XMLミニバブルは崩壊したか?

Advanced IT School
学長 川俣 晶
2001/09/20

XMLブームは終わりか?

 最近、「もうXMLも終わりだね」というような意見を、複数の方面から聞いたので、今回はそれについて書いてみよう。

 私のところに届くいろいろな話を総合すると、XMLの現状はこういうことらしい。

  1. XMLビジネスがまったく進展しない
  2. 世間の人のXMLに対する興味が薄れてきた
  3. XML技術者への求人は満たされていない
  4. あまり知られていないが、あれもXMLを使っているよ、というような事例が増えている

 このなかで、1番目と2番目は確かに否定的な意見に見える。ところが、3番目と4番目はどうだろうか。これは、否定的なニュアンスがあるようには見えない。まるで相反する2つの動きが同時に起こっているようにすら見える。これはいったい何を意味しているのだろうか?

 それについて考える前に私の思い出話を書こう。

儲からないXML

 筆者は1997年ごろからXMLに興味を持ち始め、W3C勧告となった1998年ぐらいから本格的にかかわり始めた。当然、株式会社ピーデーという営利企業をやっているわけで、かかわった以上は何か美味しいビジネスのタネにならないかと思うのは必然的な展開である。しかし、いろいろ考えた結果、XMLは儲からないと言う結論に至った。例えば、XMLパーサなどのソフトを開発して売っても、それで大儲けすることは不可能と言うことである。確かにインフォテリアのようなXML専業企業は登場したが、この世界にインフォテリアを2個受け入れるだけのニーズはないだろうというのが結論であった。

 実際に、XMLは使うだけなら簡単なテクノロジであり、複雑高価なソフトウェアが必要になるわけでもなく、複雑高度な技能を習得した技術者がいなければ扱えないものでもない。つまり、XMLとは極めて低コストで扱えるテクノロジであり、そこに大儲けのタネなど転がっているはずがない。

 筆者のなかで例外的に仕事になったのは、XMLの解説原稿の執筆で、あちこちの雑誌から原稿料をいただいたが、これが地道な労働であって、大儲けとは無縁の代物であった。むしろ、編集部側も手探りである分だけ、比較的やりにくい仕事であったといってもよい。もっと他の雑誌原稿(例えばVisual BASIC入門のようなもの)の方が、ずっと儲かる原稿と言える。他にも、XMLを堅実なビジネスとしてこなしている会社もあるから、XMLでビジネスできないと言えば嘘になる。ここでいう「儲からない」というのは、僅かな元手で大儲け、という濡れ手に粟の商売は成り立たないことを意味する。

 これが、1998年頃の筆者の結論であった。だから、筆者はビジネスとしてXMLを扱うことは最初から無理だと考えて、XMLとは趣味的に付き合うことにした。それが、日本XMLユーザーグループという会費を取らない団体というわけである。

 かといって、XMLが普及しないと思ったわけではない。XMLは大々的に普及すると筆者は確信していた。ただ単に、XMLは普及するにあたって、XML長者を生み出すこともないような低コストのテクノロジであるというだけのことである。逆に言えば、その低コスト性こそが、XMLの大々的普及を確信させたともいえる。

 上記のような筆者の見解は、ほとんど誰にも理解されなかった。最先端の人気技術であるXMLを扱えば、他の最先端の人気技術がそうであったように、儲かるはずだという発想から抜けられない人が多数派であったのだろう。実際、「川俣さん、XMLやってるなら儲かってるんでしょう?」という人は多いが、逆を言う人はほとんどいない。また、筆者の会社である株式会社ピーデーが業務としてXMLを扱っていないと知ると、驚く人ばかりだ。

何がはじけたのか?

 XMLが儲からないというのは、XMLという技術の性格(驚くべき低難易度と低コスト)をきちんと学び取っていれば、予測可能なものだ。しかし、それが分からない人が多いと言うことは、学ばない人が多いと言うことだろう。もちろん、XMLの専門家でもない人達に学べというのは無理な話だ。そのような人達が、XMLは儲かると思い込んで、「川俣さん、儲かってるんでしょ?」と言うことが悪いとは言わない。筆者自身も門外漢ならそういう感想を持つかもしれないからだ。

