連載:.NET中心会議議事録

第6回 デベロッパーでもできる! UX向上手法

デジタルアドバンテージ 一色 政彦
2011/10/17

 2011年9月23日(金曜日)、@IT/.NET開発者中心コーナー主催のオフライン・セミナー「第6回 .NET中心会議」(スポンサー:グレープシティ)が開かれた。

会場の様子

 今回のテーマは「デベロッパーでもできるUX向上手法」。デザイナーにしかできない仕事だと思われがちなUX(ユーザー・エクスペリエンス)の向上について、デベロッパーの視点を中心に講演やQ&Aが行われた。セミナーの構成は、下記のとおり。

  1. 基調講演『社会と繋がるためのUX』:
     50分。詳細後述。

  2. UXセッション『XAMLで学ぶレイアウトスキル』:
     
    30分。詳細後述。

  3. Q&Aセッション『識者・経験者に聞く、デベロッパーでもできるUX向上手法』:
     85分。本セミナーに寄せられた質問をモデレータが発表し、パネリストが回答。

  4. 懇親会:
     45分。来場者と登壇者が軽食&ドリンクをとりながら、意見を交換。

 本稿では、基調講演および各セッションのUstream中継の動画を視聴・閲覧できるようにしている。

基調講演『社会と繋がるためのUX』

  基調講演では、UX分野で活躍されている長谷川 恭久 氏が、開発の際に忘れてしまいがちな「社会」という側面に注目してUXを形にするための考え方を説明した。

講師 長谷川 恭久 氏 デザイナーという肩書きだが、実質的にはビジネス戦略を考える仕事を主にしている。ブログ・サイトでは、さまざまなUX関連の情報を発信しており、人気がある
講師のプロフィール

 基調講演の内容については、以下のUstream中継の動画を視聴してほしい。

【配信終了】基調講演のUstream中継の動画
Video streaming by Ustream
セッション開始は6分30秒から。

UXセッション『XAMLで学ぶレイアウトスキル』

 続いてUXセッションでは、グレープシティの八巻 雄哉 氏が、業務アプリケーション開発者向けに、WPF/Silverlightにおける基本的なレイアウトの考え方を、具体例を用いて説明した。

講師 グレープシティ
株式会社 
八巻 雄哉 氏
コンポーネント・ベンダーのエバンジェリスト。UXが専門というわけではないが、UIコンポーネントを多数、開発/販売している会社なので、「主に業務アプリケーションのUX構築にどうすれば貢献できるか」を日夜考えている
講師のプロフィール

 UXセッションの内容については、以下のUstream中継の動画を視聴してほしい。

【配信終了】UXセッションのUstream中継の動画
Video streaming by Ustream
セッション開始は1分15秒から。

Q&Aセッション『識者・経験者に聞く、デベロッパーでもできるUX向上手法』

 Q&Aセッションでは、パネリストの方々に寄せられた質問を発表し、パネリストが回答した。登壇していただいたのは、下記の方々である(以下、敬称略)。

パネリスト 長谷川 恭久 氏 (前述のため省略)
グレープシティ株式会社 
八巻 雄哉 氏
(前述のため省略)
シグマコンサルティング株式会社 
橋本 圭一 氏
ほかの企業と組んでサービスや業務システムを開発している。会社の競争力を高めるために、今取り組むべきテーマの1つとして、UXを掲げている
大日本印刷株式会社 C&I事業部 IT開発本部 
生田 大介 氏
印刷会社ではあるが、コンシューマ向けや業務系のシステム開発も行っている。10年近く「RIA(リッチ・インターネット・アプリケーション)」関連の仕事をしており、Flashに始まり、今はSilverlight、HTML5なども扱っている。また最近ではスマホやクラウドを扱うこともある
デザイナー&イラストレーター&コンチの生みの親 
牛木 匡憲 氏
2年ほど面白法人カヤックでデザイナー&イラストレーターをしたときに、ガラケー向けのアバター・サイト「コンチ」を制作した経験を持つ
モデレータ デジタルアドバンテージ
一色 政彦
@IT Insider.NET編集長であり、.NET開発者中心の記事編集・執筆・企画などを行っている
登壇者のプロフィール

 以下は、最後のまとめとして各パネリストに伺った「デベロッパーでもできるUX向上のポイント」である(以下、敬称略)。ここに書き出している以外にも注目すべき発言が多々あったので、興味がある方はぜひUstream動画を視聴してほしい。

―― デベロッパーでもできる、お勧めのUX向上手法を教えてください。

長谷川「この質問が出た時点で、その方はUX向上について、まずはOKだと思います。一番良くないのが、知ったかぶりして済ませてしまうことです。なぜを追求して、自分なりに答えを出していくことが重要です。これをきっかけに、小さな事から何かをスタートすればいいのです。

 特に日本語は、前提を言わないまま何となく共有できてしまうというアバウトな言語です。そのため、デベロッパーやデザイナーなど、異なる職種の人がそれぞれの前提や思い込みで話し合って、勘違いしたまま最後まで進めてしまうことがあります。そうならないよう、まずは適切なコミュニケーションをするために、前提の言語化や視覚化に挑戦してほしいです。」

八巻「UX向上のための工数や予算が取れないという意見は多数ありますが、例えばノウハウを社内で共有する機会を作ってみるなど、工数がないなら、ないなりに何かアクションを起こして進められることがあると思います。そういったことから実践に取り入れていくのが良いと思います。」

橋本「日常業務のためのアプリケーションであれば、ぜひエンド・ユーザーと仲良くなってください。もし自分の開発したシステムの使い勝手が悪くて、仲の良い友人の仕事が毎日5分ずつ遅れているとしたら、やはり改善せざるを得ませんよね。また、そうすれば、ユーザーが喜んでいる顔が見られるというメリットもあります。

 もう1つが、われわれの作るデザインにとって、社会や規範は大きなウェイトを占めていますので、そういったものでのスタンダードを勉強してください。例えばjQuery Mobileなど、世界中で標準的に使われているものに触れてみて、そのマネから始めてOKだと思います。」

生田「アプリケーションの利用を『自分事』として経験することが重要です。つまり、『自分が使うとしたら、どうだろう?』と、頭の中で思い描いてシミュレーションした方が、より良いUXを実現しやすいと思います。

 特にこれからの時代では、ソーシャル対応やマルチデバイス対応のニーズが高まるにつれ、UI/UX面でもエンジニアが積極的に取り組む必要性が大きくなるでしょう。そこでは、デザイナーとデベロッパーの境界をできるだけなくして、すり合わせていかなければなりません。」

牛木「ディズニーランドに行くこと。もちろん普段できない体験ができることもよいのですが、ディズニーランドのスタッフがディズニーの世界観を守るために、ものすごい『気づかい』で来場者を迎え入れているという点が重要なポイントです。その気づかいは世界一だと思います。この『気づかい』とは、『おもてなし』とは少し違い、いうなれば『空気を読んで行動すること』であり、まさに日本人が得意とすることです。UXとはこういった『気づかい』だと考えており、日本人はUXにおいて非常に大きな可能性を持っていると思います。」

【配信終了】Q&AセッションのUstream中継された過去動画
Video streaming by Ustream

 次回の.NET中心会議としては、Windows 8、Windows Phone 7、アジャイル開発などのテーマを検討中である。実現すれば、12月ごろに開催となるので、ご期待いただきたい。end of article


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