特集:フレッシュマン企画

【2009年度版】
.NET開発者のためのオンライン・リソース・ガイド

デジタルアドバンテージ 一色 政彦
2009/04/21

本稿は「.NET開発者のためのオンライン・リソース・ガイド【2004年度版】」「同【2006年度版】」の改訂版である。

 本稿は、これから.NETでプログラミングを始めようとしている方や、新しく.NETでの開発に携わることになったフレッシュマンに贈るオンライン・リソース・ガイドの2009年度版である。インターネット上に数ある.NET関連サイトの中で、.NET開発者がまずは押さえておくべきWebサイトについてまとめている。

本稿がまとめているサイト&ジャンル分けについて

 .NET開発者がよく利用するサイトの代表は、やはり.NET Framework & Visual Studioを提供するマイクロソフトのサイトだろう。だがひとくくりに「マイクロソフトのサイト」といっても、マイクロソフトが運営するサイトは本当にたくさんあり、それぞれのコンテンツも膨大となっている。さらにマイクロソフト以外のサイトも加えると、とても消化できる情報量ではないだろう。実際にそんなことをしていれば、サイトの情報を読むだけで一日が終わってしまうに違いない。

 そこで本稿では、マイクロソフトのサイトの中から、そしてマイクロソフト以外のサイトから、.NET開発者がよく使うサイト、本当に使えるサイトに厳選して紹介する。

 また本稿では、サイトを整理して分かりやすくするために、簡単なジャンル分けを行っている。具体的には、次の3つのジャンルだ。

  1. 技術解説が多数掲載されているサイト
  2. サンプル・コードや実装技術情報が充実しているサイト
  3. 掲示板やブログなどのコミュニティ・サイト

 なお現実的には、これらの複数のジャンルに属しているサイトが多いが、最も特徴的なコンテンツから筆者が独断でジャンル分けしていることをお断りしておく。

  以下の記載で、というマークが付いているサイトは英語のコンテンツ・サイトで、それ以外は日本語のサイトだ。またというアイコンは、そのサイトのRSSフィード(RSSリーダーなどのツールを使って、より効率的に情報収集するための仕組み)へのリンクである。RSSリーダーについては、本稿最後の「RSSリーダーを活用しよう!」という項目を参照されたい。

1. 技術解説が多数掲載されているサイト

 まずは、アプリケーションを構築するうえで欠かせない.NETのクラス・ライブラリの情報や、.NETのコア・テクノロジについての技術解説記事などが充実しているサイトを紹介する。この手のサイトは、やはり.NET開発者が最も頻繁に利用する種類のサイトである。

MSDN ライブラリ
MSDN Library

 MSDNライブラリは、主に.NET Framework 3.5クラス・ライブラリとVisual Studio 2008(以降、VS 2008)、SQL Server 2008に関連する技術情報、サンプル・コードなどを含む製品ドキュメントを提供しているサイトである。このサイトは.NET開発を行う限りは必ずやお世話になるだろう。

 ここでは日本語と英語(米国)のサイトの両方を紹介しているが、基本的に日本語のサイトを参照すれば事足りる。ただし日本語サイトの内容の多くは英語サイトの内容を翻訳したものであり、一部の日本語コンテンツはその訳が不適切だったり不明瞭だったりする。そのような場合には英語サイトの方で原文を確認すればよい。

 なお、各ページの右上に設けられたメニュー・バーからは、現在表示している内容を別の言語へ簡単に切り替えることができるようになっている。


MSDN ホーム
MSDN Home

 MSDNホームは、その名のとおり、開発者向け情報を提供するMSDN(Microsoft Developer Network)のトップ・ページである。

 マイクロソフトが発信する.NET開発関連の最新情報を入手するには、まずここにアクセスするとよい。RSSフィードも用意されているので、RSSリーダーを使って情報収集することもできる(ただし、日本向けのRSSはリンク切れになっており、執筆時点(2009年4月21日)では利用できなかった)。


MSDN マガジン 日本語版
MSDN Magazine

 MSDNマガジンは、先進的で高度な技術情報を掲載する月刊オンライン・マガジンだ。かなりレベルの高い技術情報もたくさん取り上げられているため、先端技術に触れたいと考えるなら、欠かさず読みたいオンライン・コンテンツである。


patterns & practices
patterns & practicesの一部の日本語訳(1) (2) (3)

 patterns & practicesでは、.NETアプリケーションの構築における一般的なアーキテクチャや共通的な設計パターン、数多くの事例から得られたプラクティス(=実践すべき項目)に関する情報が掲載されている。

 特に大規模アプリケーションの構築に携わる.NETアーキテクトなら、ここに取り上げられている情報は一通り知っておきたい。やはり英語版(米国)の方が、公開されている情報は多いが、有用な情報は順次、日本語に翻訳されているので、まずは日本語サイトを確認してみるとよいだろう。


