.NET開発者中心 読者調査レポート

Windows RT効果か?! タブレット開発への関心が大躍進

―― 第6回 Windows 8時代のアプリ開発についてのアンケート結果(2012年3月実施) ――

デジタルアドバンテージ 一色 政彦
2012/04/23


* 本稿では、「アプリケーション」は「アプリ」と略す。「スマートフォン」は「スマホ」と略す。

 @ITでは、2012年3月8日(木)〜3月18日(日)の期間、Windows/.NETベースの業務アプリ開発に携る@IT読者を対象に、Web上での自記式アンケートによる読者調査を行った(調査実施機関はアイティメディア株式会社。有効回答数は260件)。

 本稿は、その調査結果から、筆者が特に興味深いと感じた下記の調査項目に関するものを一部抜き出してグラフ化し、簡単な説明と考察を付記したものである。

【現在のアプリ開発状況】

  • 開発中のアプリ種別
  • アプリ開発技術の利用状況

【Windows 8時代のアプリ開発】

  • Windows 8 で開発したいアプリの種類

【『@IT .NET開発者中心』へのフィードバック】

  • .NET開発者中心で読みたい記事コンテンツ
  • .NET開発者中心で利用したいサービス
  • 仕事のためのソーシャルネットワーク利用状況

 なお、本稿で取り上げなかった調査結果(「Windows 8 用アプリ開発への興味度」「Windows 8 用アプリ開発に関する興味内容」など)は、TechTargetでホワイトペーパーとして提供している。

現在のアプリ開発状況

開発中のアプリ種別

Q. あなたは現在、主にどのようなアプリの開発にかかわっていますか? 最も当てはまるものを、1つだけお選びください。

開発中のアプリ種別(N=258)

 「スタンドアロンのPC用アプリ」と「C/Sシステム用アプリ」を合計すると、46.2%となり、依然として.NET開発者の大半が、デスクトップ上のWindowsアプリを開発している。

 また、「業務用Webアプリ」「商用Webアプリ」「Azureなどで稼働するクラウドアプリ」を合計すると36.8%となり、Webアプリの開発もかなり盛んだ。

 新しい分野の「スマホ/タブレット端末用アプリ」はまだ3.1%と少なく、Windows 8の登場でこのパーセンテージがどれほど変化するかが注目される。

アプリ開発技術の利用状況

Q. そのアプリは、どのような技術で開発していますか? いくつでもお選びください。

アプリ開発技術の利用状況(N=259)

 Windowsアプリ開発に関しては、依然として「WPF」(8.9%)よりも「Windowsフォーム」(56.0%)が圧倒的に多く採用されている。しかしながら、約半年前に行った前回の調査結果と比較すると、「Windowsフォーム」が60.8%→56.0%と4.8ポイント減少し、一方の「WPF」は7.1%→8.9%と1.8ポイント増加している。緩やかにではあるが、しかし着実に、WindowsフォームからWPFやそのほかのWeb技術などに移行していっているようだ。

 筆者の考えでは、WPFは宣伝されているほど、Windowsアプリの使い勝手を良くしているとはいえず、それがWindowsフォームから移行しない一因になっていると想像している。この状況を変えるには、アプリが乗るプラットフォーム自体を魅力あるものに変えるしかないだろう。そういう意味で、Windows 8のMetroスタイル・アプリ(WinRT開発)がどれほど普及するかが、XAML開発の普及、ひいてはWPFアプリのシェアが逆転するかどうかの鍵を握っているだろう。

 Webアプリ開発に関しては、やはり「ASP.NET MVC」(6.6%)よりも「ASP.NET Webフォーム」(23.2%)がまだまだ利用され続けている。これも先ほどと同様に前回の結果と比較すると、「ASP.NET Webフォーム」が27.7%→23.2%と4.5ポイント減少し、「ASP.NET MVC」が6.1%→6.6%と0.5ポイントだけ微増している。増加量が少ない分、「そのほかのWebアプリ技術」が26.0%→27.8%と1.8ポイント増加している。つまり、ASP.NET Webフォームから脱却する傾向ではあるが、ASP.NET MVCへと向かうよりもそのほかのWeb技術(例えばRuby on RailsやNode.jsなど)に移行してしまっていると考えられる。

 筆者の考えでは、ASP.NET Webフォームはコントロール群をフレームワーク側が提供しているので、最新技術や今風デザインに素早く対応させるのに向いていない。そのため2〜3年という短い期間で、オープンソース・ライブラリやHTML5/CSS3を取り入れやすいWeb技術(ASP.NET MVCも含む)に大きく移行していくと考えている。(Windowsアプリと違って)Webアプリの世界は、Windowsプラットフォーム以外のサーバ製品(Linuxなど)上のWeb技術も競争相手となるので、(WPFと比べて)ASP.NET MVCのシェアを伸ばすためには激しい競争が予想される。

 そのほかでは、前回の結果と比較して、「Silverlight」は2.0ポイント減少しており、先行き不透明感を反映している。また、「スマホ用ネイティブ・アプリ」は1.9ポイント増加、「スマホ用Webアプリ」は1.5ポイント増加しており、現状のスマホ人気を反映している。

