本書は、マイクロソフトの準公式技術解説雑誌として、主にプログラマをターゲットとする密度の高い情報を提供し続けている『Microsoft
Systems Journal』の過去の記事(約1年分)の記事を総集し、上下巻にまとめたものである。このうち上巻では、『マイクロソフトシステムジャーナル日本語版』のNo.59(原書はMicrosoft
Systems Journal Feb.1999)からNo.66(同Dec. 1999)までの本編の特集記事やプログラミング技法、技術解説記事をまとめている。一方の下巻では、同じくNo.59〜No.66の中から、各種のワンポイント・テクニックなどを連載しているコーナーをまとめた。具体的には、デバッグ法などを紹介するジョン・ロビンス(John
Robbins)氏執筆の「Bugslayer」、C++でのプログラミング・テクニックを紹介するポール・ディラシア(Paul
DiLascia)氏の「C++」、COMのプログラミング・パラダイムなどを紹介するドン・ボックス(Don Box)氏の「House
of COM」を始め、セキュリティ関連やVisual C++の活用テクニック、Win32のさらに一歩踏み込んだ活用法など、いずれもその分野の第一人者による解説が目白押しである。
それもそのはず、このMicrosoft Systems Journal(通称MSJ)は、マイクロソフトがまだOS/2の開発に携わっていた時代から、プログラマ向けの技術解説記事を提供してきた伝統ある雑誌であり、すでに十余年の歴史を持つ。つまり、Windows環境の発展を支えるプログラマのよりどころとして、長年にわたり責任を果たしてきた雑誌なのだ。
マイクロソフトがインターネット戦略を大転換した際、インターネット技術に注力した技術解説誌の『Microsoft
Internet Developer』(通称MIND)が創刊されたが、その後2000年にMSJとMINDがまとまって、開発者向けの総合情報誌である『MSDN
Magazine』が誕生した。本書の名称が『Best of MSDN Magazine』なのはこのためである。
MSJやMIND、そして新しいMSDN Magazineの原著である英語の記事は、米MicrosoftのWebサイト(MSDN
Magazineのホームページ)で公開されているし、マイクロソフトが開発者向けに提供している情報サービスのMSDNで提供されるCD-ROMにも収録されている。したがって、英語で記事を読むことが苦でなければ、これらの記事を読めばよい。しかし現実に多くのプログラマにとっては、日本語のほうが圧倒的に素早く記事を読むことができるはずだ。この点MSJの翻訳陣は、長尾高広氏や福崎俊博氏を始め、知る人ぞ知る技術翻訳者揃いで、翻訳のクオリティは高く、安心して読める(残念なことだが、今なお、やむなく原著の取り寄せに及ばざるを得ない訳書もある)。
少々変則的な使い方ではあるが、本書を手元に置いておき、Web(MSDN CD-ROM)に公開されている英語版を検索して、必要な部分(たとえばプログラム・サンプルなど)だけ拾い読みするならそのまま英語版で、じっくり読みたければ、対応する本書の翻訳記事を参照するとうい手もあるだろう。ただ勝手をいえば、膨大な本書の情報から、必要なものを素早く見つけだせるようなデジタル版も欲しかった。
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