特集:Windows Phone “Mango”機能解説

Windows Phone 7.5の新機能

山口 健太(Windows Phoneブログ「ななふぉ」管理人)
2011/10/19
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Windows Phone 7.5の新機能

ライブ・タイルの進化

 Windows Phoneの「顔」ともいえるホーム画面のライブ・タイルは、7.5で大きく進化しました。サードパーティのアプリでも、タイルを動的に追加したり、プッシュ通知に応じて内容を変更したりできるようになったのです。

 例えば天気を表示するアプリの場合、自分が見たい地域の天気だけをタイルとしてホーム画面に追加できます。航空会社のアプリなら特定のフライトに関するタイルを作っておく、といったことができるようになります。

British Airwaysアプリの例。ホーム画面にタイルとして自分が搭乗するフライトを登録できる(Marketplaceのスクリーンショットより引用)

Evernoteアプリの例。ホーム画面にノートのテンプレートを登録することで、素早くノートを作成できる(Marketplaceのスクリーンショットより引用)

 これまで、タイルはアプリと1対1で対応しており、大きなアイコンというイメージを持たれていた方も少なくないでしょう。しかしWindows Phone 7.5ではアプリの対応次第で活用の幅が広がり、Android OSのウィジェット機能に匹敵するカスタマイズができるようになっているのです。

Peopleハブ

 Windows Phone 7においてもPeopleハブは特徴的な存在であり、OSレベルでFacebookアカウントとの連携に対応していました。Windows Phone 7.5ではこれが大幅に強化され、TwitterやLinkedInとの連携にも対応しました。

 具体的には、Peopleハブの中にFacebookのステータス更新とTwitterのツイートがまとめて表示されるようになり、より効率的にソーシャル・メディアを活用できるようになっています。また、多数のアカウントをフォローしている場合に備え、デフォルトではTwitterのフォローを連絡先として取り込まないようになっています。これにより、リアルの人間関係とネットのコミュニケーションをすみ分けできるようになっています。

Peopleハブ。TwitterとLinkedInが統合された(Windows Phoneの公式サイトより引用)

 注意が必要なのは、Peopleハブは「Twitterクライアント」ではないという点です。キーワード検索やハッシュタグを使って、効率的にツイートを「消化」するような機能は存在しません。Peopleハブは、あくまで限られた範囲での密度の高いコミュニケーションを主眼に置いた機能といえます。

 大量のツイートを効率よく処理するには、専用のアプリの方が適しています。幸い、Marketplaceには多くのTwitterクライアントが登録されています。

 もう1つの新機能はグループです。連絡先をグループ化することで、まとめてメッセージやメールを送信したり、ソーシャル・メディアの更新をまとめて閲覧したりできます。ただし1つのグループの登録人数は20人に制限されています。大量のユーザーをグループ化するTwitterの「リスト」機能とは異なり、家族内や同級生、同じ部署やプロジェクト、サークルやゼミといった単位で使用することが想定されているようです。

グループには20人までの連絡先を登録できる(Windows Phoneの公式サイトより引用)

Windows Phone Marketplace

 Windows PhoneのアプリやゲームはすべてMarketplaceを経由して流通しています。Windows Phone 7.5のリリースに合わせて、Marketplaceにもさまざまな新要素が追加されました。

 まず、Web版のMarketplaceが公開されました。これまでMarketplaceのアプリを閲覧するには、Zune Softwareか、Windows Phone端末のMarketplaceハブを使用する必要がありました。

 Web版のオープンにより、Windows以外のPCや、iPhone/AndroidといったスマートフォンからもWindows PhoneのMarketplaceを閲覧できるようになります。また、各アプリがブラウザで表示可能なURLを持つことにより、直接リンクを貼ることもできるようになりました。

WebブラウザからMarketplaceを閲覧できるようになった(http://www.windowsphone.com/ja-JP/marketplaceのスクリーンショット)

 Web版のMarketplaceは閲覧だけではありません。Live IDでログインすると、ブラウザ上からアプリを購入/管理できます。インストールするWindows Phone端末を指定して購入すると、端末が自動的に3G回線やWiFiを経由してアプリのインストールを始めます。

 一方、開発者向けの機能としてMarketplaceへのアプリ公開方法が増えています。

 1つは、開発中のベータ版アプリを公開する機能です。Live ID単位で最大100人のユーザーを対象に、ベータ・テストを実施できます。最新のアプリを使ってみたい方は、Windows Phoneアプリの開発者がベータ・テスターを募集していないか探してみるのも面白いでしょう。

 また、アプリのプライベート公開にも対応しました。アプリは通常の審査を受け、Marketplaceに公開されますが、検索にはヒットしない状態になります。特定のユーザーにメールなどでアプリのURLを教えて、ダウンロードしてもらうという仕組みです。これはクローズドで配布したい場合に便利な機能です。

Bing検索とマップ

 英語環境を中心に、Bingとマップに関する多数の新機能が追加されました。

 Bing Audioは、スピーカーから音楽を入力することで、その曲情報を検索できる機能です。楽曲がZune Marketplaceに登録されていれば、購入することも可能です。

