Insider's Eye

Visual Studio .NETベータ2日本語版が登場

大幅なクラス・ライブラリの改変がなされ、.NETプログラム開発の第2のスタートとなる開発環境がついに登場。各社の.NET対応に拍車はかかるか?

デジタルアドバンテージ 遠藤孝信
2001/07/29


 2001年6月に米国でVisual Studio .NETベータ2(以下VS .NETベータ2)が発表されてから約1カ月。さる7月27日、マイクロソフトによるVS .NETベータ2日本語版の記者向け説明会が開催され、ここで待ちに待ったVS .NETベータ2の日本語版が参加者に配布された(VS .NETベータ2日本語版に関するマイクロソフトのニュースリリース)。このVS .NETベータ2日本語版、およびVS .NETの統合開発環境などを省いた開発キットである.NET Framework SDKベータ2(以下.NET SDKベータ2)日本語版のWebサイトでのダウンロード・サービスが開始された。(VS .NETベータ2英語版公開時の詳細については「Insider's Eye: Tech・Ed 2001:VS.NETベータ2など、プログラマ待望の最新版.NET開発環境がついに登場」を、公開されたVS .NETベータ2英語版の詳細については「特集:Visual Studio .NETベータ2の新機能」をそれぞれ参照されたい)。

 上記英語版ベータ2の解説記事で述べたとおり、ベータ1からベータ2では、クラス・ライブラリなどが大幅に改変された。残念ながら、ベータ1で開発したほとんどのプログラムは、変更なしにはベータ2ではコンパイルできない。その意味で今回の発表は、日本での.NET対応プログラム開発の第2のスタートとなる。すでにベータ1で開発を進めているプログラマや、これから.NET対応プログラムを開発しようとしているプログラマは、早めに新しいベータ2を入手して、そちらで開発作業を進めるべきだ。またこれまでのVS .NETベータ1は、実運用するシステム向けのプログラム開発はできなかったが、今回のベータ2からは、テスト運用という条件付きではあれ、それが可能になる。サードパーティ各社の.NET対応にこれで拍車がかかることを期待したい。

ダウンロードはこちらから

 かなり大規模なファイルだが、すぐにでも入手したいという人は、以下のWebサイトからさっそくダウンロードしよう。

■Visual Studio .NETベータ2日本語版 http://www.microsoft.com/japan/developer/vstudio/nextgen/beta.asp
(ただしダウンロードできるのはMSDNユニバーサル会員のみ)

■.NET Framework SDKベータ2日本語版(127Mbytes) http://www.microsoft.com/japan/developer/net/dotnetsdkdown.asp

 前者のVS .NETベータ2日本語版は、マイクロソフトが開発者向けに提供している有償情報サービス、MSDN(Microsoft Developer Network)の最高位グレードであるユニバーサル会員だけがダウンロード可能だ。ただし、今すぐ入手することはできないが、MSDNユニバーサル会員でないからといって、VS .NETベータ2の入手をあきらめる必要はない。後述するいくつかの方法で入手できる。

 一方、後者の.NET SDKベータ2のほうは、誰でも自由にダウンロードできる。また、上記URLのWebページをご覧いただけば分かるとおり、英語版ベータ2と同様、上記の.NET SDKベータ2日本語版のダウンロード・ページでは「.NET Framework 再頒布パッケージ(18.2Mbytes)」も提供されている。これは、.NETアプリケーションを実行するために必要なランタイムやクラス・ライブラリをパッケージにしたもので、.NET SDKからサンプルやドキュメント類などを省いたものだ。最低限、これをコンピュータにインストールすれば、.NETアプリケーションを実行することが可能になる。

日本語化はまだ道半ば

 さっそく入手したVS .NETベータ2をインストールして起動してみた。画面から分かるように、メニューを始めとする操作部品などは日本語化された。

Visual Studio .NETベータ2日本語版の実行画面
統合開発環境自体は日本語化が完了している。例外発生時のメッセージや、エラーメッセージも日本語で表示される。

 .NET Frameworkのランタイムのメッセージも日本語化されているため、ランタイムが出力する例外やエラーも日本語で表示される。また、XML Webサービスの試験用ページなども日本語化された。

 ちなみに今回の記者説明会では、これまで単に「Webサービス」と呼んでいたSOAPXMLプロトコルでアクセス可能なアプリケーション・コンポーネントについて、米国同様、今回のベータ2を期に呼称を「XML Webサービス」に統一されることが発表された。本サイトでも、今までは「Webサービス」と表記してきたが、以後は「XML Webサービス」で統一することにする。これは、Webで情報サービスを行う広義の「Webサービス」と明確に一線を引くための措置だと思われる。しかしSOAP/XMLによる狭義の「Webサービス」自体は、公開インターフェイスであり、マイクロソフトだけの独自プロトコルではなく、IBMやSun Microsystems、Borlandなどもサポートを行っている。これらの他ベンダが今回の用語統一に追従するのかどうかは不明だ。

XML Webサービスの試験用ページ
XML Webサービスを記述した.asmxファイルを開いたときに表示される試験用ページも日本語化された。もちろんWSDL 1.1をサポートしている。

