特集:世界初登場の最新Windows Phone概説

Windows Phone 7.5“Mango”とIS12Tとは?

山口 健太(Windows Phoneブログ「ななふぉ」管理人)
2011/09/01
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 2011年8月25日、世界初のWindows Phone 7.5(コードネーム:“Mango”)端末「IS12T」が日本で発売されました。現在、IS12Tはすでにauショップや量販店の店頭に並んでおり、手に取って操作することはもちろん、新規/機種変更/MNPにより購入することも可能になっています。

 ところでWindows Phone 7.5は、その名前から想像できるとおり、Windows Phone 7がバージョン・アップしたものです。しかしWindows Phone 7を搭載した端末は日本国内で発売されなかったため、日本語によるまとまった情報に乏しいことも事実です。

 そこで本稿では、Windows Phone 7とは一体何だったのか、7.5の登場までにどんな出来事があったのか、海外の事情を中心に振り返ってみたいと思います。

Windows Phone 7発売

Windows Phone 7とは?

 Windows Phone 7は、従来のWindows Mobile 6.5とは全く異なる、新しいスマートフォン向けのOSです。Windows CE 5.2ベースのWindows Mobile 6.5を拡張するのではなく、Windows CEのバージョン6と7を組み合わせた新しいカーネルを採用しています。

 その結果、アプリの互換性がなくなっていますが、以前とは全く異なる次元のユーザー・インターフェイス(次の画面を参照)や操作感を実現しています。まさにゼロからの再出発といえるでしょう。

Microsoft、「Windows Phone 7 Series」を発表 - ITmediaエンタープライズ」から引用

 Windows Phone 7にはPeopleハブ やMusic+Videosハブ、PicturesハブやGamesハブなどの多数の“ハブ”が搭載されており(Windows Phone 7.5も同じ)、それらは全て「Metro」というデザイン・ガイドラインに基づいて設計されています。

 Windows Phone 7.5の登場で初めて目にした方もいると思いますが、基本的なコンセプトはWindows Phone 7の時点ですでに確立していたのです。

5カ国語のみの対応

 2010年10月21日、Windows Phone 7を搭載した端末がヨーロッパ、アジア、オセアニアから発売されました。その直後の2010年11月8日には、北米で発売されています

 Windows Phone 7は、世界30カ国、60以上のキャリアから発売されました。しかし、英語(アメリカ/イギリス)、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語の5カ国にしか対応しませんでした。日本語・中国語をはじめとする漢字文化圏はもちろん、アジアや中東、ヨーロッパの多くの言語への対応は後回しになったのです。

 また、「コピー&ペーストができない」ということも大きな問題でした。コピー&ペースト機能には、発売当初のiPhoneも対応していませんでした。しかしユーザーの不満は大きく、アップルは2009年にリリースされたiPhone OS 3.0(現在のiOS)で対応しています。

 マイクロソフトは当初、「URLやメール・アドレス、電話番号をタップするだけでユーザーが期待するように動作するという思想で設計してあるので、コピー&ペーストは不要である」と説明しました。しかし、当時のスマートフォン業界には、コピー&ペーストに対応していないOSは時代遅れという「空気」があったのです。

 その結果、北米向け発売日の11月8日、プレス向けの発表会において、米マイクロソフトのジョー・ベルフィオーレ氏は、コピー&ペースト機能への対応を表明。「2011年の早い段階でアップデートを提供する」と約束しました。

 残念ながら、Windows Phone 7が発売された30カ国に日本は含まれていません。発売日には日本マイクロソフトの関係者もシンガポールまで端末を買いに行くなど、不便な思いをしたようです。

 並行輸入した端末を販売する、ごく一部のショップを除けば、日本国内でWindows Phone 7端末を購入する方法はなく、一般ユーザーが触ることのできるデモ端末すらないという状況でした。筆者も2010年11月に、海外のショップから個人輸入しています。また、2011年1月にはヨーロッパの携帯ショップで販売されるWindows Phone 7端末を視察したこともあります(旅行のついでですが)。以下の写真は、そのときのものです。

ドイツのT-Mobile店舗で販売されるWindows Phone 7端末(筆者撮影)

Chassis仕様とは?

