特集:.NETメディア改革論

「.NET開発者中心」は何を目指すのか?

デジタルアドバンテージ 一色 政彦
2009/09/10
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.NET開発者「中心」という名称の由来

 ロング・テール型情報の実現方法についての考察に入る前に、.NET開発者中心を始めるきっかけとなった背景と.NET開発者中心のコンセプトについて説明させていただきたい。

IT業界の不況は差し迫った.NET開発者共通の課題

 今回、ロング・テールの部分に注力するチャレンジを決めた理由はもう1つある。それが昨今のIT業界の不況だ。

 2002年以降の景気回復を支えとして2008年ごろまで、IT業界(特にソフトウェア業界)は大きく拡大し、プログラマーの数は年々増加している感触があった。その一方で、ITシステムは成熟度を増し、年々顧客の環境を革新できる余地が小さくなったという印象も同時に感じていた。顧客ニーズが拡大しなければ、どれだけ優れた新技術を提供しても、供給過剰に陥ってしまう。顧客ニーズを掘り起こさなければ、IT市場が飽和してしまうと感じていたエンジニアは少なくなかった。

 しかし運悪く、それに2008年からの未曾有の大不況が重なってしまった。引き金となったリーマン・ショックから1年近くたち、景気は底が見えたといわれながらも、IT産業が売り上げのより所とする企業の設備投資は、いまなお冷え込んだままだ。将来について不安を抱いているエンジニアも少なくないだろう。

.NET開発者中心は.NET開発者をつなぐハブを目指す

 このような時代だからこそ、開発者同士が知恵を出し合い、みんなで新しいIT業界の未来を築いていける場が必要ではないだろうか。現場で働く.NET開発者が相互扶助する「HUB」(=中心地、拠点)となるサイト。そういう場になれるようチャレンジしていきたい。そういう思いを込めて「.NET開発者中心(サブタイトルは“.NET Developers HUB”)」という新コーナー名が決定されたのである。

 私たちは、このような「開発者がいま何を考えているのか分かるサイト」を、読者参加によるロング・テール型情報で実現したいと考えている。これも.NET開発者中心の大きな目標の1つとなっている。

 それでは、このような.NET開発者のためのハブを実現する方法について考察していこう。ただし以下はまだ検討中のアイデアであり、将来的には変更になる可能性があることをお断りしておく。

.NET開発者中心のロング・テール型情報

 言葉で簡単に「読者によるロング・テール型情報」とはいっても、それほど簡単ではない。例えば実際にブログを持つ読者は多くはないだろうし、何よりもブログ更新の大変さは筆者自身が身にしみて分かっている。

 従ってこれを実現していくには、.NET開発者中心に、もっと気軽に情報発信ができる仕組みが必要となる。そこでまずヒントにしているのがTwitterである。

第1段:つぶやきコミュニティ

 Twitterとは、「いま何をしているか」を140文字という短い文でコメントする(=つぶやく:twit)システムである。1行掲示板のようなものともいえるが、多数の書き手からリアルタイムに「いま」の情報が流れるという特徴があり、その流れを眺めるのは意外と楽しい。

 Twitterコミュニティのポイントは、「誰かに見せる」ことを前提としない独り言(つぶやき)を気軽に発信しながら、それが第三者(フォロワー=つぶやきを見る相手)と共有されるということだ。独り言だから、発言の敷居が下がる、敷居が下がるから従来からある掲示板やブログでは発信されないような情報が発信される、結果として情報発信者の知られざる興味や趣味などを知ることができるというわけだ。匿名性が排除されているという意味で2ちゃんねるとも少し違う。この感覚は、実際に多数のフォロー(=つぶやきを見る相手)を登録してそのコミュニケーションを経験してみないと、なかなか理解できないかもしれない。

 情報は投稿されなければ意味がない。どうにかしてポストしていただく必要がある。そこで、Twitterのこの「気軽さ」に着目したわけである。

 現在、編集部では、Twitterのように比較的短いコメントで技術情報を発信できる、つぶやき型のコミュニティを模索している。このコミュニティを通して、技術情報、ノウハウ、IT業界の話題などを共有する仕組みを考えている。コンセプト・イメージは次の画面のようになる(現在はまだ検討段階であり、この画面のような形態になることが確定しているわけではない)。

つぶやき型コミュニティのコンセプト・イメージ

 年内をめどにアルファ版として何かしら形になったものを披露したいと考えている。そこからフィードバックを得て、アジャイルに最適な形態を完成させていく予定だ。

第2段:コード共有サービス

 ロング・テール型情報としては、もう1つ大きなサービスを計画している。これが、アンケートでも要望が非常に多いコード共有サービスである。

 プログラマーの最大の関心の1つは開発生産性だ。コスト削減圧力が強い現在、開発生産性をいかに高めるかは、プログラマーの死活問題になっている。開発生産性に影響する要因は多々あるが、特に日本の受託開発で問題となるのは、「同じようなコードをみんながそれぞれ作っている」ということだ。業務アプリケーションで求められる機能の多くは案件によらず似通っていたりするものだ。

 従って、ネットを調べれば使えそうなコード・サンプルがあるかと思いきや、見つからないので自分で作る。作ったコードを後の人のために共有すればいいのだが、簡単な仕組みもないので自分のハードディスクとか、せいぜいイントラネットのファイル・サーバに眠らせておく。次に必要になった人はインターネットを探しても見つからないから、自分で作る……。こうして、同じようなコードが日本全国で作られ、デバッグされている。これでは開発生産性も上がらないというものだろう。

 私たちのアイデアは、再利用できそうなコード断片があったら、まずは自分が後で使い回すために保存する感覚で気軽に共有でき、それを後から必要になった人が探せるようにするコード共有機能である。共有に向けた「敷居の低さ」という意味では、前出のつぶやきコミュニティに通じるところがある。

 しかしつぶやきとは異なり、コード共有はストック型の情報サービスであるから、おのずと違った側面も必要になる。大事な側面の1つは、コードを共有して、他人の役に立ったという実感をどうやって醸成するかだ。これが弱ければ、コード共有のモチベーションはたいして上がらないだろう。

 例えば1つのアイデアは、クックパッドのような形式で、自作コードを容易に公開できると同時に、それを実際に利用したプログラマーからのフィードバックを見られるようにする方法である。

 こちらも、現在、検討段階であり、まだ具体的な方法は決定していない。公開時期は未定である。

 以上が、冒頭の考え/理論に基づき、.NET開発者中心で新しく始めようとしていることだ。次のページでは、説明を先送りしたメイン・ストリーム型情報について、これまでのVB研やInsider.NETとどう違うのかを説明する。


 INDEX
  特集:.NETメディア改革論 
  「.NET開発者中心」は何を目指すのか?
    1.メディア改革が必要な理由/.NETメディアのロング・テール理論
  2..NET開発者「中心」という名称の由来/ロング・テール型情報
    3.メイン・ストリーム型情報/セミナー「.NET中心会議」


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