▼IT化を推し進めるための優遇税制ってあるの?
▼ファイアウォール税制って何?
▼具体的にはどのような装置が適用対象なの?
2000年9月21日に召集された臨時国会で、森首相は、すべての国民がデジタル情報を自由にやりとりできる「日本型IT社会」を実現するために、「E-JAPAN」構想と名付けた国家戦略をまとめる方針を明らかにしました。
大容量の情報を低価格で交換できる「超高速インターネットの整備」を課題に挙げ、「5年後には日本を世界の情報通信の最先端国家に仕上げていく」と宣言しています。IT業界に片足をおく筆者としては、非常に心強い限りのお言葉ですが、「IT革命」を「イット革命」などと呼ぶ首相にそのようなことが可能なのか心配でなりません。大きな目標を掲げることはいいのですが、ぜひとも、公共投資だけでなく、民間主導でIT化を推し進めることができるような税制などを数多く立案していただきたいものです。
と、厳しいことをいったものの、現時点においてIT化を推し進めるための優遇税制がまったくないわけではありません。通称「パソコン税制」「メカトロ税制」「中小企業投資促進税制」などといった有名な税制が世の中には数多く存在します。
そこで、これからしばらくの間、これらのIT関連の税制について解説していきたいと思います。管理部門の方だけでなく、特に営業やマーケティングに携わる方々に知識として持っていただき、販売活動のために、これらの税制をうまく利用していただければと思っております。
それでは、第1回目の「ファイアウォール税制」についてお話ししましょう。
「ファイアウォール税制」って何?と聞かれても、ご存じの方はあまりいらっしゃらないでしょう。インターネットに常時接続している環境であれば、まず間違いなく設置されているあのファイアウォールです。最近は、アンチ・ウィルスソフトにも、パーソナル・ファイアウォールなどという言葉がありますが、そのファイアウォールです。
実は、ファイアウォールおよびセキュリティがらみの投資を行うと、税制上優遇措置があるのです。不正アクセスにより、官公庁のホームページが改ざんされたことがよほどこたえたのでしょうか(冗談です)。企業に対して不正アクセス対策に資する設備の導入を促進し、より安全で信頼性の高いネットワークを構築するために、税制の特別措置が今年から創設されています。それが、「ファイアウォール税制」です。
税制的に制度の概要を説明すると、対象者は、法人でも個人事業者でも構いません。平成12年4月1日から平成14年3月31日までの期間にファイアウォール装置、アクセス監視センサ装置、セキュリティ管理サーバ装置を取得、設置した場合に、法人税または所得税について、20%の特別償却、固定資産税について、取得後5年度分について課税標準を2/3に減額されることとなります。
<対象者>
個人事業主、法人
<適用期間>
平成12年4月1日から平成14年3月31日まで
<対象設備>
装 置 名 | 概 要 |
ファイアウォール装置 | 不正アクセスを防御するために、あらかじめ設定された通信プロトコルに基づき電気通信信号を通過させる機能を有するもののうち、インターネットに対応するものをいう |
アクセス監視センサ装置 | 不正アクセス行為を感知し、当該情報をセキュリティ管理サーバ装置などに伝送する機能を有するもののうち、電気通信回路に対応するものに限る |
セキュリティ管理サーバ装置 | 不正アクセス行為に対し、アクセス監視センサ装置の情報に基づき、ファイアウォール装置の送信および受信を制限する機能を有するものまたはアクセス管理者に通知する機能を有するものに限る |
<特例措置>
適用税法 | 装 置 名 | 特別措置 |
国税 (所得税、法人税) |
ファイアウォール装置 | 個人事業主または中小企業者のみ、取得価額180万円以上のものについて20%の特別償却 |
地方税 (固定資産税) |
ファイアウォール装置 | 取得後5年度分について課税標準を2/3に減額 |
アクセス監視センサ装置 | ||
セキュリティ管理サーバ装置 |
つまり、個人事業主または中小企業者が高額な180万円以上のファイアウォール装置を設置すると、通常の減価償却に加えて、取得価額の20%を費用化できますよ、また、ファイアウォール装置、アクセス監視センサ装置、セキュリティ管理サーバ装置を設置すると、固定資産税が単純には2/3になりますよ、という制度です。
なお、この「ファイアウォール税制」と似た制度に、「中小企業投資促進税制」というものがありますが、これについては次回、詳しく解説したいと思います。
しかし、法律というのは、こうも難しく物事の説明をするのでしょうか。ファイアウォールを@ITの用語辞典で調べると、「外部のインターネットから社内のイントラネットに対する不正なアクセスや、社内からインターネットへの情報漏洩などを防ぐことを目的として、イントラネットとインターネットの間に設置されるゲートウェイ」とあります。
では、一体どのような装置が対象となるのでしょうか。具体的には、専用機器のほか、ファイアウォール用のソフトウェアがあらかじめインストールされた状態のサーバなどが該当すると考えられますが、ここで気を付けなければならないのは、この税制が装置に限定されているということです。
つまり、ソフトウェアのみに対してや、後からソフトウェアをインストールするサーバなどには適用されないということです。もちろん、ソフトウェアのアップグレード費用や保守費用といったランニングコストは一切対象となりません。
実際に市場に流通しているハードウェアには、対象として非常に紛らわしいものが数多くありますが、そのあたりはうまく相談して、「不正アクセス行為の防御に資する設備」として納入してもらえばいいでしょう。
ちなみに、不正アクセス行為の防御という点を除き、その装置を設置しないとネットワーク機能に支障が生じる装置(ルータや、認証用サーバ、単なるゲートウェイ)については、対象とならないことにご注意ください。
また、最近流行のASPなどを利用した機能のみを賃借する場合やリースも取得には当たらないため対象外となります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.