 ただし、付属するドキュメントやヘルプ・ファイルなどは、ベータ1のときと同様、 まだ英語のままである。

 また、「特集:Visual Studio .NETベータ2の新機能」において、ベータ1からベータ2への大きな変更点の1つとしてご紹介した[スタート ページ]内のWebホスティングなども、英語版と同じ情報を参照しているようで、現在のところは次のように英語版とまったく同様のものが表示される。

[スタート ページ]のWebホスティング画面
インターネットから動的に情報を取得し表示することのできる[スタート ページ]の各タブの内容はまだ英語版と同一のものが表示される。

 ただし記者発表においてマイクソフトの担当者は、日本でも同様のWebホスティングを開始しようと準備を進めていると説明した。

日本語版ベータ2は「エンタープライズ」版

 6月に米国で配布されたVS .NETベータ2英語版は「プロフェッショナル版」であったが、今回の記者説明会で参加者に配られた日本語版のVS .NETベータ2(CD-ROM 7枚組)は「エンタープライズ版」だった。これはおそらく、VS .NETファミリの「Visual Studio .NET Enterprise Developer(VSED)」に相当するものと思われる。「特集:Visual Studio.NETベータ2の新機能」で述べているように、英語版ベータ2には間に合わなかった「エンタープライズ機能」が、日本語版ベータ2では間に合ったということだろうか。とにかく日本語版のベータ2には、エンタープライズ開発ツールとして次のような製品が含まれている。

開発ツール 内容
Visual Studio Analyzer アプリケーションのパフォーマンスやエラーを分析するためのツール
Visual SourceSafe ソースコードやドキュメントのバージョン管理システム。チームでのアプリケーション開発を管理することができる
Application Center Test 複数ユーザによる同時ページ要求をシミュレートして、Webアプリケーションのパフォーマンスを調査するためのツール
Visual Studio エンタープライズ・テンプレート あらかじめ開発ポリシーをテンプレートとして記述しておき、このテンプレートを利用することで、システム開発をより容易に行うための機能
Visio システムのモデリングを行うための設計ツール。現在ではモデリング表記の主流となっているUML(Unified Modeling Language)に従った各種ダイアグラムを作成することができる
日本語版ベータ2に含まれるエンタープライズ開発ツール

エンタープライズ・テンプレートの選択画面
新しいプロジェクトを作成するときに、このようにエンタープライズ・テンプレートを指定できる。開発ポリシーをテンプレートとして用意しておくことで、多数のプログラマがかかわるような大規模プロジェクトにおいても、それまでのノウハウを生かして効率よく開発作業を進められるようになる。各テンプレートはXMLで記述される。

Visioの実行画面
UMLによって記述されたクラス図(クラスの構造とクラス間の関連をモデリングした図)を表示しているところ。この図からC#などのソースコードを出力することもできる。

9月発売の雑誌などにDVD-ROMとして添付

 前述したとおり、MSDNユニバーサル会員でないユーザに対しても、VS .NETベータ2を入手する方法がいくつか用意される。

■Tech・Ed 2001 Tokyo
 本サイトの別稿でも何度かお伝えしているように、2001年8月28日より4日間にわたり、千葉の舞浜で開催される「Tech・Ed 2001 Tokyo」では、参加者にVS .NETベータ2が配布される予定である。ただし原稿執筆時点において、Tech・Ed 2001 Tokyoは定員いっぱいになっており、残念ながら申し込みは締め切られたようだ(マイクロソフトのTech・Edのページ)。

■雑誌付録
 これが最もお金がかからない入手方法だろう。マイクロソフトの説明によれば、9月15日以降に発売されるいくつかの雑誌に、付録としてVS .NETベータ2日本語版を収録した1枚のDVD-ROMが添付されるとのことだ。ベータ1(CD-ROM5枚組)のときは、雑誌添付のハガキを送れば入手できたが(これは今回も行われる)、今回は雑誌さえ購入すれば、すぐに試すことができる(ただし当然ながら、DVD-ROMドライブが必要。なおベータ1当時の配布方式については「Visual Studio.NETベータ1日本語版の入手法を総括する」で解説した)。

■実費によるフルフィルメント提供
 日本語版ベータ1のときと同様に、今回も実費による配布も行われる。これには3150円(送料、消費税込み)が必要であるが、9月上旬より送付開始ということなので、雑誌付録よりも少しばかり早く入手できるかもしれない。また、これにはDVD-ROMのほかに、DVD-ROMと同じ内容のCD-ROM 7枚組と、「ドキュメントCD」、「VS .NETサンプルCD」という2枚のCD-ROMも含まれる。申し込みはすでに受け付けが開始されている。詳細はマイクロソフトのVS .NETベータ2日本語版の解説ページを参照されたい。

 最後に、肝心の製品版の発表時期について。以前は2001年 年内とアナウンスされていたが、英語版の発売が2001年 年内ぎりぎりとなったため、少しずれて日本語版は2002年第1四半期に延期された。End of Article

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