Insider's Eye

新たな.NETプログラマ獲得に向けマイクロソフトが次の一手

―― マイクロソフトが打ち出した新キャンペーン「.NETなんだろ? キャンペーン」とはなんだろ? ――

デジタルアドバンテージ
2002/11/19


 2002年11月8日より、マイクロソフトは、「.NETなんだろ? キャンペーン」という一風変わった名前のプロモーションを開始した。これは開発ツール製品を対象とした店頭向けプロモーションで、この件に関するニュースリリースによれば、「.NETなんだろ? CD-ROM」と呼ばれるボーナスCD-ROMを添付した特別パッケージを販売するという(キャンペーンの解説ページ)。2002年3月のVisual Studio .NET(以下VS.NET)発売からはや半年以上、ここにきてマイクロソフトは、新たなプログラマ層の獲得に向けて大々的なキャンペーンを展開する決断を下した。その狙いは何か? またボーナスCDとはどれほどのものなのか? ボーナスCDの内容を中心に、その概要をお知らせしよう。

目玉は「.NETなんだろ? CD-ROM」

 「.NETなんだろ? キャンペーン」とは、つまるところVS.NETパッケージの販売促進キャンペーンで、従来の各種VS.NETパッケージに対し、「.NETなんだろ? CD-ROM」というボーナスCD-ROMを追加添付したパッケージを数量限定で製造・販売するというものだ。発売開始は2002年11月8日からで、限定版パッケージがなくなり次第キャンペーンは終了する。対象となるVS.NETパッケージは、エンタープライズ向けパッケージであるEnterprise ArchitectとEnterprise Developerを除いたProfessional(エンタープライズ向け製品からグループでの開発機能などを省略したもの)、Academic(教育機関向け低価格パッケージ。基本的にProfessional相当だが、ライセンス認証が追加されている)、Standard(Visual Basic .NET/Visual C++ .NET/Visual C# .NETの各言語を単独パッケージとしたもの)である。

 「.NETなんだろ? キャンペーン」というネーミングからも容易に想像できるとおり、つまりこれは、個人ないし中小規模の企業プログラマを対象としたものである。ただし、Enterprise ArchitectやEnterprise Developerを購入したプログラマはボーナスCDを入手できないかといえば、そうではない。くだんのCD-ROMは、MSDNサブスクリプション(Microsoft Developer Network:マイクロソフトの開発者向け有料情報サービス)の参加者にも郵送されるので、MSDNサブスクリプションの権利が付属するEnterprise Architect/Enterprise Developer/Professionalの各MSDN Deluxe Editionを購入したユーザーには、後日CD-ROMが郵送されてくる。

 ボーナスCD-ROMの中には、全部で213個のサンプル・プログラム、Visual J#(VS.NETでのJavaプログラミング機能を統合するモジュール)やMobile Internet Toolkit(携帯電話などのモバイル機器向けアプリケーション開発を支援する拡張キット)、Office XPのスクリプトからWebサービスを利用可能にするOffice XP Web Service Toolkitなどのモジュール群、「VB 6ユーザーのためのVB.NET移行ガイド」や各種.NET関連のドキュメントをまとめた技術資料が収録されている。

 中でも価値が高いのは、サンプル・プログラム集だろう。サンプル・プログラムの分野も.NET Framework、ASP.NET、データ・アクセス、グラフィックス、Webサービスなど多岐にわたっている。ドキュメントももちろん有用だが、特に新しい言語や開発環境に触れるときには、サンプル・プログラムが大いに役立つものだ。インターネットを検索すれば、かなりのサンプル・プログラムを目にすることができるようになったとはいえ、それらがCD-ROMとしてひとまとまりになっているのはありがたい。CD-ROMには、これらのカテゴリごとにサンプルを一覧できるスクリプト・ページが収録されており、容易にナビゲートできるようになっている。

狙いはVB 6プログラマのVS.NETへの移行促進?

 前述したナビゲート機能を使ってサンプルを眺めてみると、総数213個のサンプル・プログラムのうち、VB.NETのサンプルが146種類、VC#.NETが61個、VC++.NETが6個と、かなりVB.NETに傾倒した内容になっている。カテゴリごとのサンプル数に注目すると、「Windows Forms」が圧倒的に多くて134個、次いで「.NET Framework」が97個、ここからガクっと減って「Data Access」19個、「ASP.NET」12個と並ぶ。

 いずれもプログラミングの要点を説明することを目的としたサンプルなので、実用的に使えるプログラムではないが、サンプルとしてはよく作り込まれている。そのため、.NET Frameworkの豊富な機能を、コードからだけではなく、実際に動作させてその挙動を確認しながら学ぶことができる。これから.NETプログラミングを始めるという入門者にとって、また既存のVB 6やVC 6から.NETに移行するプログラマにとっては役立つ情報となるだろう。単に、各フォルダにあるソリューション・ファイルを順にVS.NETで開いて実行していくだけでも結構楽しむことができる。そして、サンプルを自分のプログラムの部品として活用することも可能である。

 単純に数だけで考えれば、このボーナスCDは、VB.NETにおけるWindowsアプリケーション開発をメイン・ターゲットにすえているということだ。確かに、「技術資料」の筆頭にあるのは「Visual Basic 6.0 ユーザーのための Visual Basic .NET 移行ガイド」という長編の解説記事である。これは小冊子としてMSDNの購読者向けなどに配布された資料を、HTML化して収録したものである。

 一説によれば、VS.NETの発売時のプロモーションにおいて、「VS.NET=Webサービス/Webアプリケーションといった先進プログラムの開発環境」というメッセージを強く打ち出しすぎたために、人口的には最も層の厚いVB 6.0プログラマが人ごととしてVS.NETを扱ってしまい、なかなか移行が進んでいないという見解もある。「.NETなんだろ? CD-ROM」というフレンドリーなネーミングや、VB.NET向けサンプル・プログラムの充実ぶり、Webサービス/WebアプリケーションよりWindowsアプリケーション(Windowsフォームをベースにしたアプリケーション)に重点を置くあたり、VB 6プログラマのVB.NETへの移行推進を目指したキャンペーンではないかと見たが、どうだろうか?

 まあそうした作り手の事情はともかくとして、同じ値段で便利なCDが付いてくるのだから、素直に喜ぶべきか。気になりながらも、まだVS.NETを体験していないというプログラマにとってはよいチャンスかもしれない。安価なStandard版(推定価格1万2800円)から始められるので、まずはトライしてみてはどうだろうか?End of Article

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