ということに専念することができます。また、どのようなユーザー層のデータニーズにも応えることができるデータ粒度の細かさを提供します。

 今後、データ活用の重要性はますます高まってきます。もはやビジネスプロセスの効率化で他社に勝つことが極めて難しくなっているいま、これからのITの貢献は基幹系システムに代表される「業務プロセスの自動化」から「人の知恵を活性化するためのデータ提供」へシフトしていくことは自然な流れです。そんな状況においては、いち早く全社的な共有基盤構築へ取り組む意義は大きいといえます。

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Index
“参照系処理の集約”で人の知恵を活性化する基盤を作る

Page 1
参照系処理にはどのような参照プロセスがあるのか
参照系専用データベースを考える

Page 2
カラムストアデータベースとアプライアンスの比較
カラムストアデータベースの特徴
→ Page 3
参照系基盤への移行の考え方
参照系基盤を選択すべき本当の意味

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