 しかし、すべての人に責任なしとはいえない。なぜなら、よく学びもしないでXMLは儲かると思い込んでビジネスにしてしまった人達もいるからだ。必然的に彼らは「XMLビジネスがまったく進展しない」と嘆くことになる。しかも、IT不況が世界と日本を覆っている今、成果を出せないビジネスへの風当たりは強くなる一方である。そのため、早急にXMLをビジネス化したいと彼らは考えるのだが、なかなかXMLは儲かるビジネスにならない。この視点に立てば、XML悲観論は当然の感想として出てくるものと言えるが、当然のことながら、XMLは儲からないという筆者の視点に立てば、当たり前の結末にすぎない。もともと存在しない儲け口をあると思い込んでビジネスを始めたのだから、儲からないのは当たり前である。

 そういう意味で、まさに実体のない空洞のバブルがXML界にはあり、それがいま弾けつつあると言ってもよいかもしれない。ただ、世間を巻き込むほどのスケールはなく小さな世界のバブルにすぎなかったといえるので、ミニバブルという言葉が似合いそうな気がする。

XMLの前途は?

 XMLミニバブルの存在は、学ぶことよりも、捕らぬ狸の皮算用を優先する人間がこの業界に多いかを示していると言えるだろう。その意味で、生産的なビジネスに寄与しない彼らが、XMLミニバブル崩壊を通じて消えていくのは、XML界にとってはプラスの要因と言えるだろう。しかし、XMLミニバブルの立て役者は、派手さゆえに、世間から目立つ存在でもある。その目立つ存在が立て続けに崩壊するようなことがあると、世間が「XML界全体の崩壊」と誤認する可能性がある。それを考えると、堅実なニーズを前提にしたビジネスをやっているXML関係者にとって、ミニバブル崩壊は非常にリスキーで迷惑な出来事になる恐れがある。バブル崩壊のあおりを食って、バブリーではない会社まで連鎖的に倒れる可能性もあり得るのだ。どこまでも迷惑な話である。

 いずれにせよ、この先XMLがこれまで以上に使われていくのは間違いない。例えば、最近話題のWebサービスのシステムを構築すれば、大量のXML文書がネットワークを飛び交うことになる。単純なXMLの利用量として考えれば、これまで作られたXMLの応用システムをはるかに超える大量のXML文書が使われることになるだろう。しかも、Visual Studio .NETなどの高度な開発ツールを使えば、XMLの詳細に関するプログラミングを抜きにして、Webサービスを構築することができる。例えば、Visual Studio .NETからWebサービスのプロジェクトを新規作成すると、その時点ですでに最低限度のWebブラウザ経由のインターフェイスまで自動生成されるのだ。以下のようなサンプルWebメソッドが自動生成されるが、内容は至ってシンプルである。

Visual Studio .NETでWebサービスのプロジェクトを新規作成

 このソースコードの記述から、以下のような詳細な説明ページが自動生成される。

自動生成されたWebサービスの説明ページ

 起動ボタンを押すと以下のような結果が出てくるが、1行もXML文書を書いていないし、XMLの知識も要求されていない。

説明ページで起動ボタンを押した結果

 このように利用目的がある程度絞り込まれれば、XMLの詳細など知らずにXMLを使うというのも、まったく問題なくOKである。このような分野は、この先、どんどん増えていくことになるだろう。それにつれて、XMLの利用量もどんどん増えていくだろう。また、このような成り行きは、世間の注目がXMLから各応用分野に移ることを意味する。つまり、世間の注目がXMLから離れて行くにもかかわらず、XMLの利用量が増大するという事態を招き、XML技術者の求人が増える。これも、当然の成り行きといえるだろう。End of Article


川俣 晶(かわまた あきら)
 株式会社ピーデー代表取締役、株式会社サンブリッジテックユー取締役 Advanced IT School学長、日本XMLユーザー・グループ代表、日本規格協会 次世代コンテンツの標準化に関する調査研究委員会 委員、日本規格協会XML関連標準化調査研究委員会 委員。1964年東京生まれ。東京農工大化学工学科卒。学生時代はENIXと契約して、ドラゴンクエスト2のMSXへの移植などの仕事を行う。卒業後はマイクロソフト株式会社に入社、Microsoft Windows 2.1〜3.0の日本語化に従事。退職後に株式会社ピーデーの代表取締役に就任し、ソフトウェア開発業を始めるとともに、パソコン雑誌などに技術解説などを執筆。Windows NT、Linux、FreeBSD、Java、XML、C#などの先進性をいち早く見抜き、率先して取り組んできている。代表的な著書は『パソコンにおける日本語処理/文字コードハンドブック』(技術評論社)。最近の代表作ソフトは、携帯用ゲーム機WonderSwanの一般向け開発キットであるWonderWitch用のプログラム言語『ワンべぇ』(小型BASICインタプリタ)。

 「Insider.NET - Opinion」


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