Windows Azure Platform速習シリーズ

Windows Azureのローンチに向けて知っておくべき4つのこと

Windows Azure Community 市川 龍太
2009/10/28
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Windows Azureを取り巻く環境(現状)を知る

 ここまでWindows Azureが提供する機能と内部構造について解説してきたが、続いては「Windows Azureを取り巻く環境(現状)」という視点で、いくつかのポイントについて解説する。

課金体系

 本稿執筆時点でWindows Azureのポータル・サイト(後述)において、以下の課金体系が提示されている。

サービス名 分類 課金体系
Windows Azure コンピュート・サービス 1時間あたり0.12ドル
ストレージ・サービス 1GBytesあたり月に0.15ドル
ストレージへのトランザクション 10,000トランザクションで0.01ドル
帯域幅 1GBytesあたりインバウンドは0.10ドル、アウトバウンドは0.15ドル
SQL Azure Web Edition 1GBytesまでは月に9.99ドル
Business Edition 10GBytesまでは月に99.99ドル
帯域幅 1GBあたりインバウンドは0.10ドル、アウトバウンドは0.15ドル
.NET Services メッセージ 100,000回のメッセージ操作で0.15ドル

帯域幅

1GBytesあたり受信は0.10ドル、送信は0.15ドル

Windows Azure Platformの課金体系
いずれも「ドル」という記述は「米ドル」を意味する。
・コンピュート・サービスの利用時間は、アプリケーションが配置されている間のCPU使用時間で課金されるため、CPUがアイドル状態であっても課金対象になる
・ストレージ・サービスは1カ月あたりの総使用量を1カ月の日数で割った平均使用サイズで課金される
・帯域幅はインターネットを経由した利用側とデータセンター側の通信に対して課金されるため、データセンター内については対象外である

ただしこの課金体系はあくまで暫定であり、特に日本向けにも同様の課金体系になるのかどうかについてはまだ公式な発表はされていないので、あくまで参考として見た方がよいだろう。

 このような細かい課金体系は一見すると煩雑なように思えるが、クラウド化の対象になるシステムの利用状況をある程度正確に分析することができれば、運用時のコストについてもそれなりの精度で見積もることができるため、システムを利用するユーザー側にとっては納得感のある課金体系ともいえるのではないだろうか。

 ちなみに、Windows Azureはこのような従量課金のほかにも、定額制のサブスクリプションや大口顧客向けのボリューム・ライセンスなども用意され、MSDNサブスクライバ―向けにもWindows Azure Platformを一定時間使用することができる。関連情報として以下のサイトをご参照いただきたい。

SLA(Service Level Agreement)

 本稿執筆時点でWindows Azureのポータル・サイトにおいて、以下のService Level Agreement(サービスの品質保証。以下SLA)が提示されている。

サービス名 分類 SLA内容
Windows Azure コンピュート・サービス 外部からの接続性において99.95%を保証
WebロールおよびWorkerロールについて2分以内の障害検知
ストレージ・サービス 99.9%を保証
Windows AzureのSLA一覧

 コンピュート・サービスにおける外部からの接続性というのは、データセンター側のインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)からデータセンターまでの接続について、99.95%の信頼性を保証するという意味である。

 この99.95%という数字は、オンプレミスの24時間365日稼働を前提とするシステムにおいて一般的に求められる99.99%(フォー・ナイン)や基幹システムなどの高可用性システムに求められる99.999%(ファイブ・ナイン)に比べると見劣りするように見えるかもしれない。しかしAmazon EC2のSLAもWindows Azureと同様に99.95%(Google App Engineは未発表)であることから、現時点では99.95%がクラウドにおける基準値といえる。

 従って、Windows Azureに限らずクラウド上でシステムを運用する場合は、コストとのトレード・オフで検討した方がよいだろう。ちなみにSLAに違反した場合の補償については、本稿執筆時点ではまだ詳細は提示されていない。

 Windows AzureのSLAの詳細や、SQL AzureとNET ServicesのSLAについては、次のサイトを参照してほしい。

データセンターのロケーション

 Windows Azureが稼働するデータセンターは、「USA-South Central」(米国南中部)、「USA-Anywhere」(米国のどこか)の2カ所を指定できるようになっており、現在はいずれも米国内に存在している(以前は「USA-Northwest」(米国北西部)も指定できたが、こちらのデータセンターは税金対策のため10月末に廃止になるので、指定できなくなっている)。

 このほか、今年7月にアイルランドのダブリンでEUエリアのデータセンターの稼働が開始されている。また、アジアにもデータセンターが置かれる予定があるようだ。ただしアジアにおいては、日本ではなくシンガポールが有力なようである。

 今後はこれらデータセンター間でデータのレプリケーションを行うことで、地球規模のディザスタ・リカバリにも対応できるようになるだろう。

【コラム】米国外で最初にEUにデータセンターが建設された背景

 EUでは、1995年に採択された「個人データ保護指令」によって、EUに加盟していない国で個人データ保護指令と同水準の措置を講じていない国に個人情報を置くことが禁止されている。そのため、事実上EU加盟国は加盟国以外の国のデータセンターを利用することができないのである。アメリカ以外でいち早くダブリンにデータセンターが建設された背景にはこういった法的な事情もあるのである。

可用性

 Windows Azureはサーバに障害が起こった場合でもサービスを継続できるように、各ロールやサービスにおいて可用性を高めるための設計がなされている。

 例えばストレージ・サービスに格納されているデータは、少なくとも3つのノードにレプリケート(=複製)されて同時に保持されており、WebロールやWorkerロールの仮想マシンはバックアップ用に常に複数個作成されている。そしてファブリックを管理するファブリック・コントローラも5〜7レプリカのクラスタ構成で動作している。

 このようにしてWindows Azureは可用性を高めているのである。


 INDEX
  Windows Azure Platform速習シリーズ 
  Windows Azureのローンチに向けて知っておくべき4つのこと
    1.Window Azure とは何かを知る
  2.Windows Azureを取り巻く環境(現状)を知る
    3.Windows Azureの制約を知る
    4.Windows Azureの効率的な勉強方法を知る

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