本書は、日本人著者による、おそらく初めてのMicrosoft.NETおよびC#の入門書である。
ずいぶんと素早い対応だと感心して見たところ、執筆陣にはマイクロソフトのメンバーが含まれている。ただし対応が早かっただけに、すでに使用されなくなったいくつかの名称、ASP+(現ASP.NET)やADO+(現ADO.NET)、VOS(現CTS:Common
Type System)などが一部に残っているので注意が必要だ。
本書には付録CD-ROMが1枚添付されており、この中にC#コンパイラや.NET Framework環境を実際に試すことができる「.NET
Framework SDK Beta 1(英語版)」(以下.NET SDKと省略)と、これを使用するにあたって必要な「Internet
Explorer5.5(日本語版)」と「Microsoft Data Access Component 2.6(日本語版)」が含まれている(なお、.NET
SDK Beta1についてはすでに日本語版がマイクロソフトのサイトからダウンロード可能になっている。マイクロソフトのダウンロード・サイト)。.NET
SDKのファイル・サイズは100Mbytes強もあるので、高速なインターネット接続環境がないプログラマにとってはありがたい。
本書では、この.NET SDKを使い、C#で記述されたサンプル・プログラムを実際に動かし、結果を確かめながら、C#や.NET
Frameworkの基礎的なテクノロジを学習できるようにしている。.NET SDKを使用したプログラミングは基本的にコマンド・プロンプト(あるいはDOSプロンプト)からコマンド・ラインにてコンパイルなどを行うが、本書ではコマンド・プロンプトでのコマンド解説もなされており、グラフィカル環境に馴れたプログラマでも戸惑わないように配慮されている。
本書の前半はすべて一問一答の形式で、「ネームスペースとは?」、「オーバーロードを行うには?」といったふうに、.NETプログラミングのポイントが簡潔にまとまっており、初心者にとって読みやすく、参考になる。また一問一答形式のため、読み終えた後でも参照しやすい。全体的な構成としては、まずマイクロソフトの.NET戦略とそれを構成する技術要素について簡単に解説した後、C#の入門解説、C#を用いたWindowsアプリケーションの作成、そして.NET戦略の鍵となるWeb
Serviceの作成に進むという構成になっている。まずWindowsプログラマに馴染みの深いWindowsアプリケーションのプログラミングを先にもってくるあたり、既存のプログラマにとっても取っつきやすくしようという努力の跡がうかがえる。
また本書の約半分を占める後半部分は、C#言語リファレンスとなっており、C#でプログラミングをしていく上で便利に活用することができるであろう。ただ、最後の「Formクラスリファレンス」は少々分かりづらく、.NET
SDK Beta1では記述されていないという理由で説明もなされていない部分も多く残念である。
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