特集
Microsoft Expression Web製品レビュー(後編)

プログラマーとWebデザイナーの分業を促進するASP.NETサポート

WINGSプロジェクト 土井 毅、 監修:山田 祥寛
2007/03/09
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プログラマーとWebデザイナーの共同作業について

 すべてのケースを包含するアプローチを示すことはできないが、Expression Webでの共同作業を行ううえでのポイントをいくつか示しておこう。

CSSの作成について

 CSSの作成は、もっぱらWebデザイナーの作業範囲に当たるだろう。場合によってはWebデザイナー自身が使い慣れたほかのツールを使い続けることがあるかもしれない。その場合でも、出力されたスタイルシート・ファイルをExpression WebでWebページと関連付けることが可能である。

 また、WebデザイナーがExpression Webを使ってページのデザインを行いながらCSSを作成してもらうこともできるだろう。前編からの繰り返しとなるが、Expression Webは指定したスタイルを再利用不可能なインライン・スタイルではなく、<style>タグないしは外部のスタイルシート・ファイルに保存してくれるので、ひな型となるファイルに対するデザインを行うことで、Webサイト全体に適用可能なCSSを作成することができる。

ページのプロトタイプ作成について

 ページのプロトタイプ作成は、これまでもWebデザイナーの作業範囲だったと思われる。WebデザイナーがExpression Webを通常のHTMLエディタと同様に用いることで、プロトタイプを作成することができる。

 さらに、Expression WebでASP.NETコントロールを配置すれば、スタティックなプロトタイプにとどまらず、ある程度の量のサンプル・データが表示されるプロトタイプを作成することもできる。

 ただし、GridViewコントロールのような複雑なコントロールについては、プログラマーからの情報とサポートがなければ、どうやって使うのか、どこにスタイルを指定してよいのかは分からないだろう。本記事でも概略を示したが、やはりこの部分では情報を共有しながら作業する必要があるだろう。

Webページ(ASPX)の作成について

 実際のWebページの作成は、本来はWebデザイナーの作業範囲だと思われるが、ASP.NETコントロールのように標準のHTML以外のコンポーネントを使用する場合、これまではしばしばWebデザイナーが作成したプロトタイプ・デザインとスタイル・ルールを基に、プログラマーがHTMLタグ→ASP.NETコントロールの置き換えを行いながらWebページを再構築してきたのではないだろうか。さらに、プログラマーが作ったWebページをWebデザイナーが確認してフィードバックを投げて修正して、といった流れもしばしば見受けられただろう。

 前述のようにExpression Webを使うことで、WebデザイナーがASP.NETコントロールを配置したプロトタイプ・デザインを作成するようになれば、プログラマーがWebページを大きく変更することなく、必要なプロパティなどを肉付けすることでプロトタイプ・デザインを一気に実用レベルまで実装していくことができるだろう。

コードビハインド・クラスの実装について

 コードビハインド・クラスの実装は、完全にVS 2005を用いたプログラマーの作業範囲であり、ソース・コードの実装をサポートしていないExpression Webを活用する分野はない。

 ただし、ソース・コードの実装が進んでいる(=.aspx.cs/.aspx.vbファイルを実装中の)場合でも、ソース・コードに悪影響を与えることなく、Expression WebでASPXファイル(Webページ)を編集することができる。

 従って、プログラマーが実装を進めている間に細かなデザイン上の変更が生じても、Webデザイナーが安心してASPXファイルを直接編集することができる。これにより、ASPXファイル側のデザインの修正はWebデザイナーにかなりの程度まで任せ、プログラマーはコード実装に専念することができるだろう。

まとめ

 Expression Webは、Expression Studio中では飛び抜けてホットな新技術をサポートしているわけではなく、一見、地味である。しかし、Webサイトの構築、特にASP.NET開発においては、かなり強力なツールとなり得るだろう。

 以前までは、マイクロソフトのHTML作成ツールではWeb標準から逸脱したHTMLコードを出力することが多かったが、Expression Webでは大幅に改善されている。これまでマイクロソフトのHTML作成ツールというだけで敬遠されていた方も、一度試してみてはいかがだろうか(60日間全機能が利用可能な試用版が用意されている)。

 ただ、Expression Webに関して難点があるとすれば、ドキュメントの整備度だろう。標準のヘルプは用語説明レベルにとどまっており、実用的な情報を取り出すのは難しい。また、ASP.NETコントロールに関してはほとんどがMSDNへのリンクであり説明が省略されているため、ヘルプの情報だけではデータベースから基本的なデータ表示を行うのも難しいだろう。簡潔に分かりやすく説明するのが難しいという点には理解を示したいが、ASP.NETを絡めた開発にExpression Webを勧めるのであれば、ドキュメントの整備は急務だろう。英語圏ではExpression Webの書籍がすでにいくつか準備されているようだ。そうした書籍の日本語訳の早期リリースも期待したい。

 また、2007年1月23日にASP.NET 2.0上で動作するAjaxフレームワークであるASP.NET AJAX 1.0が正式リリースとなったが、現在のところExpression WebではASP.NET AJAXはサポートされていない。今後のWeb開発においてAjaxの果たす役割が非常に大きくなっていく可能性が高いことを考えると、Expression Webでの早期サポートが期待される。End of Article

 

 INDEX
  [特集]Microsoft Expression Web製品レビュー(前編)
  Webデザイン・ツール「Expression Web」を試してみた
    1.Expression Webの概要と画面構成
    2.Expression WebのCSSサポート
    3.スタイルシート・ファイルを使ってみよう
    4.Expression WebのXHTML対応機能
 
  [特集]Microsoft Expression Web製品レビュー(後編)
  プログラマーとWebデザイナーの分業を促進するASP.NETサポート
    1.ASP.NETコントロールのサポートとVS 2005との機能差
    2.デザイン・サンプル:SqlDataSourceコントロールの配置
    3.デザイン・サンプル:GridViewコントロールの配置
  4.プログラマーとWebデザイナーの共同作業について
 


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