音楽が鳴っているところに端末を近づけ、曲名を検索できるBing Audio機能

 Bing Visionは、カメラから入力された書籍やCDのジャケット画像を検索する機能や、文字を認識して翻訳する機能、QRコードを読み取る機能に対応しています。翻訳、QRコードについては日本語環境からも利用可能です。

 同じく英語環境でのみ有効な「周辺情報」(local scout)機能は、現在地周辺のお勧めスポットを表示する機能です。レストランやショップにはレビュー・コメントや5段階のレーティングも付いており、Bingのローカル検索の集大成のような機能になっています。

英語環境で使える「周辺情報」機能(Windows Phone公式サイトより引用)

 マップ・アプリには、目的地を入力することで現在地からのルートを検索し、地図上にマーカーとして表示する「ルート案内」機能が追加されました。また、「交通情報を表示」機能では、地図上に渋滞している箇所をカラー表示することができます。

 これに対し、日本語環境ではマップ・アプリのほとんどの機能を利用できず、マップ自体も貧弱な状態でした。しかしIS12Tの発売後にサーバ側の地図データが更新され、詳細な地図が表示されるように改善されています。マップ・アプリとしての機能は英語環境に及びませんが、今後も改善が期待できそうです。

IS12T発売直後は簡素な地図だったが、データが更新され詳細になった

Internet Explorer 9

 標準搭載のWebブラウザであるInternet Explorerは、Windows Phone 7のIE7 MobileからWindows Phone 7.5のIE9 Mobileへ、大幅にバージョン・アップしました。

 一目で分かる違いとしては、コントロールが画面下部にまとめられ、Webページを表示する領域が拡大したことが挙げられます。

 内部的にはデスクトップ版のIE9と同じエンジンを使用しており、HTML5やCSS3といったWeb標準への対応が向上しています。また、レンダリングにGPUアクセラレーションが有効になったことも特筆すべき点です。マイクロソフトによる「Internet Explorer Test Drive」というサイトでは、IE9の優位性を示す数々のページが用意されています。

 実際にFishIEベンチマークをIS12TとiPhone 4で実行してみたところ、IS12Tが47〜48fpsをマークしたのに対し、iPhone 4は2〜3fpsという結果になりました。マイクロソフトのサイトであるため、全体的にIE9が有利な内容となっている可能性は否めませんが、性能の高さは実感できるはずです。

IE9 Mobileのレンダリング能力の高さを示すFishIEベンチマーク

マルチタスク

 Windows Phone 7ではOS標準のアプリのみが対応していたマルチタスクが、サードパーティのアプリでも有効になりました。Windows Phone 7.5の2種類のマルチタスクについて説明しておきます。

 1つは「高速アプリ切り替え」と呼ばれる機能です。これまでアプリの切り替え時には、アプリの状態をいったんストレージに保存したうえで終了し、復帰するときは再度、ストレージから読み出していました。これに対し、高速アプリ切り替えでは、メモリに余裕がある限り、メモリ上に現在の状態を保存することで、高速に復帰できるようになっています。例えばゲーム中に電話の着信があった場合、電話を終えた後にスムーズにゲームを再開できるようになります。

 もう1つはバックグラウンド機能です。音楽再生やファイル転送といった機能について、「バックグラウンド・エージェント」と呼ばれる機能が追加されました。例えば音楽プレイヤーのようなアプリでほかの画面に切り替えても再生を続けることができます。

 いずれの新機能も自動的に有効になるわけではなく、開発者による対応が必要です。アプリがこれらの新機能に対応している場合、Marketplaceでのアプリの説明欄に書かれているはずです。

インターネット共有

 Windows Phone 7.5では、OS標準でテザリング機能に対応しました。これは「インターネット共有」(Internet Sharing)と呼ばれます。この機能はHTC TITANやHTC Radarのような“Mango”世代の新しい端末で使用できます。既存端末へのアップデートでは、当面の間、提供されない予定です。

 また、テザリングという機能の性質上、キャリアが有効/無効を決めることができます。このためかどうかは分かりませんが、IS12Tにインターネット共有機能は存在しません。

 インターネット共有を有効にすると、Windows Phone端末がWiFiルータのように機能し、5台までの子端末でインターネット接続を共有することができます。バッテリ消費量は増大しますが、いざというときに便利でしょう。

まとめ

 本稿では、Windows Phone 7.5の主な新機能を中心に取り上げました。

 日本国内ではWindows Phone 7.5の発売から1カ月以上が経過し、Marketplaceには日本語に対応したアプリも増えています。また、海外ではすでにHTC TITANやHTC RadarといったMango世代の端末が発売され、年末にかけてさらに多くの端末が登場しそうです。

 Windows Phone 7.5の新機能は500以上あり、そのすべてを網羅することは難しいといえます。まだあまり知られていない新機能を探すのも楽しみの1つかもしれません。end of article

 

 INDEX
  特集:Windows Phone “Mango”機能解説
  Windows Phone 7.5の新機能
    1.Windows Phone 7.5の概要
  2.Windows Phone 7.5の新機能


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