 最初に発表されたWindows Phone 7端末は、4つのメーカーから、合計9機種(後に「HTC 7 Pro」が加わり、10機種)のラインアップとなっていました。

 特徴的なのは、その基本スペックが均質化されていることです。全ての端末は画面解像度480×800ピクセルのディスプレイや、動作周波数1GHzのQSD8250プロセッサを搭載しています。

 このような共通仕様は、「Chassis」と呼ばれています。Chassisには、下記の表のように、「最低256MBytesのRAM」のように端末が最低限クリアすべき条件や、「480×800ピクセルの画面解像度」のように変更できない必須要件が定められています。

項目 要件 最新の“Mango”での変更点
(参考)
タッチスクリーン 静電容量式タッチパネル
4点以上のマルチタッチ
センサー A-GPS、加速度センサー、コンパス、
光センサー、近接センサー
ジャイロ(オプション)
カメラ 5メガピクセル以上
フラッシュ、シャッター・ボタン
メモリ 256MBytes以上
ストレージ 8GBytes以上のフラッシュ・メモリ
GPU DirectX 9対応
CPU ARMv7 Cortex/Qualcomm Scorpion以上 Qualcomm MSM8x55またはMSM7x30以上
画面解像度 480×800のWVGAまたは
320×480のHVGA※1
480×800のWVGAのみ
Chassis仕様
この仕様は、マイクロソフトの発表内容を基にしている。
※1 当初のChassis仕様ではHVGAも規定されていたが、実際にHVGAの解像度を持った端末は一台もリリースされていないので無視してよい。

 これは、「端末メーカーがハードウェアをカスタマイズできない」という意味ではありません。あくまで基本的な性能を統一することで、重箱の隅をつつくようなスペック競争や、アプリの互換性が低下することを回避するのが狙いです。

 もちろんメリットだけではなく、デメリットもあります。個性的な端末を作ることに自信のあるメーカーにとって、Chassis仕様は足かせになってしまいます。実際、Windows Phone 7への参入をためらうメーカーが、カスタマイズの不自由さを理由に挙げたこともあります。

Windows Phone 7端末の特徴

 海外でのみ発売されたため、日本ではほとんど知られていないWindows Phone 7端末ですが、ここで簡単に各端末の特徴を述べてみます。

Microsoft、Windows Phone 7搭載の9機種を披露 - ITmediaエンタープライズ」から引用

 サムスン(Samsung)は2機種、「Samsung Focus」と「Samsung Omnia 7」を投入しています。Samsung FocusはアメリカではAT&T、カナダではRogers Communicationsから発売されており、ディスプレイにサムスンが誇る「Super AMOLED」を採用しているのが特徴です。AT&Tが全米で放映したCMに登場しており、北米で人気の高い端末です。Samsung Omnia 7は、ヨーロッパを中心に人気があります。

 HTCは最多の5機種をリリースしています。一番人気は、4.3型のLCDディスプレイを搭載した「HTC HD7」です。「Samsung Focusを抑えて、世界で最も売れている端末である」といわれており、さまざまなアクセス統計に表れています。ほかにも、スライド型スピーカを搭載した「HTC 7 Surround」や、SRS WOW HDを採用した「HTC 7 Mozart」は、いずれも音楽を重視した端末で、音楽プレイヤー「Zune」の遺伝子を受け継ぐ端末といえます。余計な機能を搭載せず、シンプルに徹した「HTC 7 Trophy」や、キーボード付き端末「HTC 7 Pro」も人気があります。

 LGの端末は「LG Optimus 7」と「LG Quantum」(北米以外では「Optimus 7Q」と呼ばれる)の2機種。DLNA対応が特徴的です。

 デル(Dell)唯一の端末「Dell Venue Pro」は、縦方向にスライドするハードウェア・キーボードを備えており、ほかのメーカーにはないシルエットとなっています。

 このように、Windows Phone 7端末は一定のハードウェア要件満たしつつ、その中でいかにして個性を出すか、さまざまな工夫が凝らされているのが特徴といえます。

 続いて次のページでは、Windows Phoneの最初のアップデートについて説明します。


 INDEX
  特集:世界初登場の最新Windows Phone概説
  Windows Phone 7.5“Mango”とIS12Tとは?
  1.Windows Phone 7発売
    2.最初のアップデートNoDoへ
    3.Windows Phone 7.5“Mango”に至る道/IS12T、登場!
    4.“Mango”アップデートはいつ?


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