Insider's Eye

Microsoft PDC 2001レポート(1)


デジタルアドバンテージ 遠藤孝信
2001/11/02

 2001年10月22〜26日の5日間にわたり、米国ロサンゼルスにて「Microsoft Professional Developers Conference(PDC) 2001」が開催された。ニューヨークで起きたテロの影響で日本人参加者は少なかったようだが、全世界より約6800人の開発者が参加した。(PDC 2001のセッション内容など、詳細はMicrosoft PDC 2001のホームページを参照)。

会場となったロサンゼルス・コンベンションセンター
ロサンゼルスのダウンタウン高層ビル街のはずれに位置する巨大な建物。

.NET戦略のロードマップ

 例年PDCでは、朝一番に会場内の最大のホールでジェネラル・セッションを行い、その後は10個ほどの小ホールに分かれて、個別のテーマを掘り下げるテクニカル・セッションを並行して行う。今年のPDC期間中にはWindows XPの発売も重なり、PDC会場では朝の7時から、ニューヨークでの発売イベントがライブ中継された。しかしPDCの参加者はプログラマとあって、Windows XPに特化したセッションなどはほとんどなく、ほとんどはWindows XPの次を見据えた.NET関連セッションで占められた。

 23日のPDC初日は、米Microsoft会長兼ソフトウェア・アーキテクトであるビル・ゲイツ氏のスピーチで幕を開けた。

PDCの開会式にもあたるビル・ゲイツ氏によるキーノート・スピーチ
巨大なホールは、世界中から集まった開発者によって埋め尽くされた。

 このスピーチでビル・ゲイツ氏は、XML Webサービスの重要性から新しい開発環境であるVisualudio .NET、発売を迎えたWindows XP、コンピューティングの可能性を広げる新デバイスとして期待されるTablet PC、今回のPDC 2001の目玉である.NET My Services(コードネーム「HailStorm」)、先ごろ公開された.NETサービスの.NET Alertsなど盛りだくさんで、デモンストレーションを交えながら、次世代のアプリケーション環境やユーザー環境について熱く語った(ビル・ゲイツ氏のキーノート・スピーチの全文[英文])。

.NETが可能にする未来のコンピューティングについて熱く語るビル・ゲイツ氏

 このスピーチの最後に、.NET戦略のロードマップが示された(下図)。次期Windowsについては詳しくは触れなかったが、これによると、.NET Frameworkが標準搭載されるのは、次期WindowsといわれるBlackcomb(ブラッコム)ではなく、2003年以降のLonghorn(ロングホーン)となるようだ(Blackcomb、Longhornはいずれも開発コード名)。またこれまで、米国では年内といわれていたVisual Studio .NETの製品出荷も2002年に変更されていることが分かる。またLonghornクライアント、およびLonghornサーバが登場する2003年以降には、.NET My Servicesもバージョンアップされるとしている。

.NET戦略のロードマップ
.NET Frameworkが標準搭載されるWindowsクライアントは2003年以降に出荷予定のLonghorn(開発コード名)であり、またこのタイミングで.NET My Servicesもバージョンアップされる。当初は年内予定だったVS .NET(英語版)の製品出荷も2002年に修正されている。

SOAPを拡張したGlobal XML Webサービス・アーキテクチャとは?

 ビル・ゲイツ氏のキーノート・スピーチに続いては、米Microsoft社の技術戦略担当副社長であるエリック・ラダー(Eric Rudder)氏のジェネラル・セッションが行われ、ここでGlobal XML Web Services Architecture(以下GXA)が発表された。このGXAは、SOAPプロトコルを拡張したもので、セキュリティと信頼性を高めるとともに、SOAPメッセージのルーティングを可能にする。この仕様は、次の4つプロトコルで構成されている。現行のSOAPなどを含めたXML Webサービスは、まだ第一世代とも言えるものである。今後マイクロソフトが展開していく.NET戦略においては、現行のSOAP仕様だけでは不十分ということだろうか。しかしこのような拡張に対して、他のベンダがどう反応するかは今のところ不明だ。

 またこのセッションでは、J2EE(Java 2 Enterprise Edition)のサンプル・アプリケーションであるPet StoreデモをC#言語で記述し直した.NET対応版の評価も行われた。このPet Storeサンプル・アプリケーションは、C#で記述することで、コード量が1/3になり、実行速度も28倍高速になったとされる。Pet Storeサンプル・アプリケーションはWebで公開されている(Microsoft .NET Pet Storeのページ)。

 Pet Storeの.NET対応サンプルでは、単にJ2EEのサンプルをC#に移行しただけでなく、Mobile Internet Toolkitを使用したモバイル版や、Webサービスのインターフェイスも実装されているので、プログラミングの学習にもなるだろう。

 

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