The Architecture Journal
アーキテクチャ ジャーナル

 The Architecture Journalは、ITアーキテクト向けの季刊オンライン・マガジンで、.NETアプリケーション・アーキテクチャ設計のパターンやプラクティスに関する情報が掲載されている。各号でテーマがあり、そのテーマはクラウド・コンピューティングのような流行の技術から、モバイル・アーキテクチャのようなニッチなものまで幅広い。内容も学術論文的な雰囲気があり、より良いシステム・アーキテクチャを追求したい人に向いている。

 日本語版は遅れながらも順次翻訳されており、その一部は本サイトの「アーキテクチャ・ジャーナル」でも公開しているので、まずはここからどんなものか確認してみるとよいだろう。


InfoQ Japan
InfoQ

 InfoQは、各種プロダクトやテクノロジの技術プレビュー版(=アルファ版)、ベータ版レベルでの最新技術情報や、ニュース、オピニオンなどが提供されている、アルファ・ギーク(=アルファ版などの早い段階で技術に興味を持ち、技術の方向性を考える先端的で飽きっぽい開発者)にはうってつけのサイトだ。

 RSSフィードも用意されているが、個人ごとにRSSフィードを提供する仕組みになっているようなので、購読した場合はサイトを訪れて確認してみてほしい。


gihyo.jp

 gihyo.jpは、人気雑誌『WEB+DB PRESS』などを発行する技術評論社が運営するオンライン・マガジンである。「技術評論」という社名どおり、流行の最新技術に関する良質な記事をジャンルにとらわれず幅広く配信しているのが特徴だ。

 残念ながら.NET関連の記事は多くないが、世の中ではやっている技術を学ぶには役立つ。はやりの技術を常時ウォッチしたい読者にはお勧め。


【ビデオ・コンテンツを提供するサイト】
Visual Studio 2008 オンラインセミナー
Channel 9

 概要を素早く把握するには、記事を読むよりも動画で見る方が効率的な場合が多い。Visual Studio 2008オンラインセミナーでは、Visual Studioや.NETに初めて触れる人に最適な、短いビデオ・コンテンツが提供されている。

 Channel 9は、米マイクロソフトが運営するサイト。マイクロソフトの開発者へのインタビュー動画などが多数あり、マイクロソフトが開発中の最先端技術に関する情報などをいち早く知ることができる。残念ながら、ほとんどが英語コンテンツだが、スクリーンを見ているだけでも、新機能の動作などについては参考になるだろう。


@IT/Insider.NETフォーラム

 @IT/Insider.NETフォーラムは、本稿が掲載されている.NET専門のサイトで、.NETの最新技術情報やC#、VBなどのプログラミングに関する解説記事、コーディングに役立つ.NET TIPSなどを多数公開している。ぜひこれからも定期的にご利用いただければ幸いである。


【コラム】技術情報の検索について

 MSDNライブラリサポート技術情報のコンテンツは開発時に頻繁に参照することになるが、これらのコンテンツの検索については、検索エンジンであるGoogleを利用した方が使い勝手がよいことが多い。

 Googleでは、
  site:msdn.microsoft.com/ja-jp writeline
といったように、「site:」に続けて検索対象となるサイト名を指定し、その後に(半角スペースを空けて)キーワードを入力することで、そのサイト内のみの検索が行える(この例では「msdn.microsoft.com/ja-jp」内で「writeline」というキーワードの検索を行っている)。余計な検索結果を省きたければ、このsite:オプションを覚えておくと便利だ。

2. サンプル・コードや実装技術情報が充実しているサイト

 例えば、ある機能の実装方法やクラスの使い方が分からないとき、そのサンプル・コードがすぐに手に入れば、実際に動作する完成したコードから実装方法を学ぶことができる。ここでは、そのようなサンプル・コードや実装技術情報が充実しているサイトをいくつか紹介しよう。

CodeZine

 CodeZineは、翔泳社が運営するサイトで、ソース・コードを含む実装寄りの技術情報を主に提供しており、実際に何かを開発する際に参考にできる情報が多い。

 基本スタイルは読者から投稿された記事を順次公開するシステムになっている。優れた.NET開発ノウハウを持っている読者諸氏は、日本の.NET開発を盛り上げるためにも、投稿してみてはいかがだろうか。


CodePlex

 CodePlexは、マイクロソフトが運営するオープンソース・プロジェクトの登録/公開/運用サイトで、さまざまな.NET関連のオープンソース・プロジェクトが登録、公開されている。

 .NETの標準機能として用意されていないコンポーネントやコントロール、アドインなどは、ここにプロジェクトとして公開されていないか探してみるとよいだろう。また最近では、次期.NET Frameworkに盛り込む新機能を、マイクロソフトがこのCodePlexにオープンソース版として公開し、ブラッシュアップ後、正式な製品に組み込むというケースも多いので、次期技術の方向性を知るのにも役立つ。


The Code Project

 The Code Projectでは、多数の記事(article)、サンプル・コード(アプリケーション全体のコード)、スニペット(断片的なコード)などが公開されている。

