特集

Crystal Reportsで作る高品質なWebレポート

―― Crystal Reports for Visual Studio .NETの概要 ――

一色 政彦
2003/08/05
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 Webアプリケーションは、企業ポータルから業務システムまで、さまざまなビジネス・シーンで利用されるようになってきている。そのため、帳票やチャート図などのレポート機能を含んだ、より質の高い情報提供のソリューションが求められるようになった。

 Crystal Reportsは、このようなWebレポートのニーズにこたえる製品だ。Crystal Reportsを使えば、ウィザード形式の入力とドラッグ&ドロップのマウス操作だけで、ASP.NETのWebアプリケーションにレポート機能を組み込むことができる。また、レポートの基になるデータにおいても、最新のADO.NETやWebサービスに対応しており、幅広いデータにアクセス可能だ。

 Crystal Reportsはクリスタルディシジョンズが単体の製品として提供しているツールだが、本稿ではVisual Studio .NETのすべてのエディション(Visual Studio .NET 2002および2003のEnterprise Architect、Enterprise Developer、Professional)にバンドルされているCrystal Reports for Visual Studio .NET(以下CR for VS.NET)について解説する。CR for VS.NETは、Crystal Reports 8.5(執筆現在の最新バージョンは9)Developer Editionを基盤としているが、ファイル形式はCrystal Reports 9の形式に対応している。

 Crystal Reports 9(製品版)とCR for VS.NET版との違いは、CR for VS.NETではパフォーマンスに制限がかけられている点だ。例えばWebアプリケーションのクライアント数は、CR for VS.NETでは5アクティブ・ユーザー(50コンカレント・ユーザー相当)に制限されるのに対し、製品版ではその制限が解除される。また、それ以外にも製品版にしかない機能が多数ある。例えばレポートのプレビュー機能は製品版にしかなく、製品版を使えばWebアプリケーションの完成イメージのプレビューを見ながらレポートを作成できる。より詳しい両者の違いについては、クリスタルディシジョンズのWebサイトのCrystal Reports 9 へアップグレードする理由を参照していただきたい。なお、CR for VS.NETの2002版と2003版では、マイナー・バージョンアップなので大きな違いはない。

 本稿の執筆にあたり、Visual Studio .NET 2002 ProfessionalにバンドルされているCrystal Reports for Visual Studio .NET 2002を用いた。読者対象として、Visual Studio .NETの基本的な操作およびASP.NETの基礎知識がある開発者を想定している。なお、Crystal Reports for Visual Studio .NETを利用するには、Visual Studio .NETのインストール時にオプションで選択してCrystal Reports for Visual Studio .NETをインストールしておく必要がある。

1. Webアプリケーションにレポート機能を追加する

 では最初に、Crystal Reportsで実際にどのようなレポートを作成できるのかを見てみよう。ここでは、Crystal Reports for Visual Studio .NETに付属するサンプル・データ(通常は「C:\Program Files\Microsoft Visual Studio .NET\Crystal Reports\Samples\Database\jp\xtreme.mdb」にインストールされる)を使ってレポートを作成した。また、本稿で作成したWebアプリケーションのレポートはCrystal Reports 9のデモを参考に作成したので、レポート作成方法の詳細について興味がある場合は、クリスタルディシジョンズのサイトにあるCrystal Reports 9のデモを参照してほしい。なお、前述のとおりCR for VS.NETのファイル形式はCrystal Reports 9と同じだが、Crystal Reports 9にしかない機能があり、デモの内容をすべて実現できるわけではないので、ご注意いただきたい。

Crystal Reportsのレポート機能を組み込んだWebアプリケーション
Webアプリケーションのすべてのパーツ(左側のツリー情報、右側のチャート図や一覧表など)が、ASP.NETのCrystal Report Viewerとレポート(rptファイル)だけで生成されている(詳細は後述)。
  グループ・ツリー。データがグループごとに表示される。グループのアイテムを選択することで、右側のレポート・ビューのデータを該当グループに絞り込んで表示することができる
  ツール・バー。ページの「先頭」「末尾」への移動、「次ページ」「前ページ」への移動や、ページ指定によるジャンプを行うことができる。そのほか、レポート内のデータ文字列の検索やページの表示倍率の変更を行うことができる
  レポート・ビュー。レポートでデザインした文字、絵、チャート図、表データなどのコンテンツが表示される

 このWebアプリケーションは、受注データを都道府県別に分類した一覧表と、その受注金額の割合をチャート図で示すためのものだ。左のグループ・ツリーから、表示する受注データを都道府県名で絞り込み、さらにその都道府県内の顧客名でデータを絞ることができる。また、Webアプリケーション内のツール・バーを使えば、簡単にページ移動やデータ内の文字列検索が可能だ。一覧表の表示倍率を変更することもできる。

 Crystal Reportsを使えば、これだけの機能を備えたアプリケーションを、次の2ステップで作成できる。

  1. レポート・ページのデザイン
  2. ASP.NETへのCrystal Report Viewerの追加

 では、それらの開発手順を簡単に解説しよう。

 

 INDEX
  [特集]Crystal Reportsで作る高品質なWebレポート
   1.Webアプリケーションにレポート機能を追加する
     2.レポート・ページのデザイン
     3.ASP.NETへのCrystal Report Viewerの追加
     4.Windowsアプリケーションへのレポート機能の追加
 


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