Windows 8時代のアプリ開発

Windows 8 で開発したいアプリの種類

Q. あなたが今後 Windows 8で開発してみたいアプリの種類を、いくつでもお選びください。

Windows 8 で開発したいアプリの種類(N=248)

 第1位は「タッチ操作に最適化したUIを持つ業務アプリ」(56.9%)だった。大半の開発者が、Windows 8の最大の売りである「(タブレット端末での利用に最適な)Metroスタイル・アプリ」の開発に関心があることを示している。

 しかしながらその一方で、従来と同じアプリ種別を意味すると考えられる「キーボード&マウスで操作する業務アプリ」(56.0%)が、わずか0.9ポイント差で第2位となっていることに注目したい。この結果を見ると、Windows 8が登場しても、以前と同じようにそのままPCとして利用したい開発者はかなり多いようだ。

 現状のタブレット市場はiPadがほぼ独占しており、そこに多数のAndroidタブレット端末が投入されて追いかける形で、ある程度のシェアがすでに確定してきている。そのタブレット市場で、どこまでWindows RT(=Windows 8のARM版=Windowsタブレット端末)が健闘できるのか、楽しみである。

 Windows RTが爆発的に売れるようなことがあれば、Windowsストア(=Metroスタイル・アプリを売買できるマーケットプレイス)がアプリ開発上の大きな収益源に育つ可能性があり、現在のWindows系&.NET系の開発者は大きな恩恵を受けるだろう。年内には、Windows RTを搭載した端末が(米国などで)32機種も投入され、iPadから20%のシェアを奪うことを目標にしているというニュースも報道されている(参考:「「Windows 8」搭載タブレット、年内に32機種投入との報道 - ニュース:ITpro」)。製品登場後の成り行きが非常に楽しみである。この分野でWindows RTが大成功することを、.NET開発者として祈りたい。

『@IT .NET開発者中心』へのフィードバック

.NET開発者中心で読みたい記事コンテンツ

Q. あなたが今後「.NET開発者中心」で読みたい記事内容があれば、いくつでもお選びください。

.NET開発者中心で読みたい記事コンテンツ(N=256)

 第1位は頭1つ飛び抜けて「Windows 8のMetroスタイル・アプリ開発」(40.6%)の記事となった。Windows RTタブレット端末向けのアプリ開発への関心は高い。

 続いて2位に「業務系Androidタブレット・アプリ開発」(32.0%)、5位に「業務系iPadタブレット・アプリ開発」(26.6%)と、業務アプリでのタブレット端末対応に関する記事のニーズは高い。1位と合わせて考えると、今、タブレット開発の関心がとても高くなってきているといえるだろう。

 3位の「.NET開発者のためのデザイン・パターン入門」のような開発パターン系は、いつの時代も不動の人気である。

 4位は「HTML5を活用したスマホ向けWebサイト開発入門」となった。スマホ開発の人気は、若干、落ち着いてきており、前述のタブレット開発に逆転されつつあるが、まだまだスマホ開発に関する記事のニーズは高い。

.NET開発者中心で利用したいサービス

Q. あなたが今後「.NET開発者中心」で利用してみたいサービスがあれば、いくつでもお選びください。

.NET開発者中心で利用したいサービス(N=253)

 「電子書籍(PDF&EPUB)形態による技術情報の提供」(35.6%)が1位となり、ついに開発者にメディア活用の変化が起き始めていることを感じさせる結果となった。電子書籍の提供については、@IT全体でここ数年議論してきており、提供時期は明言できないが、いずれはこのニーズに応えたいと考えている。

 第2位は僅差で「開発者同士が交流できる参加型のイベント」(34.0%)だった。次回の.NET中心会議からは、さまざまな工夫を凝らして盛り上げていきたいと考えている。

 また、同点2位に「スマホ/タブレット専用アプリの提供」(34.0%)が入った。これについては本年度中の.NET開発者中心の目標ともなっており、最適な提供形態を議論しているところである。こちらについても提供時期は明言できないが、秋あたりを目指して努力したいと考えているので、ご期待いただけるとうれしい。

仕事のためのソーシャルネットワーク利用状況

Q. あなたが現在仕事の情報収集や交流でよく利用しているソーシャルネットワークやサービスがあれば、いくつでもお選びください。

仕事のためのソーシャルネットワーク利用状況(N=205)

 1位が「Twitter」(50.7%)、2位が「Facebook」(46.8%)という結果になった。Twitterに関しては@devchuを今後も継続する予定である。またFacebookに関しては、.NET開発者中心だけでなく、@IT全体で連携や活用を強化していく予定だ。現在、Facebookページを運営しているが、専任者による情報発信や、オフライン・セミナー「.NET中心会議」と連携したオンライン・イベント・ページの開設などを行う予定である。

 今回のアンケートと同じテーマのオフライン・セミナーを5月19日(土曜日)に開催予定だ。題して「第8回 .NET中心会議 Windows 8時代に向けてアプリ開発と技術選択を考える」。ぜひ奮って参加してほしい。Windows 8時代の開発について当事者として一緒に考えていただき、今後の.NET&WinRT開発者全体の発展にご協力いただけると幸いだ。End of Article


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