連載

Visual Studio 2005 Team System概要

第1回 Visual Studio 2005 Team Systemとは何か?

デジタルアドバンテージ
2004/10/16
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 マイクロソフトの「Visual Studio」といえば、これまでは開発者、特にプログラマーのためのツールだった。マイクロソフトの.NET構想とともに刷新された「Visual Studio .NET」(以降、VS.NET)では、ご存じのとおり、WindowsアプリケーションやWebアプリケーションにおけるGUI設計から、コーディング、デバッグまでを、1つの統合環境内で賄うことができる。

 その後、.NET Frameworkのバージョンアップ(1.0→1.1)に伴いマイナー・バージョンアップした現行のVS.NET 2003でも、プログラマーのためのツールであることは変わっていない。もちろん、アプリケーション開発を効率よく進めるにはVS.NETだけでは不十分だ。これはVisioやVisual SourceSafe、サードパーティ製のテスト・ツールなどによって補うことができた。VS.NETの拡張性のおかげで、それらの多くは統合開発環境内に統合して、VS.NET上から呼び出して利用できるようになっている。

 しかし、2005年に提供される(とされている)Visual Studio 2005(以降、VS2005)では、このような状況が大きく変わろうとしている。VS2005では、Visual Studioは単なる「アプリケーション開発」の環境ではなく、情報システムの設計や運用・管理までをも含めた「システム開発全体」をサポートする環境となる。VS2005は、システム開発のライフサイクルである、設計からコーディング、デバッグ、テスト、配置・運用、プロジェクト管理までを総括してカバーするツールとして生まれ変わるのである。これがVS2005の最上位エディションである「Visual Studio 2005 Team System」だ。

システム開発のライフサイクルをカバーするVS2005 Team System

 本連載では、このVisual Studio 2005 Team System(以下、VS2005TS)について、その概要を数回にわたってお伝えする予定である。

 なお本連載の内容は、先日公開されたVS2005のベータ版「Visual Studio 2005 Beta 1 Refresh with Visual Studio 2005 Team System」(英語版。以降、VS2005TS Beta1 Refresh)、MSDN JapanおよびMSDNで公開されているドキュメント、2004年9月に横浜で開催された「Tech Ed 2004 Yokohama」でのセッション内容をベースとしている。このため、2005年リリース予定のVS2005製品版の内容とは異なる可能性があることをあらかじめご了承いただきたい。

 ちなみに、現時点ではVS2005のベータ版(ベータ1)としては、英語版に加えて日本語版もMSDN会員向けに公開されているが(VS2005日本語ベータ1の入手方法についてはこちらを参照)、これにはVS2005TSの一部分の機能しか含まれていない(後述しているアーキテクト向けの機能のみ)。上記のVS2005TS Beta1 Refreshというバージョンは、このベータ1に不足していたテストやプロジェクト管理のための機能が追加されたものである。ただし、追加された機能はベータ1よりも完成度が低いとされているCommunity Technology Preview(CTP)と呼ばれるバージョンである。また、残念ながらVS2005TS Beta1 Refreshについては日本語版の提供は行われないようである。

Visual Studio 2005の製品ラインアップ

 話を明確にするために、まずVS2005の各エディションについて確認しておこう。これについては、2004年9月13日付で以下のプレスリリースが発表された。

 このリリースによると、VS2005の製品ラインアップは次の4つとなる。

  • Visual Studio 2005 Express製品
  • Visual Studio 2005 Standard Edition
  • Visual Studio 2005 Professional Edition
  • Visual Studio 2005 Team System

 各エディションに含まれる機能の違いについては、「Visual Studio 2005 製品ラインの概要」で表としてまとめられているので参照していただきたい。この表からも分かるように、Team SystemはProfessional Editionをベースに、開発ライフサイクルをサポートするツール群を統合している。

Visual Studio 2005 Team Systemの構成

 そして次の図が、VS2005TSに含まれる機能をまとめたものだ。

Visual Studio 2005 Team Systemの機能構成図
これは、「Visual Studio 2005 Team System:概要」に掲載されている図をベースに作成したもの。

 図中では、オレンジ色の各ブロックが1つの機能を示している。これらの多くはVS2005に統合されたツールとして提供されるものである。例えば、図中左上の「アプリケーション・モデリング」という機能は、システムを構成するアプリケーション群を設計/定義するための「アプリケーション接続デザイナ(Application Connection Designer)」というツールに相当する(これについては次回解説予定)。

 この構成図でまずポイントとなるのは、各機能が次の4つの名前で分類されている点だ。

  1. Team Architect
  2. Team Developer
  3. Team Test
  4. Team Foundation

 VS2005が発表された当初は、これら4つの名前には「Team XXX Edition」と後ろに「Edition」が付いており、各エディションが個々のラインアップになるのではとの予想もあったが、上述したリリースにより1〜3までの機能がVS2005TSとしてパッケージされることが明らかになった。そして4の「Team Foundation」だけは前掲の表からも分かるように、別製品扱いとなるようである。本連載では、次回よりこれら4つの各分類について、VS2005のベータ版を使いながら、より詳しく見ていく予定だ。

 さて、VS2005TSにおいては、その「Team System」という名称からも分かるように、チームでシステム開発を行うことが前提となっている。そして、開発プロジェクトを構成するチームとして、次の4つのチームを想定している。

  1. アーキテクト(システムの設計を行うチーム)
  2. デベロッパー(コーディングを行うチーム)
  3. テスター(アプリケーションのテストを行うチーム)
  4. プロジェクト・マネージャ(プロジェクトの管理を行うチーム)

 上記の「Team XXX」による機能の分類が、これらの各チームと対応していることはいうまでもないだろう。

 

 INDEX
  Visual Studio 2005 Team System概要
  第1回 Visual Studio 2005 Team Systemとは何か?
  1.Visual Studio 2005の製品ラインアップとTeam Systemの機能構成
    2.Visual Studio 2005 Team Systemの詳細
 
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