 対応している開発言語は、C#、Visual Basic、MFC/VC++、HTML/CSS/JavaScriptなどさまざまだが、特にC#のものが多い。またジャンルとしては、ASP.NETのコードやWindowsアプリケーション用のコントロールが充実している。


【プログラミングTIPSを提供するサイト】
@IT:.NET TIPS
DOBON.NET
C# と VB.NET の入門サイト

 ちょっとした開発テクニックをコンパクトに記事化した“TIPS”は、実際の開発でヒントとなったり、そのまま流用できたりすることが多い。日本ではこのようなTIPSコンテンツを提供するサイトが非常に多いが、それはやはりTIPS情報の1つ1つが非常にコンパクトなので、個人的にも情報公開しやすいからだろう。

 TIPS情報には、現実的にはGoogleなどの検索エンジンから探して、たどり着くケースが多いだろうが、見つかりにくい場合はこれらのTIPSサイト内を探してみるとよいだろう。

3. 掲示板やブログなどのコミュニティ・サイト

 以上で紹介してきたサイトのほとんどは、メディアとして一方向の情報提供を行うものだ。しかし、技術的な質問をしたい場合や、よりインタラクティブに情報交換したい場合などは、掲示板(BBS)やブログなどのオンライン・コミュニティが役立つ。

@IT/Insider.NET会議室

 Insider.NET会議室は、本稿が掲載されているサイトが運営する掲示板で、.NET関連の質疑応答が活発に行われており、利用者も多い。

 なお、Insider.NET会議室は今月(2009年4月)に新システムに移行したが、過去の質疑応答は、アーカイブからキーワード検索することができ、「ディレクトリ分類による検索」(=テクノロジごとにスレッドを分類している)も提供している。


MSDN フォーラム
MSDN Forums

 MSDNフォーラムは、Visual Studioを提供するマイクロソフトが公式にサポートする掲示板である。特に製品に密接に関連する質問は、この掲示板を利用するとよいだろう。


MSDN ブログ
MSDN Blogs

 MSDNブログやMSDN Blogsでは、マイクロソフト社員によるブログの新着記事がまとめて表示される。ブログでしか公開されないような詳細な情報や、ほかでは公開されていない最新情報も多いので、そのような情報をチェックしたい先進的な.NET開発者は、両サイトのRSSフィードを購読するとよい。


Microsoft Connect

 Microsoft Connectは、マイクロソフト製品に関するフィードバックを行うためのサイトで、.NET FrameworkやVisual Studio関連のバグの報告や新機能の提案もここで行える。

 もしマイクロソフトの開発製品(クラス・ライブラリも含む)でバグを見つけたら、ここで報告するとマイクロソフト社員が対応してくれ、次期バージョンでの対応や回避策などの応答が得られることがある。日本語で入力できるので、必ずしも英語が読み書きできる必要はない。また同じバグが報告されていないかここで検索すれば、そのバグの回避策などの情報を得られることがある。

RSSリーダーを活用しよう!

 サイトの多くは、新着記事の要約情報などを「RSS」(もしくは「Atom」)と呼ばれるXMLファイルで配信している。そこで「RSSリーダー(もしくはRSSアグリゲータ)」と呼ばれるRSS収集ツールを使えば、これらの情報(RSS)を定期的に収集して、Webサイトを開くことなく記事をまとめて読める。

 RSSリーダーとしては、さまざまなものが無償で入手可能であるが、筆者がいま一押しなのが次のサービスだ。

livedoor Reader

 livedoor ReaderはWebアプリケーションなので、どこから(どのPCから)でも同じデータにアクセスできるというメリットがある。このlivedoor Readerが秀逸なのは、キーボード操作で高速に読める点である。国産ツールなので、iPhoneだけでなく、国内の各種携帯電話にも対応している。

 本稿で紹介したサイトの多くがRSSを配信しているので、日常的に読みたいサイトはそれをRSSリーダーに登録しておくと新着情報を効率的かつ網羅的にチェックできる。

 今回は技術情報が入手できるオンライン・サイトを説明したが、もちろんここで紹介したものはほんのごく一部でしかない。しかしまずはこれらのサイトをチェックするとともに、必要な情報を的確に検索できるテクニックを磨いてさえおけば、たいていの場合で事は足りるだろう。現在では非常に多くの情報を簡単に見つけることができるが、その取捨選択に無駄な時間を取られないようにしたいものである。

 また、.NET開発の書籍も多数出版されており、これらの書籍から情報収集することも考えられる。書籍のメリットはやはり携帯できるところにある。出勤や帰宅の電車の中などでゆっくりと情報収集したい場合などでは、このような書籍から情報収集するのもよいのではないだろうか。

 このほか、筆者は仕事柄、.NET関連の技術情報を毎日のように追いかけており、気に入ったものや、気になったものは、「はてなブックマーク - 一色政彦のブックマーク」に記録して公開しているが、筆者と関心が近い方はそちらを参照してもよいかもしれない。End of Article



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